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【十二の星の華】空賊よ、星と踊れ-ヨサークサイド-3/3

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【十二の星の華】空賊よ、星と踊れ-ヨサークサイド-3/3
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chapter.14 大収穫 


 さっきまで激しかった空はすっかり静けさを取り戻し、生徒たちはツァンダの地に降り立っていた。
 カシウナや他の街が解放されたという知らせを聞き、安堵する住人たち。ツァンダも守られ、喜びに湧く多くの人たちの輪の外で、石像となったザクロがはめたままの白虎牙をこっそり持ち出そうとする者がいた。シャーロットのパートナー、霧雪 六花(きりゆき・りっか)である。本当は戦闘中にこっそり奪取したかったが、彼女が入っていたポケットがついた服の持ち主、呂布が倒されてしまったため機会を失っていたのだ。
「さすがに白虎牙は自分自身までは硬化しないのね。お陰で今なら悠々と外せる。後はこれをセイニィに届けて……」
 その時、同じく白虎牙を狙っていた又吉とリーズが、六花を手で掴もうとする。
「それは俺のもんだ! オークションで売って大儲けするのに必要なんだからよこせよ!」
「んに、ダメだよ! ちゃんとユーフォリアさんのとこに返さなきゃ!」
 3人がドタバタと奪い合いをしているうち、白虎牙はあさっての方向へと飛んでいく。神様がそこに放ったかのように、その場所にはフリューネがいた。彼女はにっこりとハルバードを3人に向け言った。
「戦いが終わった後で、こんなみっともないマネはやめなさい!」
「は、はい……」
 3人は、一目散に去っていった。

 白虎牙が外された後、ザクロのところを訪ねた生徒がいた。
 緋桜 ケイ(ひおう・けい)とパートナーの悠久ノ カナタ(とわの・かなた)『地底迷宮』 ミファ(ちていめいきゅう・みふぁ)の3人だ。カナタがザクロを見上げて言った。
「今にして思えば、こやつの星剣の力が色々な出来事を引き起こしておったのだな。しかし果たして、こやつは自身自身の星剣の力をしっかりコントロール出来ておったのであろうか?」
 もちろんそれに答えられるものはいない。ケイはカナタの言葉を聞き呟く。
「カナタの言う通り、もしかしたらかつてはコントロール出来ていた自分の星剣の力が、今では制御できなくなっている……ということもありえるのかもな」
 ふたりの会話を聞いていたミファが、ふと思ったことを口にした。
「そう言えば光条兵器の星扇が欠けてしまったのも、その影響だったかもしれませんね」
 3人は、星扇であるにも関わらずあまりに容易く欠けてしまったことを、疑問に思っていた。そして、疑問がもうひとつ。
「さっき他のヤツにちらっと聞いたけど、その扇の破片を媒介にして生徒がヨサークの精神に入り込んだらしいんだ。星扇の力は、十二星華しか使えないんじゃないのか?」
 ケイが口にした疑問に、カナタが憶測ではあるが、と前置きして考えを告げた。
「ひょっとしたらザクロは、わざと扇を欠けさせたのかもしれぬな」
「わざと……?」
 ミファが首を傾げる。
「破片に力を宿らせたままにして、それを見つけた者をヨサークの精神に入れたことであの男の内面に変化が訪れたのだとしたら…… 人はきちんと変わることが出来るというのを、誰かに示してほしかったのかもしれぬな」
「もう一度ザクロと会って、確かめたかったな」
 ケイは少し淋しそうに、ザクロの像を見て呟いた。



 ザクロの像からやや離れたところに船を下ろし、地面に足をつけたヨサークは自分のところへと歩いてくる生徒の姿に気付く。
「ん……なんだおめえ?」
 九条 風天(くじょう・ふうてん)は野分を抜きながら答える。
「操られていたとはいえ、ヨサーク空賊団としてカシウナを襲った責任はとって頂きましょうか」
 言葉と同時に切りかかった風天の野分を反射的に鉈で防ぎ、ヨサークが睨み返す。
「んなこと分かってんだよクソガキ……! 後でいくらでも復興に手貸してやるっつうんだ! 今くれえちょっといい気分に浸らせろこらあ!」
「そんな乱暴な言葉、信用出来ませんね。やはりここは命くらいかけてもらいませんと」
 再び風天が切っ先をヨサークに向ける。
「聞けば貴方は病み上がり。こちらも連戦後で体力は消耗してますから、体力的には五分ということでいいでしょう。まさか、逃げませんよね?」
 ヨサークははあ、と息をひとつ吐くと鉈を風天に向けた。
「言っとくが、これで俺が耕しても正当耕作だからな」
 だん、と力強く一歩目を踏んだヨサークの足音を合図にして、同時にふたりが距離を詰めた。
 勝負は一瞬。ヨサークの喉元に、風天の野分が突きつけられていた。そして、風天の喉にもヨサークの鉈の先端が。
「切らないんですか?」
「そういうおめえはどうなんだよ」
 その姿勢のまま、数秒の間が空いた。と、風天はすっと身を引き、刀を収める。
「ボクが以前切った空賊みたいに無様な姿を晒してくれれば切っていましたが、貴方の様な人でも思ってくれる方々もいるようですしね。ただ……」
 思い出したように風天はヨサークとの距離を縮め直すと、刀の柄で不意に鳩尾を突いた。
「あ……お、おめえっ」
「前に校長を救出した時裏切ってくれたお礼です。街の復興を手伝うというさっきの言葉……嘘だったらその時は、こんなものでは済ましませんから」
 柄をカチカチと鳴らしながら、風天はその場を去っていった。
「言われなくても、分かってるっつってんだろうが」
 呟き、鉈をしまったヨサークは改めて船を見上げる。彼は今までこの船で行った様々な場所、船に乗った様々な人のことを思い返す。と、後ろから声がかかった。振り向くと、さけが穏やかな顔で立っていた。
「お疲れ様ですわ、ヨサークさん」
「……おいクソボブ、おめえ、勝手に人のバンダナに文字書きやがったな」
 ヨサークの言葉を聞くと、さけはほんの少し顔を赤らめた。彼女はそこに書いた文字を思い出していたのだ。
『今度から、屈んでいただかないと届きませんの』
「……まさかヨサークさんがあんな気の利く大胆な方だと思ってなかったものですから」
 照れを隠すように、さけがそっぽを向く。と、さけはこちらに向かってくる団員やヨサークを今まで手伝ったことがある生徒たちの姿を目にする。その中にいた梓がヨサークに走り寄ってくると、ぽんぽんと肩を叩いて言った。
「頭領、最近アレ聞いてないからやりたいなー」
 ヨサークは集まってくる皆に目をやると、梓に「そうだ、忘れるとこだった」とヘッドホンを返す。ずっと彼から預かっていたものだった。
「ただ、これやる時は外しとけよ?」
「当たり前だよ、頭領ー!」
 そしてヨサークは高々と手を上げて、声を響かせる。
「Yosark working on kill!」
「Hey,Hey,Ho!」
 震えた空は、彼らにとって一番の収穫物だった。

担当マスターより

▼担当マスター

萩栄一

▼マスターコメント

萩栄一です。初めましての方もリピーターの方も、今回のシナリオに参加して頂きありがとうございました。
そして、最終回なのに公開予定日を過ぎての公開になってしまい申し訳ございません。

今回、「一部招待者専用アクション」を用意しました。その内容はリアクションである通りですが、
これは今までシリーズを通して常に良アクションをかけてきてくれた方へのボーナスみたいなものと受け取って頂ければ幸いです。

対ザクロ戦ですが、かなり大勢の方のアクションがここに集中し、いくつか被ってしまったものもありました。
同じことを繰り返して書いてもアレなので、その分が残念ながらカットになってしまった方などもいます。ご了承ください。
またザクロの結末については、ザクロをどうするかといったアクションの内容、および人数を元に決めました。
戦闘系のアクションでは、ただアイテムやスキルを使うだけではなくキャラの感情や言葉が入っていると描きやすいです。

ちなみに今回の称号は、LC含め全部で18人のキャラに送らせて頂きました。
一定回数連続参加者が主な対象です。
称号を付与してなくても、アクションに対する意見などを個別コメントで送らせて頂いているパターンもございます。

最後に、今回も次回シナリオの告知させてください。
まだ確定ではありませんが、おそらく今月末頃に次のシナリオガイドが出ると思います。
きちんと決まりましたらブログの方で告知したいと思います。ブログは「萩に地鶏身」で検索していただければ。
今回のリアクションの裏話とかも書くことがあれば後で載せるので、もし興味のある方がいましたら覗いてやってください。
そんな感じで、長文に付き合っていただきありがとうございました。また次回のシナリオでお会いできることを楽しみにしております。