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リアクション
「君のように美しいお嬢さんなら、いつでも」
理は恭しく、アリアに礼をする。
「手を抜くのは、なしですよ」
「はは」
「この服、ぶかぶか…」
虹七はずるずると落ちてくる巫女服を引き上げるのに必死だった。
「万々歳だね。ダディも頑張ったし!」
猫耳をつけたまま、正悟は満面の笑みを浮かべていた。
【第4章】
パーティはいよいよフィナーレへ向かっていた。
夕暮れのなか、芝生の広場で再度パーティ会場がセッティングされる。
楽団がしっとりとしたメロディを奏で、みんなそれぞれにリラックスした顔をして、パーティを楽しんでいた。
そこに振り袖に着替えた(さすがに真言の前で巫女服は恥ずかしかったのだろう)赫夜が現れる。
「お爺さま! 私、この方が好きなんです! 私の恋人です!」
と告白する赫夜。強引に佑也をぐいぐい引っぱってくる。
「そうか…そちらの殿方だったのか」
「き、如月佑也といいます」
緊張してかちこちになっている佑也は90度の角度でおじぎをした。
「わしは赫夜のことが心配でな…。昔はわしもそれなりに藤野家にふさわしい家柄の男を、と思っていたが、今はそうではない。…相手の家柄や出自はどうでも良かった。赫夜の人生は今まで困難なものだった。それを受けとめてやれる男かどうか、見極めたかった。それに理のこともあった。あやつはあれで、本気で赫夜のことを想い続けてきた男だ。その気持ちを昇華させてやりたかった。…結果的にみなに試練を与える結果になってしまったが、それを赫夜も佑也殿も、そして理も、乗り越えてくれた。わしが思うよりも、みなどんどんと成長しているのだな…安心した」
「お爺さま…」
「佑也殿、赫夜を頼んだぞ」
「俺の全てをかけて、赫夜さんを守ります」
ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は会場の雰囲気を楽しんでいた。
「おじょーさん、ひとり?」
そこに懲りない正統派ナンパ王、周が声をかける。
「そうだけど…あなたは?」
「鈴木周! 可愛い女の子が大好きな熱血漢! て覚えておいてくれ!」
「あたしはミルディア。…ねえ、あたしとダンスしない?」
「え? いいの?」
ナンパ成功!である。周の心はトキめいた。
小柄であるが、赤い髪の赤い瞳のミルディアは周にとって十分魅力的であった。ミルディアがキラキラしてみえる。
「でも俺、ダンスしたことないんだよな」
「え? 踊ったことない? だったらエスコートしちゃおうかな? …ホントは男がエスコートするんだよ?」
「ゴメン」
しゅんとなる周にミルディアはくすっと笑うと、周の手を取った。
「別にダンスなんて難しくない。ミスをしてもいいんだし、音楽と空気にあわせて身体を動かす、周りの人にぶつからない、とかの最低限のルールを守ればそれでいいんだよ?」
「おう! こんなカワイ子ちゃんと踊れるんだ! 俺、頑張るぜ!」
二人は音楽に合わせて、踊りの輪の中へと入っていった。
赫夜は切と試合に臨んだ。
「約束だからな」
全長160cmの大太刀を振るう切に、着物の袖をたすきでしばり、赫夜は八重垣の剣で何度も打ち込む。
「すげー! 赫夜さん超絶つよいな! ワイ、久々にワクワクしてる」
「切殿もな!」
二人は剣戟が楽しくて仕方ないようだった。
そこにスーツ姿の美女たちが現れた。傭兵部隊、アンジェラたちであった。
「山葉 涼司校長! 羽根 季保は?」
アンジェラたちなりに気にかけていたのか、仕事を終えてすぐに駆けつけたのだ。
「ありがとう。問題無い。何カ所か爆破はされたが、ほとんど無傷。アンジェラさんが連絡をくれたお陰だね」
山葉 涼司の言葉にアンジェラもニヤっと笑う。
「さすがは蒼空学園の生徒さんたちね」
「アンジェラさんですか?」
「そうだけれど、あなたたちは?」
「いえ、せっかく来て頂いたのですから、こう、おもてなしをしたいと思っているものです。こちらの男子などはいかがでしょう? 一応、返却はお願いしたいのですけれど」
シオンとパラケルススが司をアンジェラ隊に差し出してみる。
「うーん、ごめんなさい。この人、20代よね? わたしたち、十代の男の子が好みなの」
ショットガン使いの黒髪のマリア、情熱的な赤毛のフランチェスカ、そして日本のアニメマニアでアンジェラの腹心、コンスタンツァが笑顔でバッサリ言いはなった。
「あぁ、私の安息は何処っ!? …って、このセリフもいい加減厭きましたね」
苦笑する司ではあったが、がっかりするシオンと比較してもほっとした顔をしていた。