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小ババ様騒乱

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小ババ様騒乱

リアクション

 
 
6.水辺の小ババ様
 
 
「仲良く潰してあげますねー。光になるがいいのですー」(V)
 桐生 ひな(きりゅう・ひな)が、プールサイドで小ババ様を軽快に叩き潰していく。
「そちらにも行きましたよ、さゆゆ」
「任せてよね。え〜い」(V)
 桐生ひなに言われて、先回りした久世 沙幸(くぜ・さゆき)がしびれ粉を撒いた。
「こば、こばばばばは……」
 身体がしびれた小ババ様たちの一部が、室内プールの中へと落下する。
「逃がしてはだめですわ。さあ、お二人とも脱いで。プールに飛び込むのです」
 手を緩めてはだめだと、藍玉 美海(あいだま・みうみ)が二人をけしかけた。
「えー、だって、私水着持ってきてないもん」
 さすがに久世沙幸が渋る。
「なんのために忍者にクラスチェンジしたのですか。ここは水遁の術ですわ」
「そんなの知らないもん」
「何事も修行ですわよ!」
 藍玉美海に無理矢理説得されて、文句を言いつつも久世沙幸は制服の上着を脱いでプールに飛び込んだ。
 水の中でマイクロミニのスカートがひらひらするが、水面の屈折のおかげでよく見えないでいる。
「チッ」
 プールわきで、藍玉美海が人知れず舌打ちした。
「えい、えい」
 しゅわわーん。
 水面にぷっかりと浮かんだ小ババ様たちを叩いて久世沙幸が光に変えていく。
「これで最後だよね」
 最後の一人を捕まえて、久世沙幸が言った。
「さゆゆ、それは持って帰るのでしょー」
 空き缶を手に持った桐生ひなが叫んだ。
「でもー、持ってたら泳げないのー」
「なんのためのたっゆんですか。挟むのですわ。こう……」
 藍玉美海が、自分の胸の谷間に手を突っ込んで久世沙幸に指示した。
 しかたなく、それに従って、久世沙幸が小ババ様をたっゆんの谷間に挟んで泳ぐ。
「でかしましたわ」
 プールから上がってきた久世沙幸を出迎えると、藍玉美海は油性ペンを取り出した。たっゆんに挟まれてもがいている小ババ様の額に、ナイチチと書く。
「こばー、こばー」
 小ババ様が、抗議の声をあげた。
「まだ動けるようですわね、きっちりと押さえ込まないと。ひなさん、こちらへ」
「えっ、ひあ!? 何するですかぁ」(V)
 藍玉美海は桐生ひなを呼ぶと、さっとその上着を剥ぎ取った。
「さあ、お二人のたっゆんで小ババ様を挟んで、完全に気絶させるのです」
「むぎゅー」(V)
「ちょっと、これって意味があるのー」
 ぴったりと桐生ひなとだきあわさせられた久世沙幸があたりまえの疑問を口にした。
「何を言ってるのですか。小ババ様はとても弱い生き物です。それをつつみ込むにはたっゆんが最適なのですわ」
 言いつつ、藍玉美海が久世沙幸の持っていたリボンで二人をグルグルと縛り始めた。
「ふう、後はと……」
 梱包するだけだと、藍玉美海が段ボール箱を取り出す。
「あの、ねーさま。まさかそれに私たちを詰めてイルミンスールまで送るつもりじゃ……」
「大丈夫。なまものシールは用意してありますわ」
 藍玉美海が安請け合いした。
「そうはさせません!」
 バンと、プール室の扉を押し開くと、ソート・アソート(そーと・あそーと)が飛び込んできた。
「小ババ様は、自由です。何者にも束縛はさせません」
 言うなり、ソート・アソートは光条兵器で、久世沙幸たちを縛っているリボンだけを切り裂いた。
 逃げようとしてもがいていた久世沙幸と桐生ひなが、バランスを崩して左右に倒れて尻餅をつく。
「こばばばは……」
 ぽろりとたっゆんの谷間から零れ落ちた小ババ様が、小ババ様走法で必死に逃げていった。
「ああっ、せっかく捕まえた小ババ様が」
 桐生ひなが手をのばしたが、小ババ様は壁に開いていた謎の穴に飛び込んで逃げてしまった。
「追いかけさせはしな……ぶはぁ」
 小ババ様と久世沙幸たちの間に立ちはだかったソート・アソートであったが、二人のたっゆんをもろに見て鼻血を噴いてのけぞった。
「えい」
 隙ありと、藍玉美海がチョンとソート・アソートを押す。ばっしゃーんと、ソート・アソートがプールに落ちた。
「私は、ぺったんこの方が……」
 プールに沈みながら、ソート・アソートがつぶやいた。
 
    ★    ★    ★
 
「うむ、堪能した」
 のぞき穴からプールをのぞいていたトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)が、久世沙幸たちのたっゆんを堪能して満足そうにうなずいた。
「おやっ? 暗いな」(V)
 そのとき、突然視界が真っ暗になる。
「むっ? おい、こら、どうした」
 中が見えないと、トライブ・ロックスターが穴に顔を近づけた叫んだ。
「う、うんしょ、うんしょ、こばー」
 真っ暗になった穴から、何かが這いだしてくる。
「こばー。ぽーん、こばっ」
「こ、これは、小ババ様!!」
 穴からポーンと飛び出してきた小ババ様を見て、トライブ・ロックスターが思いっきり目尻を下げた。
「家の子になるか、アーデルちゃん」
 手の上にちょこんと飛び降りた小ババ様に、トライブ・ロックスターは語りかけた。すでに勝手に名前までつけている。
「ああ、かわいいな、かわいいなぁ。アーデルちゃんのかわいさは、本家の大ババ様を超えたんじゃないのかぁ〜。ははは、こいつめぇ、おでこに何か書いてあるぞぉ」
 めろめろになりながら、トライブ・ロックスターは小ババ様とお話を続けていった。
 
 
6.小ババ様より永久に
 
 
「こばー」
「うーん、捕まえて着せ替えごっこしたいのに。待てー、こら、待てー」
 校庭を走って逃げ回る小ババ様を追いかけて、水神 クタアト(すいじん・くたあと)も右へ左へと走り回っていた。走ってはいたのだが、なかなか捕まらない。
「もう、すばしっこすぎて捕まえられないよ。えーい、目標変更!」
 あまりに小ババ様が捕まらないので、ついに水神クタアトは、目標をもっと大きなロリっ子に変えた。こちらなら、小ババ様よりは大きいので、簡単に捕まるだろうという安易な考えである。
「そこのお嬢ちゃーん、ボクのペットにならなーい?」
「な、なんですか!?」
 いきなり声をかけられて、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が目を白黒させた。
「ペットだよー」
 怒濤の勢いで、水神クタアトが駆けよってくる。
「ペット? そういう話であれば、日本一のペットである俺様が話を聞いてやろう」
 ずいと進み出た雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が、水神クタアトの前に立ちはだかった。
「御主人を困らせる奴は、この俺様が許さねえぜ。おらー!ぶっ飛びやがれ!」(V)
「きゃー」
 張り手一番、水神クタアトが吹っ飛んでお星様になる。
 キラッ☆
「悪は滅んだ」
 キランと、雪国ベアが瞳を輝かせた。
「ありがとー、ベア。それで、ソラはどこに行ったの?」
 ソア・ウェンボリスが、もう一人のパートナーの名を出して訊ねた。
「さあ、あいつは、フリーダムだからな。いったいどこに行ったやら」
「また落書きなんかしていないといいのだけれど」
 ちょっと心配になって、ソア・ウェンボリスは雪国ベアと一緒に校舎の中に戻っていった。
「ああ、いい所へ、ソア、そちらへ行ったぜ。捕まえろー!」
 通路の奧から、使い魔の猫たちと一緒に小ババ様の小集団を追いたててきた『空中庭園』 ソラ(くうちゅうていえん・そら)が叫んだ。
「でかしたわよ、ソラ。ほーら、小ババ様、光り物ですよー」
 ソア・ウェンボリスは、光精の指輪から呼び出した精霊の明かりを餌に、小ババ様たちを呼んだ。
「光を食べさせて、足止めしてやるか」
 『空中庭園』ソラも、光術を小ババ様たちにむかって放ってみた。
「こばぴかー!」
 しゅわわーん。
 光球の直撃を受けた小ババ様が、あっけなく光になってしまう。
「きゃあ、ソラ、なんてことするのよ!!」
 涙目で、ソア・ウェンボリスが叫んだ。
 仲間の消滅で立ち止まった数人の小ババ様に、追いついた使い魔の猫が飛びかかる。当然、軽い猫パンチの一発で小ババ様たちは次々に光になっていった。
「きゃー、きゃー」
 ソア・ウェンボリスが悲鳴をあげ続ける。
「よし、こっちに来た奴は任せろ。でええい!!」
 雪国ベアは雪国ベアで、力を込めて捕虫網を振り回していた。
「ごぐばぁ!」
 薙ぎ払われた小ババ様たちが、あっけなく光になっていく。
「ふっ、俺様よりかわいい存在など、許さん」
 キラリと目を輝かせて、雪国ベアが小さくつぶやいた。
「二人とも、何やってるんです。小ババ様が、小ババ様が……、全滅しちゃったじゃないですか。あーん」
「くっ、くまぁ? なんつってー」(V)
 泣きだすソア・ウェンボリスに、雪国ベアが目をキラキラさせて媚びてみた。
「かわいくないですー。てや〜! シャイニングベアクロー!!」(V)
「ぐはっ、それは俺様の技……」
 顔面にパンチを食らって、雪国ベアがのけぞって倒れた。
 
    ★    ★    ★
 
「はあ、大変な目に遭ったのだよ」
 やっとのことで地下フロアから脱出してきた毒島大佐は、日の光を求めて外へと出てきた。
「今度こそ、巻き込まれないようにして小ババ様を……」
「ひああー」
 そのとき、毒島大佐の頭上に水神クタアトが降ってきた。
「な、なあに!?」
 ぐしゃっ。
 直撃を受けて、毒島大佐と水神クタアトが大の字にバタンキューする。
「あれれ、どうしたんですー」
 遅れて外にやってきたプリムローズ・アレックスが、あわてて二人にヒールを施していった。
 
    ★    ★    ★
 
「なんだか、騒がしい学校でありんす」
 たまさか蒼空学園を訪れていたハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)が、小ババ様を追いかけてバタバタと走り回る生徒たちを見て首をかしげた。せっかく所用でツァンダまで来たので、御神楽環菜に挨拶しようと思って立ち寄ったのだが、肝心の校長は不在だし、学園内はかくの有様である。
「そこの生徒、いったい何が起きているのでありんす?」
「ええと、俺のことか!?」
 駕籠に乗ったままのハイナ・ウィルソンに声をかけられて、小ババ様ホイホイを花壇にしかけようとしていた閃崎 静麻(せんざき・しずま)が戸惑いながら自分を指さした。
「静麻、あれって、葦原明倫館の総奉行ですよ」
 小ババ様ホイホイを運んでいるクァイトス・サンダーボルト(くぁいとす・さんだーぼると)の隣にいた神曲 プルガトーリオ(しんきょく・ぷるがとーりお)が、閃崎静麻に耳打ちした。
「そんな大物がなんでこんなとこにいるんだよ?」
 予想もしなかった事態に、閃崎静麻がちょっと混乱する。
「これ、聞いておるのだが?」
「えーっと、悪いな、クァイトス、説明してやれ」(V)
「……」
「無理ですよ。しかたない、あたしが説明します」
 元々発声回路のないクァイトス・サンダーボルトに代わって、神曲プルガトーリオが事の次第をハイナ・ウィルソンに説明した。
「あい分かった。そなたたちは、もう戻ってもよいでありんす」
 事態を把握すると、ハイナ・ウィルソンは閃崎静麻たちを下がらせた。ほっとしたように、閃崎静麻たちが校舎の中へと去っていく。
「ぺったんこの分裂とは、奇っ怪なことでありんすなあ。そんなことで悩んでいるなら、私に相談してくれればよかったでありんすに。後で、イルミンスールへ、秘薬を送ってさしあげるとしやんすか」
 たっゆんな胸を豪快にふるわせながら、ハイナ・ウィルソンは独りごちた。