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闇世界…村人が鬼へ変貌する日早田村

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闇世界…村人が鬼へ変貌する日早田村

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第5章 楽しみは困らせること・・・残酷な妖怪少女

「給湯室とかどうでしょう・・・?」
 集会場の中にやってきた由宇は、闇世界になった影響で古びた状態へと変わった木のドアに手をかけてそっと開ける。
「どうしてここなんだい?」
「こういうところって、お茶請けのお菓子とかあったりするんです。鎌鼬が来た形跡があるかもしれません」
 戸棚を開けて中をゴソゴソと漁る。
「この菓子袋は開いてるようだけど?」
「見せてくださいっ」
 アレンの手から煎餅の入った袋をぱっと取る。
「古い感じがしますけど、これは村が変わってしまった影響ですね」
「村人が昼間に食べかけてほうっていったのかな」
「いいえ、普通はちゃんと閉じておくでしょう。でもこれは開きっぱなしです」
「結構雑に開けてるね」
 鋭利な刃物でめちゃめちゃに開けた袋を摘んで由宇に見せる。
「子供でもこんなことしません。きっと鎌鼬さんが昼間、ここでお菓子を食べたんです!」
「じゃあこの近くか、その先にいるかもしれないね」
「早く外へ・・・むぅ!?」
「静かにっ」
 由宇の口を手で塞ぎ、アレンはテーブルの下へ隠れる。
「貯蔵庫の奥の方に鬼がいるよ」
「―・・・むぅうう!!?」
 少女はもう片方の手で視界も塞がれてしまう。
「なるべく音を立てないようにそっと出よう・・・」
 鬼の足音に合わせてアレンは由宇が怖がらないように視界を塞いだまま、身を屈めドアの方へ向かう。
 ブラックコートを落とさないように端を口で押さえ、ドアの隙間を肩で押し開ける。
「ぷはぁあ〜。苦しかったです・・・」
 アレンが手を離した瞬間、由宇は外の空気を吸う。
「鬼に気づかれないうちに、早くここから離れよう」
「アレンさん、誰か林の方へ走って行きますっ」
 由宇は真と歌菜の姿を見つけて彼に教える。
「もしかして見つけたのかな?」
「そうかもしれませんっ、行ってみましょう!」
 鎌鼬を見つけたのかと思い、2人の後を追いかける。
「暗くてよく見えませんね・・・」
「落ちないように気をつけてね。崖に落ちたら村の外へ出ちゃうから」
「外ってことは・・・1度死ぬってことですよね」
 村の外に戻って生きているにしても、死ぬ恐怖があることには変わりないと、由宇はアレンに手を引いてもらいながら慎重に橋を渡る。
「怖かったです・・・。―・・・空に何か浮いてますね?あれが鎌鼬さんでしょうか!」
 じっと目を凝らして見上げると、空に幼い少女が飛んでいる。
 少女から視線を外さないように追いかける。



「この辺りに仕掛けておくか・・・」
 グレンは鎌鼬を捕縛しようと銀の飾り鎖を隠すように、怪植物のツタなどを湖の傍へ警戒されないよう無造作に置く。
「そろそろソニアたちが来る頃だな・・・」
 彼がトラップの準備を終えた頃、空を飛んでいく妖怪の少女を追いかけ、ソニアと美羽たちは林へ向かう。
「美羽さん伏せてください!」
 ディテクトエビルで邪悪な気配を察知したベアトリーチェは、鬼たちが投げつける包丁をファイアストームで防ぐ。
「ありがとうベア!」
「むぅー!なんかいっぱいいるぅー。こっちに行こうっと」
「おっと、そっちには行かせないぜっ」
 逃げようとする鎌鼬をナタクが火術を放ち林の方へ追いやる。
「何するんだよぉお」
 鎌鼬はムッとした顔をし、突風となって彼と泥濘へ突き飛ばす。
「このっ何するんだ!―・・・あれ?あ、足が抜けない!?」
「もう、ナタクさんったら何やってるんですか」
「イッてぇ!」
 ソニアに引き抜いてもらうものの、砂利道へ転んでしまう。
「上から狙われてますよっ」
 火縄銃で狙う鬼の姿を見つけ、ベアトリーチェが2人に伏せるように言う。
「高台の傍を通らないのはさすがに無理があるか」
 狙撃しようと狙う鬼の視界を一輝が弾幕援護で塞ぎ、銃弾が的から逸れてナタクの足元へ落ちる。
「ねぇ一緒に歌おう♪」
「歌のお姉ちゃんだー」
 少女は歌菜に誘われ、不機嫌な顔から笑顔に変わる。
「空にいるのは何だ?」
 鎌鼬が生徒たちに追いかけられているのを知らない一輝は睨むように見上げる。
「人型に戻りそうな今なら捕まえられるはずっ」
 今度こそ捕らえようと真はナラカの蜘蛛糸にわっかを作り妖怪の片足を狙う。
「執事のお兄ちゃんは捕まえようとするからいやぁーっ」
 風の刃となり真の身体に傷を負わせる。
「うぁああぁあーっ!!」
 身体中を斬られ砂利の上へ倒れ込む。
「きゃーっははは♪楽しい〜っ」
「酷いじゃないの、捕まえられたくないからってここまでする必要があるの!?」
「なぁにがぁ?妖怪は他のやつらを困らせて遊ぶのが本質だもーん♪」
 怒鳴る美羽を見下ろし、妖怪はニヤニヤと笑う。
「最悪ね・・・」
 自分が知っている妖怪の少女とまったく異なる性格の少女を見上げ、仕置きの1つや2つでもしなければと睨む。
「そぉんなに気に入らないなら、お姉ちゃんは斬り刻んであげようかぁあ〜?」
「来るなら来てみなさいよ、捕まえてお仕置きしてやるんだからっ」
「その歌のお姉ちゃん以外ぼっくんいやぁ〜。めためたにしちゃおう♪」
 風になりブァアァアッと身体を回転させ、美羽たちに襲いかける。
「ね・・・ねぇ待って!」
「やだもぉーん。歌のお姉ちゃんのいうことでも、やめないもーん」
「チョコがあるんだけど、食べない・・・?」
「えっ、なぁにそれ?」
 歌菜が手にしているショコラティエのチョコを見て、鎌鼬は美羽と他の鬼の視界を塞ごうとする一輝を風圧で吹き飛ばし、ぴたっと止まる。
「とっても甘いよ♪」
「美味しいのぉ?」
「うん、美味しいよ!」
「欲しい〜」
「あの、グレンさんが林の中にある湖の近くにトラップを仕掛けるので、そこへ誘導してもらえませんか?」
「そうなの?分かったわ」
 トラップへ誘導して欲しいと小声で言うソニアに歌菜が頷く。
「チョコをあげるからこっちに来て」
 真に肩を貸しながら歌菜はソニアたちと林の方へ行く。
「美羽さん大丈夫ですか?」
「えぇ、なんとかね」
 ベアトリーチェに手を引いてもらい、美羽は泥濘から出る。
「2人で引っ張ろう、せーのっ」
 一輝を砂利道へ引っ張り上げる。
「突然、飛ばされたが・・・あれはなんだ?ただの風じゃないみたいだな」
「鎌鼬っていう妖怪よ。やっぱり見た目が子供だからって油断出来ないわね。今回の事件を起こした犯人に違いないの」
「そうなのか・・・」
「鬼が民家の方から来ますよ美羽さん!」
 早くその場から離れるようにベアトリーチェが急かす。
「なら早く捕まえに行ってくれ。鬼は俺がひきつけておく」
「ありがとう!行くわよベア」
 美羽はベアトリーチェを連れて、林の中へバーストダッシュのスピードで追いかけていく。
「(この暗闇の中で機関銃と誤認してくれのか?ならこのまま民家の近くの湖までひきつけるか)」
 追ってくる鬼を林から引き離そうとひきつける。
「バンメシ、ニゲルナァア!」
「よし、ここら辺で逃げるとしよう」
 喰らおうと迫る鬼たちの上をバーストダッシュで飛び去る。
「まさか食べようと狙ってくるとは思わなかったな・・・。探索している他の生徒たちは大丈夫だろうか?」
 鬼に追われている者がいないか、橋を渡り民家が並ぶ方へ向かう。



「―・・・あれ?皆どこにいったんでしょう」
 鎌鼬と生徒たちを見失った由宇が辺りを見回す。
「まっすぐ走って行ったから林の方じゃないのかな?」
「林ですか、もっと暗いんでしょうね・・・」
 由宇はぶるぶると震えながら進む。
「いたみたいだよ」
 アレンの視線の先へ目を移すと、ソニアとナタク、美羽たちが鎌鼬を追いかけている。
「来たか・・・」
 ブラックコートを纏い光学迷彩で木々の傍で姿を隠しているグレンは、鎌鼬がトラップの傍へやってくるのをじっと待つ。
「悪戯はここまでです!」
「待ちやがれこの鼬!神妙にお縄に付けぇ!」
 ソニアとナタクはパートナーがトラップを仕掛けている場所へ追いやる。
「お姉ちゃん、なんかまだ追いかけてくるー。ぼっくん鼬じゃなくて鎌鼬だもん」
 少女はナタクに向かってべーっと舌を出す。
「大丈夫よ。(殺気だってる感じがするけど、穏便に済ませてくれるといいな・・・)」
 歌菜はちらりと後ろを見て、妖怪が殴れたりしないだろうかと不安になる。
「わわっ、何っ!?」
 グレンのサイコキネシスで鎌鼬の片足にツタが絡まる。
「こんなの引き千切っちゃうもんねっ」
「(そうくるか・・・、ならこれはどうだ?)」
 銀の飾り鎖で少女の足を縛る。
「風になって逃げるもんっ」
「そうはいかないんだよね、これが」
「ちょっとだけじっとしててくださいねっ」
 先回りし草陰で気配を隠しているアレンが鎌鼬の腕を掴み、もう片方の腕を由宇が掴む。
「大人しくしなさい!」
 待ち構えていたウィングが登山用ザイルで妖怪の身体を縛る。
「あんなまねして、許さないんだからっ」
 さらにその上から美羽がロープでぎりぎりに縛った。
「洗いざらい目的を話してもらおうかしら!まず計画した犯人は誰なのか教えてもらわないとねっ」
 何のためにこんなことをしたのか、そして犯人は誰なのかと美羽たちが問い詰め寄る。