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枕返しをする妖怪座敷わらしを捕まえろ!

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枕返しをする妖怪座敷わらしを捕まえろ!

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第9章 お子様な座敷わらしにお供えものを

「お茶会にいたあの人、いなくなってますね」
 由宇は社の周辺を見ると、ルシオンが連れて来た少年は待ち人を探しに行ったのか、いつの間にかいなくなっている。
「おい、座敷わらしがいるぞ起きろ!」
 1度目はすぐに逃げられてしまい起こすタイミングが合わなかったが、生徒たちに囲まれた状態で逃げられない今なら会えると、ダリルはルカルカを槍尻で突つき起こす。
「うわぁん、何か怖い夢見てたーっ」
「悪夢だったら後で聞いてやるよ」
 ルカルカの頭を撫でて泣き止ませる。
 一方、満夜の方はまったく起きる気配がない。
「去年は何もしなかったのかな?」
 その年には枕返しをしていないのか、綺人が座敷わらしに聞く。
「してないよ」
「それはどうして?」
「ただ悪夢を見せるだけじゃ気が納まらないもん。お供えものくれない人たちを、身体ごと悪夢に送ってお仕置きしているだけ!」
「そんなに怒っているならなぜ、ここから出ていかないのですか?」
「この土地で村の人たちをずっと見守ってきたけど。長くいすぎちゃった影響で・・・、身体がここから離れることが出来なくなったのっ」
 瀬織の言葉の質問に、もの凄く不機嫌な顔をし、べーっと舌を出して離れる。
「一緒にお菓子食べよう」
 ムッとしている座敷わらしをクマラが誘う。
「今度からお供え切らさないように気をつけるよ。ごめんね?」
 エースが膨れっ面をする少女に謝る。
「うーん・・・」
「ここにいたんじゃな」
 座敷わらしを探していた御前が駆け寄っていく。
 パートナーのセリスと、ずっと小豆飯と稲荷寿司を持ち歩きながら探していたが、見慣れたものではこの妖怪はあまり寄ってこないようだ。
「ほら・・・腹が減っているんだろ。とりあえず食え」
 小豆飯をセリスが渡す。
「まさか嫌いなのかのぅ?」
 なかなか食べようとしない相手に、御前は首を傾げる。
「ここにいる皆は、無理やりいうことを聞かせようとしていないから。そんなに警戒しなくても大丈夫だって」
 物でつって無理にいうことを聞かせるわけじゃないと、エースが少女の警戒心を解こうとする。
「そうなの?」
「だから気楽に、一緒に食べたらいいんじゃないかな」
「じゃあ・・・もらうっ」
 セリスから渡された小豆飯をもぐもぐと食べる。
「わらわはとっても美味いと思うんじゃが。あぬしはどうかのう?」
「美味しいね」
「これもあるぞ、食べてみるのじゃっ」
 御前から渡された稲荷寿司を黙々と食べる。
「いっぱい走ったから喉かわいたんじゃない?お菓子だけじゃなくて飲み物も持ってきたよ」
 ルカルカが座敷わらしにジュースを渡す。
「ありがとうお姉ちゃん」
「どういたしまして♪」
「お供えものさえあればいいのかい?そりゃ人間より欲が少ない、いい子じゃないか」
 もらったお供えものを食べている彼女をアレンが見て言う。
「枕返しっていうのはオレでも使えるものなのかな。だとしたらぜひ伝授してほしいね。いや何に使うかは別として」
「使えないよ。わらしだけ〜」
「そうなのか・・・」
「座敷わらしちゃんの名前は何ていうのかな?」
 少女の隣に座ったエースが名前を聞く。
「わらしは座敷わらしだよ」
「そっか、それが名前なのか。なかったら小夜ちゃんと呼ぼうかな・・・て思ったけど」
「愛称は?そういう呼ばれ方いやかな?」
 座敷わらしの傍にしゃがみ、愛称で呼んでいいか聞く。
「いいよ別に」
「じゃあ敷ちゃんって呼ぼう!」
「あっ、俺も小夜ちゃん・・・呼ぼうかな。なんてっ」
「ベアが作ったアイスを作ってくれたの。味は保証つきよ」
 悩んでいる座敷わらしにアイスをあげようと、美羽がクーラボックスの蓋を開ける。
「自信作です、食べてみてください」
 ベアトリーチェは器によそって勧める。
「なぁにそれ?―・・・冷たいけど、甘くて美味しいっ」
「ボクたちもお菓子持ってきたよ。どれがいい?」
 持って来た和菓子や洋菓子を座敷わらしにリーズが選ばせる。
「うーん、その丸いの」
「メロンパンだね、はい。美味しい?」
「うんっ」
「もう1つあるよ、食べる?」
「食べるーっ」
「陣くんメロンパンと、お茶ちょうだい」
「たしかここに・・・あった!」
 おもちゃ袋の中に玩具の変わりに入れておいた、メロンパンとお茶をリーズに渡す。
「どうぞ」
「ありがとー。おじさんもありがとう」
「おじさ・・・ん!?お兄さんの聞き間違えかな、はははっ」
 青筋を立てながらも陣は怒りを抑える。
「ううん、おじさんって言ったの」
「このガッ!」
「もう集まっていたんだね」
 怒りが爆発する寸前、弥十郎の声が聞こえ、陣の声が遮られる。
「お供えものの小豆飯とようかんを作ってきたよ。さぁ食べてみて」
「すごく美味しいよ、お兄ちゃんお料理上手なんだねぇ」
「そうかな・・・」
 座敷わらしに褒められ、弥十郎は照れ笑いする。
「ごめんね・・・もうこっそり観察したりしないから」
「本当に?お兄ちゃん」
「うん、本当だよ!」
「それならいいや♪」
 少女に許してもらい、響はほっとする。
「お子様ランチを作ってみたんだ。食べてみてくれ」
 涼介がお供えものの料理をお盆に載せて社へ持って来た。
「冷たい水ようかんもありますわよ」
 彼女後ろからエイボンがひょっこりと顔を出す。
「さくさくしてて美味しいっ」
 座敷わらしはまっさきに海老の天ぷらをぱくぱくと食べる。
「水ようかんだぁ」
「どうですの・・・?」
 エイボンは不安そうに小声で聞く。
「つるっとしてて美味しいよ」
「本当ですの!?よかったですわ」
 美味しく食べてもらいほっと息をつく。
「出汁巻き卵やわらかぁい♪ん?これ肉団子?」
「トマトソースをかけてみたんだ」
「へぇ〜・・・これも美味しい♪他のも食べてみようっと。―・・・すまし汁だぁ〜、んぐっ・・・ふぅ。お焦げがある!ぱりぱりしてる〜」
「その俵結びが気に入ったようだな」
「うんっ。このサラダ食べやすいね。スイカも小さく切ってくれただんだね!」
「あぁ全部食べやすいように、そのサイズにしたんだ」
「そうなんだぁ!お兄ちゃんとお姉ちゃんもお料理上手だねぇ〜」
「こっちもそういってもらえると、作りがいがあるな」
「僕たちが作った蒸しパンもどうぞ」
 綺人がユーリと一緒に作った蒸しパンを座敷わらしに渡そうとする。
「―・・・さっきの質問でなんか怒らせちゃったかな。これで食べて機嫌直して」
 食べようとしない少女の手に乗せる。
「―・・・・・・」
 彼を見ながら座敷わらしは無言で食べる。
「どうだ?」
 彼女の傍へ行きユーリが味の感想を聞く。
「ふわふわであまぁい」
「他のもあるぞ」
「食べてみるっ」
「(大丈夫そうだな。機嫌も少し直ったみたいだ)」
 蒸しパンを美味しそうに食べる姿を見て、上手く出来たとほっとする。



「見てください、ネンドみたいにこねてあそべて、食べれられるんです」
 ヴァーナーは座敷わらしの傍へ行き、ネコの形を作って渡す。
「指におさとうをつけて作るんです!」
「やってみるー」
 粘土のようにこね、小さな馬を作る。
「きな粉味だ〜」
「おもしろいのもありますよ。この粉をたべると・・・むむむっ!口がパチパチするんです」
「わぁ〜パチパチするーっ」
 抹茶味を食べ、きゃっきゃと喜ぶ。
「クッキーもあるよ」
「欲しい〜」
 クマラからは焼き菓子を分けてもらう。
「さくさくしてるー」
「他にもいーっぱいあるよ」
「何があるの?」
「うーんとね、プチケーキとか。ウェハースとか・・・青リンゴの飴とかも!」
「牛乳は飲まんのか?」
 陣が横から割って入るように、水筒に入れてきた牛乳を座敷わらしに勧める。
「わたし牛乳きらぁーい」
「そんなこと言ってると、大きくなれないって」
「やぁだ。お茶ちょうだいおじさん」
「またオレのことを、おじ・・・おわっ!?」
「お菓子を食べながら一緒に遊びましょう。どれで遊びますか?」
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が陣を退かし、座敷わらしの傍に座り、どの玩具が好みか並べる。
「おじさ・・・じゃなくて、陣さんも一緒に遊びます?」
「いやオレは見てるだけでいいって」
「じゃあボクが混ざろうかな。そこ退いて陣くん」
 リーズに陣はさらに退かされてしまう。
「カルタやりたい!」
「座敷わらしさんこういうの好きなの?」
 メイベルの隣に座っているセシリア・ライト(せしりあ・らいと)が聞く。
「うーん・・・ていうか、このカルタに書かれていることが面白いからかな」
「カルタ?ルカルカも混ぜて!一緒にやろう敷ちゃん」
 参加しようと座敷わらしを膝に乗せる。
「私が札を読みますね。お手つきは1回休みになってしまうので、気をつけてください」
 ステラ・クリフトン(すてら・くりふとん)が読み札を手に取る。
「負けませんわよ」
 フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)は札の位置を覚えようとじっと見る。
「では読みます。一寸先は闇」
「はいっ!」
 札の場所を記憶したフィリッパがバンッと叩く。
「1枚ゲットですわ」
「それでは・・・飲んだら乗るな〜」
「はぁいっ。わーい、取ったー!」
 セシリアが札を取る。
「3枚目を読みます。私は必ず戻ってくるー」
「はいーっ!」
 バシイィイッとルカルカが札を叩いてふっ飛ばす。
「取れたよ敷ちゃん」
「ありがとうお姉ちゃん!」
「(あんなパワーで叩かれたわたくしたちの手が折れてしまいそうですわ!)」
「(ルカルカさんに見つけられる前に取らなければいけませんね」
 本気で叩くルカルカのパワーに、フィリッパやメイベルたちが警戒する。
「どんどんいきますよ。あぁー無情〜」
「はいぃいっ。取れたー!」
 ウェハースをもぐもぐと食べながらクマラが札を取る。
「今度のはちょっとだけ長いですね。今日は血の雨が降るー」
「はぁいっ。やっと1枚取れました!」
 札を取ったメイベルが嬉しそうな顔をする。
「何だか変な札ばかりですね・・・。毎日が死合いの日々〜」
「はい!取れた取れたっ」
 座敷わらしがペシッと札を取る。
「雨の日はーむーのーうー」
「はいぃいっ!わーい、陣くんの分身みたいなのが取れた〜。見て見て陣くん」
 リーズが取った札を陣に見せつける。
「うっ・・・、うっさい!それに今日は快晴だっつーの!」
「これはさっきのと似てますね。霧のせいで湿気っているー」
「見つけましたっ、はい!」
「はーぁああーいっ!」
 先にメイベルが見つけたのだが、ベシィイーンとルカルカに札を叩かれ、あっけなく取られてしまう。
「私が先に見つけたのに取られてしまうなんて・・・。湿気ったマッチの札を」
「いやそんな名前じゃなかったはずだけどメイベルちゃん!?」
「はっ、すみませんつい・・・」
「オレの存在って・・・」
 ついというその言葉で陣はさらにへこんでしまう。
「ふっふふ〜どんどん取っちゃうよ♪そうだ、ルカルカが札の場所を教えるから、敷ちゃんが取って!」
「わぁい♪」
「(これで脅威がなくなりましたね)」
 彼女の言葉にメイベルはニヤッと笑う。
「では読みます、少年よ無能なのだ」
「ここにあるよ敷ちゃん」
「あった!はいっ」
「はい。やりましたわ」
 ルカルカに教えてもらった札を座敷わらしが取ろうとするが、横からさっとフィリッパに取られてしまう。
「むぅーっ」
「勝負というものは、このように厳しいものなのですわ」
「読みますよ、火が出ないガスバーナー」
「あれですね」
「僕たちに聞こえるように言うなんて、甘いよメイベル!」
「その札、わたくしがいただきますわっ」
 メイベルが見つけた札を、フィリッパとセシリアが取ろうとする。
 バシバシッ。
「あっ、それお手つきですよ」
 ステラに言われ彼女たちは目を点にする。
「―・・・はっ!もしかしてこれはトラップ!?酷いよメイベルーっ」
「卑怯ですわメイベル様っ」
「えっ、何を言っているんです?はぁ〜・・・勝負ってこんなに厳しいものなんですね」
「くぅうーっ!!」
 本物の札を見つけられたあげく、自分と同じようなことを言われ、フィリッパは悔しそうにハンカチを噛む。
「お2人はお手つきでお休みですね・・・読みます。アルコールのないランプ」
「今度もいただきですね、はいーっ」
「はい!やったー取れたー」
 札を見つけたものの、お菓子を食べているクマラに取られてしまう。
「取られてしまいましたか。でも次こそは・・・あっ!また取られてしまいました。意外と強敵ですね・・・」
 何枚もクマラに札を取られてる。
「最後の1枚です、人生お先真っ暗だ〜」
「敷ちゃんそれよ」
「その札、私がもらいましたっ」
「いいえわたくしのものですわ!」
「僕が取るっ」
「オイラが取っちゃおう」
「はぁいぃ、わーいやったー取れた」
 最後の札へいっせいに手を伸ばすが、座敷わらしに取られてしまった。
「うーん・・・メイベルとフィリッパとクマラが同じ枚数のトップだね。僕・・・ビリだ」
 ビリになってしまったセシリアはがっくりとした顔をする。



「座敷わらしくん私たちに何か出来ることありませんか」
 何か出来ることはないか由宇が聞く。
「うーん・・・後で村人にお供えものを忘れないように、わらしと一緒に言って欲しい・・・」
「分かりました!」
「お姉ちゃんありがとう」
「ちょっとあの曲を弾いてから・・・」
 妖怪の少女を追いかけている途中、聞こえてきた童謡を由宇がギターで弾き語りする。
 由宇の歌声が闇夜に響く。