リアクション
●終章
「サラ・リリ〜! ご飯食べようよ。おなかすいたぁ!」
ルシェールはドアを叩き、お行儀悪くドアの外から叫んだ。
この部屋は最上階のロイヤルスイート、校長先生とサラディハールの泊まる部屋だった。
こんなところで大きな声を出してはいけないとわかってはいるものの、空腹には耐えかねた。
「なぁ、ルシェールぅ。こんなところで大きな声出すのやめようぜ」
椿は言った。
「だってさぁ、お腹すいたんだもん。朝食ビュッフェが終わっちゃうよ? サラ・リリもご飯食べなきゃいけないんだから起こさなくっちゃ」
「おいおい……ルシェール。ここは校長先生もいるんだからさ、もうとっくの昔に起こしてるよ」
紅月は困ったように言った。
「そうだぜ、ルシェール。早く行こうぜ」
凛も呆れたように言った。
それを聞くや、ルシェールはぷう〜っと拗ね始めた。
「だってだって! 一緒にいるって言ったのに、ソルヴェーグってば、翡翠さんのところにお泊りしてるんだもん!」
「そ、それはだなぁ……」
紅月は困って眉を寄せた。
「そういうこともあるんだよ、大人なんだからさ」
さすがに何があったかは言えない紅月だった。
「紅月哥々もそうするの?」
「俺は…昨日の晩はずっと一緒だったよ」
「そうなんだけどォ……もう! サラ・リリの馬鹿ぁ! 起・き・て!」
「ルシェール、大きな声出しちゃだめだぜ」
椿は止めたが、怒っているルシェールはドアを叩くのをやめない。
そして、もう一度叩こうとした時、ドアは開いた。
「サラ・リリ! ごはん〜〜〜……」
不意にドアが開いた。
「サラディハールなら寝ているよ」
そういって顔を出したのは校長先生だった。
「お行儀が悪いね」
「ごめん……なさい」
「なにかあったかね?」
「あ、校長先生! すみません。ルシェールが拗ねちゃって…その」
凛は言った。
「拗ねた?」
「はい。ソルヴェーグが翡翠さんのところに泊まったって怒ってるんです」
ひじょうに言いにくい台詞を言わねばならず、凛はルシェールをちょっと睨んだ。
「ほう…それは……怒るね」
流石は校長、すぐに何があったかを推察する。
「サラ・リリも起きてこないし!」
ルシェールは言った。
そして、部屋の向こうを覗こうとした。
校長先生の背後にサラディハールは見えた。
どうも、ベッドの中らしい。
薄い水色に染めた長い髪が見えた。
「あ、サラ・リリっ!」
「こら、ダメだぜ…ルシェー…ル。……あ〜〜」
「え? なに」
「みっ、見るな!」
「何がぁ? 見せてぇ〜〜」
「ばっ、ばか!」
「ルシェールダメだぜ!」
椿も言った。
この部屋で何が起きたのか、ルシェールは気が付かなかった。
だがしかし、紅月は大人の街でバイトしていただけあって、そういうことには慣れている。校長と先生の間で何が起きたかを即座に理解した。
「ほら、俺たちで飯食おうぜ」
「サラ・リリ〜〜〜。一緒にご飯〜〜〜〜っ!」
「ほら行くぜ」
「椿ちゃ〜ん。ねぇ、今度、ソルヴェーグのこと怒ってよォ〜」
「はいはいはいはい」
三人はルシェールに目隠ししたり、腕を引っ張ったりしてそこを退かそうとする。
そして、少し遅い食事をしに、四人は階下へと降りていく。
「やれやれ…だね…」
観世院校長は、賑やかな生徒たちの後姿を見えなくなるまで見つめていた。
眩しい太陽は窓の外で燦然と輝く。
夏、本番。
恋も、本番。
自分たちの――Precious Life(価値ある人生)
人生は、命そのもの。
輝ける命たちよ
この大地で花開け……
こんにちは、黒織肖です。
この度は、「【2020年七夕】Precious Life」にご参加いただき&ご拝読いただき、誠にありがとうございます。
第二部がはじまりました。
新入生さん、いらっしゃいませ。
そして、在校生徒の中の、新しいお客様、よくぞいらしてくださいました。
楽しんでいただけたら幸いです。
この度は、恋愛シナリオということで、NPCの誕生日とその背景及び心の中を交えて書かせていただきました。
本来はさらっと終わらせるつもりでしたが、なかなかに濃いアクションをいただきまして、このようになりました。
うちのNPCも愛されていたんだなぁと実感した次第です。有り難いことでございます。
いや、本当に濃かったです。
新入生さんがいらっしゃいましたので、アクションを基本に、書けるだけ書きました。
たくさん喋らせてありますので、RPのお役に立てればと思います。
あ、RPってロールプレイのことです。キャラ口調で会話することと言えば良いのでしょうか。
アクション投稿時の文字数稼ぎや掲示板での交流などで使うことが多いので、慣れておくと便利ですよ〜。
楽しいですしね。
おかげさまで今回は書きまくってます(笑)
出番やアクション内容により、出方や量など違いますが、それぞれがそれぞれの役割を果たしております。
お疲れ様でございました。
Life――人生・命
この言葉に二つの意味があるのは、二つが同じ存在そのものであるためと私は思っています。
人生を粗末にするものは、命を粗末にし、
命を粗末にするものは、在るということへの感謝を粗末にしていることにほかなりません。
それを書けたのなら、このシナリオはほんの少しだけ成功したということなのではないかと、私は思います。
では、またお会いいたしましょう。
※8月11日 。15ページ冒頭と個別コメントにおきまして、水神 樹さんの名字が「水上」になっておりました。 この度は大変申し訳ございませんでした。