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第6章 恐怖との対面

-PM18:00-

「屋上に行く道はないみたいだな」
 最上階に来たコウは上に行こうとしたが、階段やエレベーターは14階までしか行けない。
「階段から上がることが出来ないってとはないのか」
 このマンションには屋上と呼べるようなものは存在しないのだと分かった。
「不可解な構造だが、パイプで道路の地下を流れる水道から供給されているのかもしれないな。仕方がない、他の生徒たちと合流した方がよさそうだ」
 携帯ラジオを聞こうと耳にイヤホンをつける。
「―・・・聞こえないな?さすがにここまでは電波が届かないのか」
 イヤホンを外しポケットにしまい込む。
「ん・・・下の階から生徒が上ってくるみたいだが、ただ迷い込んでしまっただけか?」
 装着している魔鎧のイシュア・ヘイルズ(いしゅあ・へいるず)と話している神城 乾(かみしろ・けん)を、階段の手摺に手をかけて見下ろす。
「あれー、オレは一体ここに何しに来たんだっけ?まぁいっか、マンションの探索でもしていれば2日くらいあっとゆう間に過ぎるだろうからな」
 何をしに来たのか忘れた乾は、時間を潰そうと建物内の探索をしている。
「2日くらいってありえないから!2日もこんな怖いところにいなきゃいけないなんて、来なきゃよかったよ・・・」
「17時に帰れるのを18時だと勘違いしちゃったんだから仕方ないだろ。よくある、うんよくある」
「ない、絶対にない!」
 イシュアはブーブーとブイーングの声を上げる。
「―・・・何やら魔鎧が怒っているな。魂探しを来たんじゃないみたいだから声をかけないでおこうか・・・」
 彼らの様子を見るのをやめてコウは魂探しに戻った。
「それになんだか・・・入って来た時より様子が変わってきてるし」
「オレには変わってないように見えるけどな。とりあえず適当に入ってみるか」
 5号室に入り中の様子を見回す。
「電気がつかないな」
 何度も壁のスイッチを押してみるが、明りがつく気配はない。
「暗いよ怖いよ、何か出そうだよ・・・」
 ブルブルとイシュアが震える。
「おい震えるなよ、はたから見たらオレが怖がっているみたいじゃないか!」
「だって怖いものは怖いんだよーっ」
「ったく仕方ないやつだな。お、冷蔵庫か。何か入ってるかな?」
「や、やめなよ」
「冷蔵庫・・・だよな?」
 他の階で見たものと明らかに中の様子が違い、乾は顔を顰める。
 黒い液が這うように中を錆びつかせる。
 小さな子供がすすりなく声音が、反響するように彼の周囲で聞こえ始めた。
「ぎゃぁあーっ何かいるよ、何かいるんだよーっ!」
 イシュアの反応を楽しむかのようにスピリットは姿を隠し、わざと音を立てるようにドドドッドタタタッと走りフローリングを踏む。
「来ないで、ボクのところに来ないでーっ、あっち行ってよぉお!」
 その声に霊がバシッと乱暴にイシュアを殴っていく。
「イッた!魔鎧だからって無痛じゃないんだからやめてぇえ。早くこんな家から出ようよ乾ーっ」
「あぁもう分かったよ。まったく怖がりだな」
「なんだよーっ、殴られて痛いのはボクなんだよ!?」
「そんなこと言うと、鎧脱ぐけどいい?」
「や、やめて。後生だからそれだけはーっ!!」
 冗談混じりに言う乾に、置いていかないでと叫ぶ。
「閉めていないのに閉まっているな?あ・・・あれ、開かないぞ」
 ドアノブをガチャガチャと回し、開けようとするが開けられない。
 霊が彼らを閉じ込めたのだ。
「こんなところで冗談はやめてよっ」
「いや冗談じゃなくて、本当に・・・開かないんだ。くそっ、どうなってんだ!?」
「ベランダから助けを呼ぼうよ」
「そうだな、誰か気づいて開けてくれるはずだ」
 乾は洋室へ走り、ベランダへ出ようと窓を開けようとする。
「ここも開かないぞ」
 窓は鍵が錆びつき開けることが出来なくなっている。
「あわぁああー!」
「騒がしいな、今度は何だ」
「ま、窓に・・・」
「窓がどうした?―・・・!?」
 声を震わせて言うイシュアにやれやれと見ると、悪霊がベタベタと窓ガラスに手をつき、恨めしそうに乾を見ている。
 霊は窓ガラスをベタンッ、ベタンッズルリ・・・と血のついた手を何度も叩き撫でる。
 生気のない目でギロリと睨み室内へ侵入する。
「あんなのに憑き殺されてたまるかっ」
 碧血のカーマインの銃弾で倒そうとするが、霊は怯むどころか怒りとり憑こうと彼を追いかける。
「くっ、利いてないはずはないのに、それだけ強い怨念の塊だっていうことか。おーい誰かーっ、ここを開けてくれー!」
 玄関へ走りドンドンとドアを叩き、廊下に誰かいないか呼びかけ、助けを求める。
「乾に憑くっていうか、魔鎧のボクに憑く可能性があるじゃない!?やだぁあ、そんなのやだよぉおー!」
 悪霊に憑かれたくないとイシュアがぎゃぁぎゃぁと叫ぶ。
「そんなところで何をやってるんだ?」
 騒ぎ声を聞きつけたコウがドアを開けてやる。
 開いたとたん乾はすぐさま廊下へ逃げる。
「―・・・スピリットか!?」
 バニッシュや光術でもない限り対処出来ないと、コウたちは内階段へ走り逃げる。
「追ってこない・・・ということは逃げ切ったということか」
「すまないっ、ありがとうな」
「探索中に偶然通りがかっただけだが。霊というものは遊びで来る者に対しては特に容赦しないぞ」
「あぁ、分かった」
 頷く乾に装着されているイシュアが、“ほらやっぱり言われたよ”と心の中で呟く。
「オレは仲間のところに行くが、気をつけるんだぞ」
 片手を振りコウは待機していようと7階へ向かう。
「で・・・2日間、本当にどうするのさ?」
「なんとかなるって」
 恨めしそうに言うイシュアにへらっと言う。
「はぁ・・・本当かな。生徒たちが集まっているところにいたほうがいい思うんだけど」
 楽観的な彼に深いため息をついた。



「空飛ぶ魔法で建物を見てみたけど、そこからじゃ分からなかったわね」
 13階と12階を見て、11階に下りてきたルカルカは、人が入れそうな棚を開けたりして中を確認する。
「リネン庫もあるみたい。でも、これじゃあ隠れられないかな」
「いくら魂だからって石鹸やシャンプーなどを入れておくスペースに分けれたとこにいたらシュールだぞ」
 日用品を詰めやすいように仕切り板で分けられているリネン庫を覗くルカルカに淵が言う。
「えーっとリネン室はこっちかな?」
 寝室の隣の部屋の扉を開ける。
「お腹減ったよエース」
 クマラがエースの袖をくいくいっと引っ張る。
「ちょっと待っててな。ほら、食べすぎるなよ」
 マグライトで手元を照らし、カバンからクッキーを取り出しクマラに渡す。
「ありがとう、はむはむ」
「ルカたちに水をちょうだい」
「どうぞ」
「ありがとうね、んぐっ・・・ふぅ」
 ルカルカは受け取った水を飲み、ハンカチで口元を拭う。
「いないわね・・・」
「ねぇ、今・・・泣き声みたいなのが聞こえなかった?」
 キョロキョロとクマラが辺りを見回す。
「あぁ、聞こえたな。かなり悪霊が入り込んでいる影響か?それともオメガさんの魂が十天君たちを怖がっている影響なんだろうか・・・」
 彼の声にエースは壁紙が剥がれ落ち始め、灰色のコンクリートの色に鉄が錆びたような色が混じったように変色していく様子を睨む。
「悪霊のせいだけじゃない・・・。だんだんと追い詰められて苦しんでいる・・・そんな感じがするわ。オメガちゃんどこにいるの・・・」
 様子が変わっていく空間を見て、ルカルカが悲しそうに呟く。
「あれ・・・4階を探していたんじゃなかったか。もしかしてオメガさんがいる場所の手がかりを見つけたのか?」
 室内に入って来た弥十郎を見てエースが何か見つけたのか聞く。
「4階の部屋に画用紙が落ちていたのを見つけてね。これを奪おうとしたドッペルゲンガーから逃げてきたんだよ」
「ドッペルゲンガーが・・・!?」
「そうだよ。この紙に描いてある絵が意味するところに隠れているのかもしれないよ」
「なるほどな・・・」
「冥府の案内人に会った人がいるけど、こんなのがあるとは言ってなかったから元々なかったんだと思うんだ」
「先にルカたちに見つけて欲しいから残したのかな?」
 ルカルカが画用紙を覗き込む。
「そうかもね。ひょっとしたら吸収されるかもしれない・・・てね」
「子供が眠っている絵か、眠りに関係があるとしたら寝室だな。そこを先に探そう」
 クレヨンで描かれた絵を見た淵がそこを重点的に探そうと言う。
「見つかったら逃げ場のないところにはいないってことだね」
 納得したようにクマラが頷く。
 一方、10階にいる北都と昶は6号室に入りオメガの魂を探している。
 下の階層は生徒たちが見ていないところだけ見て、このフロアへやってきた。
「死者のいやな匂いしかしないな。こりゃかなり近くにいかないと分からねぇな」
 狼化した昶はスンスンと鼻をひくつかせ、部屋の中を探し歩く。
 鼻につく血と錆びの匂いばかりだ。
 カリカリッガリッと壁を引っ掻く耳障りな音が聞こえてくる。
「ちっ、出やがったか」
 子供部屋へ入ると壁から現れた無数の手が、壁紙を毟り取るように引っ掻いている。
「(こっちに気づく前に倒しておくか!)」
 刀の柄を咥えて床を蹴り、アルティマ・トゥーレの冷気で凍てつかせて亡者どもを砕く。
「ん・・・ベックォンがいたところに画用紙が貼りついてんな」
 壁の画用紙をベリッと剥ぐと、それにはオメガの匂いがついている。
「魂が残していったのか?北都、こんなの見つけたぜ!―・・・な、何だ!?」
 悪霊が入り込んだ影響と十天君たちに追われるオメガの恐怖心の不の念が、マンション内を不気味に変貌させる。
 壁に錆び色の泥を塗ったように薄気味悪く変色していく。
 廊下へ出るとドアが血を吐き出しているかのように思えるほど、剥がれ落ちた部分から血がポタポタとたれている。
「うっ、何だこりゃ。酷い匂いだぜっ」
 鼻にまとわりつくような死臭に、さすがの昶も顔を顰める。
「―・・・うん、かなり悪霊が入りやすく変わってきてるね。昶、さっきの画用紙を見せて」
「あぁ、これだ」
「何かの下に隠れているような感じだね。他にも同じようなのを見つけた人がいるかも。集合場所の7階へ行ってみよう」
 決めておいた集合場所へ移動しようと階段を下りる。
「来たか。闇雲に探すよりはと思ってな、ここに来てみたんだ」
「あ、来たわね!」
 そこへ行くと7階へ下りてきた唯斗たちと、ルカルカたちが待っていた。
「HCで連絡しようと思ったんだけど、連絡に使えそうな機能があると思うんだけど使えなかったの。携帯もノイズばっかりで使い物にならないわ」
「そうなんだ?でも、集まる場所を決めておいてよかったね。僕たち10階で画用紙を見つけたんだけど、皆も見つけたのかな?」
「えぇ、弥十郎さんが見つけてくれたの」
「たしか子供が眠っている絵だったね」
 画用紙に描かれている絵の雰囲気を弥十郎が教える。
「俺たちが見つけたのはこれだ」
「埋もれているような感じですね」
 唯斗の拾った絵を恵那が見せる。
「寝室じゃないかなって上の階で話してたのよ」
「うーん、眠るっていったら寝室で間違いないと思うよ」
 ルカルカの話しに北都はなるほどと頷く。
「埋もれる・・・さっきの絵の雰囲気と布団かな?僕たちが見つけたやつと合わせると、ベッドの下にいるってことだね」
「じゃあまだ探していない階にいるってことね」
「まだ見てないのは2つの階だけかな?」
「8階なら見たけどいなかったぜ!」
 紫音たちが7階へ下りて北都たちのところへ駆け寄る。
「残りは9階だけだね」
「そうだな、皆で探せばすぐに見つかるはずだ」
 彼らは十天君たちよりも先にオメガの魂を探そうと階段を上る。
「ありゃりゃ、分かったとたん後ろがお留守だよ。目的を達成しそうな時って、油断しやすいよね」
 光学迷彩で姿を隠し、レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)は天井から生徒たちを狙うベックォンを狙撃する。
「レキ、床からも出てきたアル。早く倒さないと引きずり込まれちゃうアルヨ〜」
 チムチム・リー(ちむちむ・りー)は彼女の背後を守るように悪霊を警戒しレキに伝える。
「おっけー、ふぁいぁああーーっ!!」
 携帯の明りで位置を確認して星輝銃のトリガーを引き、クロスファイアで片付ける。
「時間が経ってから結構増えたね」
 手元を携帯の明りで照らし、銃弾を補充する。
「悪霊たちがめちゃくちゃ入り込んでるアルヨ〜。右の壁にもいるアル!」
「りょーかいっ」
 レキは躊躇なく亡者の手を排除する。
「おっと、うっかりボクたちが狙われないようにしないとね」
 霊に見つからないように足跡を消し、物陰にかくれながらカモフラージュする。
「この家の中にはいないみたいだな・・・」
「やっぱり探索に集中してると気づくのが遅れちゃうんだねぇ」
 部屋に入り寝室で魂を探すカイを引きずり込もうと狙うベックォンを撃ち抜く。
「7号室にはいないっと」
 いない号室に目印をつけようと、ルカルカはチョークでドアにバッテンをつける。
「埋められたら瀕死になっちゃうからね、最後まで気を抜いちゃいけないんだよ」
 彼女を狙う手から守ろうとレキがスプレーショットで一掃し、亡者たちの骨が砕け廊下へ飛び散る。
「オメガさん・・・?怖がらないでおいで」
 ベッドの上から下まで覆っているシーツをエースが捲ってみると、魔女が膝を抱えて震えている。
 そこから出てきた彼女は床に座り込んだまま彼を見上げる。
「この部屋に敵はいないよ。クマラ、ルカルカたちを呼んできてくれ」
「分かったー!皆ーオメガちゃんが見つかったよーっ」
 1号室から廊下へ出たクマラが生徒たちに知らせる。
「本当!?」
 ルカルカが寝室へ駆け込む。
「もう大丈夫よ、ルカたちと帰ろうね」
 優しく声をかけ彼女の手を握って床から立たせてやる。
「見つかったか。安心しろ、ドッペルゲンガーなんかに吸収させないからな」
 唯斗はまだ恐怖で怯える少女の傍へ寄る。
「よかった・・・」
 無事に見つかり北都もほっと息をつく。
「他の生徒にも知らせないとな」
 ピッキングでも窓が開かないため、淵はザルを2つ合わせた中に点灯したライト入れビニールテープで外周を留めて、指輪の光の精霊を宿らせ廊下の手摺と天井の隙間から外へ落とす。
「窓からが無理でも、外階段からならなんとか見えるからこれで分かるだろう」
 連絡用の光に気づいた泡たちが9階へ集まる。
「17時を過ぎたから2日後の6時まで待たないと戻れないけど、私たちが守ってあげるからね」
 泡はオメガの魂の傍へ寄り、安心させようと微笑みかける。
「オメガが2人いるアルカ?」
「えー?だってさっき、見つかったんじゃ・・・」
 階段側を見るチムチムに、レキがまさかというふうに言う。
「あれってドッペルゲンガー!?チムチム、皆に教えてきてっ!」
 陣たちが捕らえて連れてきた魔女だと分かり、チムチムに知らせに行かせる。
「ちょっと、何かドッペルゲンガー連れて来ちゃった生徒がいるアルヨ」
 光学迷彩で姿を隠しながら泡に伝える。
「何でよ!?」
 慌てて廊下へ駆け出ると、彼女が言うようにそこにはドッペルゲンガーの姿がある。
「オメガが怖がるじゃないのっ」
 泡が陣に向かって怒鳴る。
「いや、ドッペルゲンガーに魂をどうやって吐き出させようか相談にしに来たんや」
「それなら魂に罵倒させればいいみたいよ」
 アスカはオルベールから聞いた方法を陣に教える。
「魂を襲わないように、ボクたちが捕まえておくよ」
 ドッペルゲンガーが魂を吸収しないように、リーズは陣と抑ええておくと言う。
「オメガちゃん・・・ルカたちが傍にいるからね」
 自分の後ろに隠れるオメガに守ってあげるからと声をかける。
「―・・・そなたは、偽者なんですの。本物にはなれないんですわよ」
 所詮偽者は偽者、本物にはなりえないと、オメガの魂がドッペルゲンガーを罵倒する。
「フッ、フフフ。罵倒程度でどうにかなると思ったんですの?お離しなさい」
 本物になりたいという念が強すぎるあまり、ドッペルゲンガーは罵倒くらいでは魂を奪い返せないのだ。
 空気を振動させ衝撃波で陣とリーズを吹っ飛ばす。
「のわぁああー!?」
「陣くーんっ、やっぱりいやな予感があったたよぉお」
 リーズは廊下へ転びながら叫ぶ。
「あの森でオメガから発生したのと同じやつね!」
 不敵な笑みを浮かべる魔女を見据え、泡はオメガの魂の傍へ寄る。
「は、波動!?」
「んーもうっ!いくら別の場所にいたからって、何で泡くんたちから聞かなかったの!本物のオメガさんが使えるってことは、ドッペルゲンガーも使えるってことなんだからねっ。まさか忘れたとかいうんじゃないよね!?」
「すまんっ、リーズ!」
 ぎゃあぎゃあと怒鳴り散らすに陣が全力で謝る。
「想定出来たことだろ?起きてしまったことはしかたないが、これ以上近づくなら撃つぞ」
 コウがドッペルゲンガーにマシンピストルを向ける。
「吸収出来ると思いますけど、無理に取り込むわけにもいきませんわね。わたくしの大切な友達を傷ずつけたくありませんし」
「友達・・・?どこの口で言うのよっ。ここにはあんたみたいなドッペルゲンガーの友達なんていないわ」
「泡さんったら酷いですわ。わたくしが何をしたというんですの?」
「白々しいわね・・・去りなさいよ」
「まぁいいですわ、吸収はまたの機会にします。そなたたちは2日経たないと、このゴーストタウンから出られないんですから。まさか2日経てば逃げられると思っているわけじゃありませんわよね、フッフフフ」
 ドッペルゲンガーはクスクスと笑い去っていった。