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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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9-07 どうなる南部諸国?

 オークスバレーからパラ実の一党が攻め入ってきた、との報が入る。
 どういうことだ? 全ての者が、そう思った。
 マーゼン、昴はぎくりとした。オークスバレーには、ノイエの同僚・香取が部隊を率い、奪回に向かった筈だ。まさか、早それが敗れ、パラ実勢は南部諸国にまで攻め入ってきたということなのだろうか? 香取が敗れたならば、こちらの方面にまで攻め入ったとなれば、本営のある三日月湖方面は……
 諸侯にしてもだ。パラ実に呼応したのは、南部諸国での独立色の強い強国ドレナダ。オークスバレーを平定したので、同盟したパラ実とそのまま、南部諸国も制圧に乗り出したのか、と。
 香取の安否は、オークスバレーのその後は、わからない(次章にて語られることになる)。
 しかし、一つわかっていることがある。
 光一郎は、パラ実に、このような手紙を送り届けていた。
 最初の一通では、
「南臣とは、西倉南(※)に臣従する意味」(※西倉南=そして生徒会長の西倉南はドージェの妻、ニマ・カイラスである事も判明したのです。(ミツエ第三回ガイドより))
 と遜った内容をもって南部諸国のパラ実への服従を示した。
 持ち上げたところで……
「南臣とは、南部王家の臣下に決まっておろう、文句あるなら……」と手のひらを返す内容を送り付けたのである。
 これにパラ実がキレたのは当然のことであったろう。



 王子は、あの騎士の言ったことを思い出していた。クライス、と言った。
 それに王子には、月夜のことが……
 王子は自ら陣頭に立って軍を率いて、敵を迎え撃ち、そのままオークスバレー奪還に向かう、と心を決めた。



「アム。ご苦労だったな」
「……」
「下がってくれ。ゆっくり、休んでいるといい。
 ……。これで当面、黒羊の方は……」
 マーゼンは、不敵な笑みを見せた。
 これで、南部諸国が動くか。騎士クライスの言ったように、確かに王子を陣頭に立たせることで、諸侯を一つに纏めることができる。しかし、ならばこれは確実に勝ってもらわんといかんな。
「昴君。さて、我々はどうしようか?」
「クロッシュナー殿。見ているだけとはいかぬでありましょうな。
 しかし、多少予定とは違ったと言え、思う通りにはなりました。今後、そう滅多と来ることもないでしょう。この最南の地で少し羽を伸ばすのも?」
「うむ……しかしまだ、目を離せぬ人物もいたな」
「あ、ええ。そう言えば」



 南臣、どうする?
「まだまだ、これからじゃん?」


 ……再び、マーゼンと昴。
「次は、会談にも参加していない独立三国でありますな」
「うむ。三国か……いや、一度オークスバレーを攻めて撤退中にあるドレナダは、この際、今からの進行軍によって滅ぼさせてもよいか?」
「どうでしょう。あとの二国、プリアラ、デアデルについても、今、南部諸国が一つに纏まろうとしているところを邪魔されてはいけないわけですね」
 ここで、冒頭に出てきた政略結婚の話が出てくる。これによって懐柔を計ろうというのだ。
「王子には、もう一役買ってもらわねばならんな」
「……戦に、結婚にと、可愛そうな気もしますけどね」
「それが乱世というものですな」