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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第1回/全2回)

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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第1回/全2回)

リアクション

「ええ、解っているわ!」
 次々、魔法攻撃を繰り出すリースのバックアップにSPチャージを行いながら、攻撃が来ないように隠形の術で隠れ、攻撃しようとする敵を不意打ちで倒す。
(最悪の場合、非常手段として体を壁にすることも考慮するぞ…ここは必ず、突破してみせる!)
 重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)は、降下後、煙幕ファンデーションと弾幕援護で土煙を起こして、バッソ隊の視界を一時的に奪ってしまう。
「な、なんだ!」
「慌てるな、煙幕ファンデーションでしかない! 一旦退却!」
 バッソの言葉に反発するかのように、ダンツオが
「怯むな! 敵は小僧どもばかりだ! そのまま退却するな!」
 全く反対の命令を出すダンツオにバッソはきっと鋭い視線を送るが、同じくダンツオも「ここで退くとは、さすがはエリート殿。保身がしたいと見える」と憎まれ口を叩く。
 そこにざわっと隊士達の声が上がる。
「『藤野赫夜』が現れたぞ!」
 煙幕ファンデーションの中に、確かに黒いセーラー服に身を包んだ赫夜の姿が浮かび上がった。
「狙い撃て!」
 ショットガンやマシンガンが赫夜目掛けて放たれる。しかし、それは虚しく煙幕ファンデーションに吸い込まれていく。
「何故だ!」
 バッソが叫ぶ。
 実は、あらかじめ赫夜の音声と姿をメモリープロジェクターに記憶しておき、土煙が晴れるタイミングで赫夜の映像と音声を投影し、囮としてバッソ隊の注意を引くよう、リュウライザーが仕掛けていたのだ。
と、同時にリュウライザーはもう一つ、仕掛けを施していた。
 バッソの配下には
「庶民風情の部隊に負けるのは生き恥」
 ダンツオの配下には
「金で装備だけの悪趣味部隊に負けるな」
 と、同時に情報攪乱を行っていたのだ。
 元々、バッソ派とダンツオ派に別れていたこのエリート集団。それでも、戦闘能力が素晴らしく、お互いに争わせることで、ケセアレはこの集団を上手く使ってきたのだ。
 しかし、ここにきて、その二つの派閥が決定的な溝を生み始める。
 それぞれが、統一の取れない行動をしはじめ、その場には疑心暗鬼と猜疑心の重苦しい雰囲気が漂いはじめ、統率が取れなくなっていく。

 さらにそこに、雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)がまるで影のように、隊士たちの間に入り込んでくる。
(ミケロットにもう一度会いたいわぁ。何故って? 私はね、いつまでも昔の女を思っている男と他人に協力してついでに自分の願いをかなえようとしている男とは今まで付き合ったことないの…折角だし色々聞きたいから、お邪魔するわねぇ。ふふ)
 自ら毒をまき、ケセアレに派遣された看護士のフリをしながらナーシングするフリをして、
「あの…先ほど、彼ら(庶民層派)と似たような服装をされてる方と移動中すれ違いましたわぁ」
「誰か、戦闘にまぎれてこの部隊の作戦を失敗させてぇ隊長に恥をかかせようとしているかも知れませんわね」
 とダンツオ側、バッソ側の隊士にそれぞれ、相打ちを誘う作戦に出ているため、ますます、状況は混乱させられている。


 バッソ派のエリートの隊士をつかまえると、一ノ瀬 月実(いちのせ・つぐみ)
「エリートだから、いいもの食べてるんでしょう!!」
 と食料庫のありかを吐かそうとする。ぐいぐい締め上げてくる月実に兵士はギブアップする。
「しょ、食料庫は地下にある…」
「本当ね!? いいわ、許してあげるわ。…逃げるわよ、リズ! あとは他の人たちに任せるのよ! 私はね、ただエリートがどんなものを食べているのか気になっただけよ! あわよくば持ち帰って食べてやろうとか思っただけよ!」
 と、地下に向かって…要するに食料庫に走っていく。
「きっとイベリコ豚とかおいてあるのよ〜!!」
 リズリット・モルゲンシュタイン(りずりっと・もるげんしゅたいん)が月実にツッコむ。
「ちょ、ちょちょちょっとまって! だいたい戦闘するんでしょ! そんな場合じゃないでしょ! いや、敵の分裂の誘うってことで色々煽るのは良いかもしれないけど、なんか怒ってこっちに向かって来そうじゃん!! それはそれで統制失うから良いのかもしれないけど。って、逃げるの!? 投げっぱなし!? 書き手にも笑われているかもしれないわよ! てか、確実に笑ってるわよ! あんたほんとに食糧だけが目当てだったの? あんた一体に何しにきたのよ!! って、結局それかぁぁぁぁぁ!! 落ちもなにも引っ込みつかないよー! …もう、これで食糧庫見つけられなかったら何しに来たのか。…いいわ、美味しいおやつ食べたーい!! チョコファウンデーション! あまーいクッキー!! きっとケセアレのことだから良い物食べてるわね、いいわ、私も食料庫へ行く!…ところで私って平民なのかな。それとも上流階級なのかな。後者だとしたら落ちぶれたものね。ふふ」

☆   ☆   ☆   ☆   ☆    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

「今だ! 露払いは随分すんでるぜ! いけ!」
 牙竜が小型飛行艇で中央部へ旋回し、赫夜、佑也とにゃん丸、リリィ、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)が中央部へ降り立てる為の場所を示すと、佑也に向かって
「さっさと片付けて、藤野赫夜と大団円してこい!」
 と叫ぶ。
「…解った。ありがとう! ケンリュウガー!!」
 佑也は牙竜たちの友情に強く心を打たれていた。
「赫夜さん、いくよ」
「ああ。…私はひとりじゃない。佑也さん、みんながいる…! そして、みんなで真珠を奪い返しに行く! そして大円団だ!」
 赫夜はぎゅっと佑也の手を握って笑った。
 これまで見たことがない、強く綺麗なその笑顔を佑也は一生忘れない、と心に決めた。