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【金の怒り、銀の祈り】決意。

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【金の怒り、銀の祈り】決意。

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*偽りの記憶*




 食堂で神楽坂 翡翠の手料理を簡単に腹に詰め込みながら、情報を整理していた。
 榊 花梨はニーフェ・アレエの男装を気に入ったらしく、わずかな時間に携帯で写真を撮って楽しんでいた。
 そして、勢いよく立ち上がったのは、スカハサ・オイフェウスだった。

「ルーノさんの捜索に向かいましょうっ!」
「といっても、手がかりはあるのかえ?」

 須佐之 櫛名田姫はお茶をすすりながらスカハサ・オイフェウスに突っ込みを入れる。その言葉に固まってしまったスカハサ・オイフェウスに、ニーフェ・アレエはにっこりと微笑んだ。

「大丈夫です。未沙さん特性メモリープロジェクターが、姉さんにもついているメモリープロジェクターと共鳴してます」 
「それなら、すぐに見つかりそうね!」
「凄いな……機晶姫ってほんとに凄いんだな!」

 にっこりと笑った月夜見 望と天原 神無は心底嬉しそうにジュースを口にした。

「これで、問題ないな。さ、早速いこうぜ!」
「あれ……お姉ちゃん、おかしいの。ルーノさんの反応がすぐそこまで来てるの」
「あ、本当だ……しかも、動いてる……?」

 朝野 未羅とニーフェ・アレエがきょろきょろと辺りを見回している頃、中庭にたどり着いたルーノ・アレエと如月 佑也たちは足を止めた。
 そこには、見覚えのある人影があった。

 リリ・スノーウォーカーは、哀しげな表情でルーノ・アレエを見つめていた。
 進み出たララ ザーズデイは無言で剣を抜いた。

「……ララ ザーズデイ……」
「剣を抜くんだ。ルーノ……私は一度、君と真剣勝負をしてみたかった」
「私を、壊しにきてくれたのですか?」
「ルーノ」

 リリ・スノーウォーカーが進み出る。その傍らには、ユリ・アンジートレイニーも立っていた。

「我らの下に来るか、来ないなら……その時は」
「……わかりました」
「ま、待ってください! ルーノさんと戦う理由なんて!」

 ラグナ アインの叫びに、施設にいた仲間たちが集まってきた。鋭く叫んだのは、ニーフェ・アレエだった。

「姉さん!?」
「邪魔をするな、ニーフェ」

 ララ ザーズデイが低く呟くと、ニーフェ・アレエは足を止めるしかできなかった。
 目にも止まらぬ速さで、剣が触れ合う。絹連れと、息遣い、甲冑がこすれる音。

 決闘が、間もなくララ ザーズデイの敗北で終わると察したとき、リリ・スノーウォーカーは詠唱を開始した。そして、その彼女を護るためにユリ・アンジートレイニーが光条兵器の翼で盾を作り上げる。

「もう、もうやめてください!!」

 ニーフェ・アレエが叫んだ。その声に、イシュベルタ・アルザスとエレアノールが駆けつけた。その後ろに、何とかついてきたのはエメ・シェンノートだった。
 彼の姿をみとめるなり、ニーフェ・アレエはしがみついた。

「姉さんを、止めてください……」

 ぽろぽろと泣き出したニーフェ・アレエを、優しく撫でると、エメ・シェンノートは剣を落としたララ ザーズデイの前に立ちはだかった。 

「ルーノさん」
「わからないんです!」

 エメ・シェンノートの姿を見るなり、ルーノ・アレエは叫んだ。

「私の想いが、本物である保障はありません! 装置のせいとはいえ簡単に言を翻してしまう私は、私の想いがわかりません!」

 いつもの彼女らしからぬ叫びに、エメ・シェンノートはゆっくりと歩み寄った。ルーノ・アレエは剣を収めることなく、涙交じりの声で叫び続けた。

「今、こうして沢山の友達がいたって、友達って言葉が本物かどうかなんてわかりません……エメが私のことを好いてくれても、私はそれに答えられないっ! 胸のうちのこれが、恋だなんて、愛だなんて理解できないんです!」
「……ルーノっ!」

 エメ・シェンノートは普段出さないような大声で叫んで、腕を伸ばしてルーノ・アレエを抱きしめた。剣を落としてしまったルーノ・アレエは、しがみつくようにエメ・シェンノートの背中に手を回した。
 手袋をはめた指に、赤い髪が流れていく。

「貴女は、手紙をくれた。私の手紙にいつも丁寧にお返事を下さった。バレンタインのときだって、私のためにチョコを用意してくださった」
「……それは、そうするのが良いと、そういわれたから……」
「貴女は眩しく、私が……そばにいられないかもしれないと告げても、それでも私の味方でいてくれるといった」
「エメ、私は」
「今なら、今の私なら、貴女にあのときの言葉を返すことが出来ます。貴女が世界中を敵に回したとしても、私は貴女の味方です」
「でも……わたしは、許してもらえ……」

 その言葉を途中まで聞いて、エレアノールが歩み寄ってルーノ・アレエの肩に手を触れた。

「私たちは、生きるためにたくさんの命を食べるわ。でも、誰も恨んだりしないでしょう? どうしてか、わかる?」
「エレアノール。私には、わかりません……」
「世界がね、許してくれてるの。私の大好きな地上の本に、そう書いてあった。生き物はみんな優しくて、誰が生きるのも許してくれるの。貴女も、そんな生き物の一人なのよ?」

 エレアノールノ言葉に、イシュベルタ・アルザスがでにそうだったのを、緋山 政敏に背中を押されて前に出ると、咳払いをする。

「機晶姫は……あくまでも人間だ。機晶ロボと一緒にする奴もいるけどな……あれは、エネルギーを使って動いているロボット。そんな悩んだり、苦しんだりするのは、人間のやることなんだ。いい加減に気がつけ」

 その言葉で、ルーノ・アレエは涙を流した。

 ニーフェ・アレエも飛びついて、ようやくルーノ・アレエは戻ってきた。
 
 しばらく泣いていたルーノ・アレエだったが、抱きしめられていた腕を放して、改めて涙を浮かべたままで口を開いた。

「オーディオを、彼女を助けたい……彼女は、彼女も、被害者に過ぎないんです……どうか……」

 

 遠巻きに眺めていたマリー・フランシスは、不愉快そうに頬を膨らませた。

「結局殺生石を打ち砕く力なんぞどこにもなかったではないか! 期待させおってからに!」
「いいや、あったさ」

 最上 歩はにっこりと笑った。

「人の想いほど、硬いものはないんだよ。時には、どんな力も打ち砕くんだ」








 ようやく逃げることに成功したオーディオは、綺雲 菜織になきついていた。先ほどのケガを、よほど心配していたのか無理をさせない程度にしがみついた。

「大丈夫か? 大丈夫か?」
「ああ。かすり傷だよ。大したことなんてない」

 にっこりと笑った綺雲 菜織に、有栖川 美幸も微笑んだ。あとから姿を現したのは、バロウズ・セインゲールマンだった。

「あなたは、いったいなにがしたくいんですか?」
「……あの石があれば、心を満たすことが出来るんだ。心のかけらでしかない私が本物になるためには、金の機晶石が必要なんだ……寺院どもに植えつけられたこの記憶を払拭するには、もっと強い力が必要なんだ……」

 泣き出しそうなその言葉を聞いて、バロウズ・セインゲールマンはオーディオの手をとった。







担当マスターより

▼担当マスター

芹生綾

▼マスターコメント

 お疲れ様でした。
 いつも素敵なアクションを送ってくださる方々、ありがとうございます。
 そして招待させていただいた方々も、見事に汲み取ってくださり大変嬉しく思います。

 さて、ルーノ・アレエ奪還の思いが強く、本当はもう少しルーノには向こうにいていただこうかなぁなんて思っていましたが、皆様の厚い友情に負けてしまいました(笑)
 次回は、捨てられた想いとの戦いです。
 最後の最後、ハッピーエンドで終われますように。

 また、次回作でお逢いしましょう。