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【海を支配する水竜王】その女…卑劣な声音

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【海を支配する水竜王】その女…卑劣な声音
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第2章 頭脳を使って侵入せよ

「さすがに夜明け前の時間帯は寒いですね」
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)は寒そうに両手を擦り合わせて温める。
「エンジンかけたよ」
 小型飛空艇のエンジンをかけたセシリア・ライト(せしりあ・らいと)が声をかける。
「さぁいきますわよ」
 モトロフカクテルのカバンを抱え、フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)も飛空艇の上に乗りハンドルを握った。
 数分後、施設が見えてきた。
「結構侵入されているから相手もやっぱりかなり警戒しているみたいね」
 セシリアは施設の屋上に設置してあるライトを見て、2人に灯りを避けるように言う。
 まだ真っ暗な空や海上をライトで照らして警戒しているようだ。
「気づかれないように、もっと高度を下げたほうがいいですわね」
 フィリッパに言われ、2人は飛空艇の高度を下げる。
 浜辺に降りた彼女たちは、敵兵に飛空艇が見つからないように、林の中へ移動して枯れ枝や土の上に落ちている葉っぱで機体を隠す。
「東門はこっちの方でしたよね」
 メイベルたちは体勢を低くし、施設の近くへ接近する。
「陽動を行う人たちはまだ来ていないようですぅ。それまで隠れていましょうか・・・」
 侵入の手引きをしてくれる仲間を待ち林の陰に隠れた。



「ふぅ・・・こんなもんでいいかしら」
 孤島の施設へ侵入するために、森の木を使って白波 理沙(しらなみ・りさ)は1人乗り用のボートを作った。
「それにしても結構、距離があるわね・・・」
 オールを握り、波に揺られて海へ落ちないように漕ぐ。
「持ってくために少しだけ飛空艇のエンジンをかけているけど・・・さすがに重いわ」
 小型飛空艇をボートにくくりつけているため、進む速度もかなり遅い。
「このペースだと、1時間以上かかりそうね」
 重さでボートが沈まないように、理沙は必死に漕ぎ続ける。



「もうそろそろ孤島が見える頃かな?」
 愛沢 ミサ(あいざわ・みさ)は空飛ぶ箒に乗り、低空飛行で施設へ向かう。
「―・・・な・・・何か飛んでくるぞミサ!」
 迫り来る砲弾を指差し、何れ 水海(いずれ・みずうみ)が叫び声を上げる。
 何人もの生徒たちが侵入している影響で、敵もかなり警戒しているようだ。
「ミサ、早く岩場の方へ!」
「そう言われても、どんどん飛んでくるし。うぁああーっ!?」
 ドボォオンッ。
 必死に避けようとするが箒のコントロールを失い、ミサは海の中に落ちてしまった。
「大丈夫か・・・?ミサ・・・」
 水海はミサの腕を掴み、岸に引っ張り上げる。
「うん、なんとか・・・」
 施設から飛んできた砲弾を避け、島にたどり着いた2人は南門を目指す。



 軍用バイクを解体して発動機を小改造しようとしたが失敗してしまい、仕方なくローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は手漕ぎボートで孤島へ向かう。
「はぁ・・・ちょっと疲れたわね」
「それじゃあ、交代しよう」
 オールを受け取ったグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)が交代でボートを漕ぐ。
「もうすぐ着きそうね」
 双眼鏡を覗き込み、ローザマリアは孤島の位置を確認する。
 服を脱ぎ着込んでいた水着だけになると、海面すれすれのボートの横腹にへばりつく。
「電気網がありそうなのはこの辺りかしら?」
 感電しないよう、両手にゴム手袋をはめ、5mの高枝切りバサミで網を切ろうとする。
「届かないわね・・・あとちょっと・・・」
「無理して海に落ちないように気をつけるのだよ」
 ローザマリアがボートから落ちたりしないかグロリアーナは心配そうに見る。
「分かっているって。・・・よし、切れた・・・。きゃ・・・ぁあああ!?」
 ゴム手袋では感電を防ぎきれず網を切った瞬間、身体に電流が走る。
「だっ大丈夫か、ローザ!」
「ビリッときたわ・・・ビリッと・・・・・・」
 沈みそうになったローザマリアはボートの端を掴む。
「ちょっと気を失いそうになったけど。この手段は危険ね・・・。網を壊したことはすぐにばれちゃいそうだし、2度も同じ手段が通じると思えないわ」
「そうであろうな。敵が気づいてやってくるかもしれない。急ごう」
 彼女と同じく水着だけになったグロリアーナが海に飛び込んだ。
 姿が見えないように深く潜り、300mほど泳ぎ岸にたどりつく。
「ぷはぁっ。・・・さてと、施設がある場所は・・・あっちね」
 位置を確認しようとローザマリアが双眼鏡を覗き込み、グロリアーナと共に施設の方へ向かって走る。
 


「ここまでは順調に接近出来たが、油断できないな」
 捕縛された学園の生徒たちを助けようと、闇咲 阿童(やみさき・あどう)アーク・トライガン(あーく・とらいがん)が乗る小型飛空艇の後ろに乗り孤島へ向かう。
「何か・・・やばそうな音が聞こえるんだが・・・・・・うぉぁあぁあ!?」
 阿童たちを墜落させようと、外壁銃から放たれた弾丸が迫る。
「ちっ、気づかれちまったようだ。おいアーク、早く避けろ!」
「慌てるなよっ。そんなに機体を揺らされると・・・どぁあああっ!」
 焦る阿童に腕を掴まれ、ハンドル操作がめちゃくちゃになってしまう。
「また銃弾が飛んできたぞ!斜め45度に避けるんだっ」
「俺様の腕を掴むな、離せぇえ!あぁあああーっ、おーちーるーー!!」
 くるくると飛空艇を回転させながら、島の砂浜から200m先の海に墜落した。
「あーっ、まったく!海に落ちたじゃないか」
「す、すまん。つい焦っちまった。うぁ・・・口の中が海水でしょっぱい」
 アークと阿童は小型飛空艇を押しながら砂浜にたどりついた。
「施設は・・・あの林の向こうか」
 岩場を見上げて阿童は林の先にある施設の位置を確認する。
 学園の風紀指導委員としてアークと共に、捕らわれている生徒たちを救出しようと施設へ走る。