波羅蜜多実業高等学校へ

葦原明倫館

校長室

空京大学へ

地祇さんとスカート捲り

リアクション公開中!

地祇さんとスカート捲り

リアクション

 
 日差しが山吹色に変わる頃合い、洲崎は学園入り口に戻っていた。
 人数も減って来た入り口前の広場で微笑み顔の彼が見物するのは、
「うおおおおお! 喰らえソニックブレード(弱)、名付けてソニック捲りを!」
 顔から汗を噴き上げて全力で走りながら技を繰り出す鈴木 周(すずき・しゅう)と、
「あらあら、お盛んな事ですわね」
 彼の追走から逃れようとダッシュを連続する中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)のやりとりだ。
 周が加速で距離を詰めれば、綾瀬はバーストダッシュで再度距離を取る。そして時たま
「汚い手で綾瀬に触るな!」
「ぬ、またかよ!?」
 彼女が着る 漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)が周目掛けて雷撃を放つも、ステップを踏んでかわされる。
 このやり取りを数分続けていた。
「逃げないでくれ、ちょっと捲りたいだけなんだからよ」
「うふふ、ちょっとの定義が解らなくなるようなお言葉ですわね。……馬鹿ですの?」
「くー、いいねー。冷たい言葉を投げかける女の子は。捲った時の楽しみが倍増だぜ!」
 口元だけ笑って、殺気を含んだ言葉を返した綾瀬によりテンションを高めた周は、
「まだまだいくぜ! 今度はツインスラッシュ(弱)、名付けてツイン捲り……!」
「あら、ドレスだけでなく何処を捲るつもりなので?」
「決まってるだろ、その胸さ!」
「……殺す……」
 ドレスの宣告を爽やかな笑顔で受け流した彼は、更なる加速を身体につぎ込み技へと至る。
 彼の背後にスキルによっての余波が生まれ、風が吹きぬけていく。
 
 
 その風が僅かに当たる所に洲崎はいる。ただし、そこに居るのは彼一人ではなかった。
「おおーっと! 鈴木・周選手、綾瀬選手を追い詰めて行きます。ここで男女の体力差が出たか!?」
 彼の隣には己の握り拳をマイク代わりにして叫ぶカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)がいた。
「しかし綾瀬選手、ドレスから雷撃を放ち……命中したー! これは効いたはずだが……ん? いや、立っている、立っています周選手! 身体から煙を上げて入るが、その姿健在だ――!!」
 熱の入った状況説明を繰り出していくカレンに洲崎は半目を向け、
「先程から嬢ちゃん、これを競技か何かと勘違いしていないかの?」
「え? 違うの?」
「……まあいいが、嬢ちゃんの横で落ちこんどるのはどうしたんじゃ?」
 洲崎が言い、指を指す先はカレンの右隣り。ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)はそこで体育座りになってのの字を書いていた。
「性転換してくれと言われたからしたのに、何故その結果がこの始末なんじゃ?」
「いやまあ、さっきのやりとりが問題だったんだけどね」
 言われて洲崎は先程の会話を思い出す。
『ふむ、成程。男の身体とは随分平べったいのだな。……よう理解した。洲崎とやら、もう戻してくれて構わぬよ』
『いや、もう戻っておるぞ? 自分の身体を良く見てみれば解るでな』
『お、女に戻っても結局寸胴は変わらぬのか……』
 時間にして二十秒の場面の回想を終えた洲崎は、
「――何と言うか、ご愁傷さまじゃのう」
「放っておいてくれ。どうせ我は何年経とうと、この体型の、この胸のままなんじゃ……」
 更に凹み始めたジュレールとは反対に、
「もう少し、もう少しです周選手。後十センチ、あと七、いや二センチで………………遂に捲ったああ――! が、カウンターの雷撃をもろに貰った――!」
 余波び衝撃波でスカートが捲れ、着用するブルマが露わになっていても気付かず実況に夢中になるカレンを洲崎は見比べて、
「身体に悩むも元気に生きるも十人十色。これもまた青春かのう?」


 漆黒のドレスにより様々な部分を黒焦げにされた周は、しかしピンピンしており、
「さあー、次の女の子行くぜ――! 俺、鈴木・周に捲られたい奴はいるか――!」
 体を振って黒ずみを落し、大声量で宣言を行った。
 その声は遠くまで届き、そしてある者を引き付けた。
「馬鹿はここか!」
 肩で息をしながら、怒り顔を展開する武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)がその人だ。彼は周の後ろ姿を視界に入れ、
「おいおいおい、品行方正を謳う俺の前で言い度胸だな周。何だ? のぞき部の威信でも掛けてんのかこの野郎!」
 額に青筋を浮かべながら拳骨を作る武神の前で、ちっちと周は指を横に振り、
「ふ、これは紛れもない俺個人の意志だぜ。ここにいる女の子のスカートは俺が捲る。誰に操られている訳でもなく部の名目も関係なく、俺がそう決めた!」
 再びなされた大声での宣言は、武神の怒りを爆発させるには十分で、
「よーし分かった。個人の意見って事は、当事者一人を殴ればいいだけなんだな? じゃあ、覚悟しろ周!」
 武神はスカートの捲り手へ向かって直進した。
 移動は走り。
 体を前傾にした、加速を念頭に置いた走法だ。
 周目掛けて直線を走る武神。その彼に、横から一石が投じられる。
「邪魔をするでない。今、一人の男が本懐を遂げようとしているのじゃ! 大人しくしておれ。ザ・転換!」
 洲崎による女体化だ。地祇と武神の相対距離は三十メートル以上離れている。だからこそ操作ではなく女体化となった。
 一瞬の後に武神は女性となる。服もセーラー服へと変化する。
 急激な身体の変化に僅かな戸惑いを得ながらも、
「女になったからって知ったことか!」
 女となった武神は、己の服装や身体に構わず全速で走った。
 走りの風でスカートがめくれ褌が豪快に表へ出て来るが、それすらも気にしない。
「覗きをする不埒な馬鹿は滅してやる!」
 大気を切って走行する武神の前、近場を観察していた周は新たな女性に目を付けていた。
「そこのベリーショートの君。パンツを頭にかぶっているなんて、中々、俺の好みだよ」
 彼が見つけたのはショートカットの、伸長がやや高めなセーラー服姿。頭にはパンツを被っており、それが嫌に特徴的な長身の少女だ。 背後には既に武神がいる。今更新たな女性を見つけている暇はない、と周は判断し、
「最後は君に決めた――!」
「させん!」
 捲り手の発言に武神の近接打撃がインターセプトとして入ろうとするが、
「ああっ、体が勝手に!」
 実行の手前、背後から感情の乗っていない声が響いた。その声に不信持った武神が振り返ると
「うおおっ、やべえ!」
 目前にクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)が投射したヨーヨーが迫っていた。緊急的に膝を崩し、自らこける。素早い変則型の前転でヨーヨーを回避。
 身体を丸め、回転させた勢いで立ち上がり、
「なにすんだクロセル! あぶねえだろうが!」
 振り向きざま、攻撃してきた張本人に感情をぶつけた。
 当事者であるクロセルは苦笑しながら、落ち着いて下さい、と諸手を前に差し出し、
「いや、これはですね、俺の意志では無くて体が勝手に動いたからなんですよ」
「へえ、で?」
「ええそれはもうこの腕が勝手にスナップを利かせて勝手にヨーヨーを飛ばしていまして、そしたら勝手にヨーヨーが貴方へ向かって直進しまして、更には勝手に死角への誘導が発動してしまって、そうなると自然法則的に勝手にぶつかってしまうわけで、つまる所俺は勝手に悪くないと判断出来る訳で」
「誤魔化しのシナリオを考えたのなら一度推敲しろ馬鹿野郎!」
「ええ、善処します。で、あちらの方は宜しいので?」
「…………しまった!」
 武神がクロセルと揉めている間に、ダッシュを掛けた周はバランスを崩しながらもショートカットの少女の背後に辿り着いており
「これで、これでラストだ――!!」
 倒れながら手を伸ばしていた。このまま行けば捲りは成立する。
 だが、彼は最後まで気付かなかった。捲ろうとしている彼女が、
「きゃ、何するのよー」
 洲崎の力で性転換された国頭 武尊(くにがみ・たける)だということに。その事実を飲み込んだのは国頭が周の声と捲られに反応し、振り返った時。
 捲る手は止まらなかった。しかも
「あ、転換が……」
 周が捲った瞬間、国頭の女性化が解除された。
 周は無理矢理な加速で体勢を崩し、ぶつかるようになっている。
 更に、国頭の服装は何故かズボンを下ろしている状態だった。
 更に更に、国頭は下着を履いていなかった。
 性転換時に捲られた副作用なのかは分からないがつまり現在、周の目の前には国頭の男の象徴が居座っていることになる。
 けれど勢いよく行動した彼は制動を掛けることも出来ず、
「ぶぐっ!?」
 国頭の股間に顔面から突っ込んだ。
 激突音後、現場が沈黙する。
 国頭の股間に減り込みという形を作った周が、やがてずり落ちて行く。
 そして国頭は、自分が公にならないよう右の手でズボンを上げ、被ったパンツを左の手で確かめ、 
「いやん、私、キズものになっちゃった。もうお嫁に行けない」
 男に戻って尚、しなを作りながら腰を振る国頭の周囲から絶叫が響き渡った。
 ただ、国頭の足元にいた周はピクリとも動かなかった。


 叫喚がしこたま響き渡った後、様々な人間の思惑が燃え尽きた学園の入り口に洲崎は立っていた。夕日を背にした彼は、
「ふむ、今年はこの程度が限界じゃのう。けど忘れてはならんぞ。わしは昭和を忘れたころにやってくる。過去は振り返ってナンボじゃからのう」
「格好付けているつもりでしょうがやっている事は変態だよねー」
「ふはは、なんとでもいえ。それでは、さらばじゃ」
 一人、身体的に無事で済んだジュレールのツッコミを笑って流し洲崎はその場から消えた。
 そうして、台風のように学園を引っ掻きまわした昭和の象徴は去って行った。彼が何処に行き、またいつ戻って来るのかを知るものは誰もいない。



担当マスターより

▼担当マスター

アマヤドリ

▼マスターコメント

 最後までお読み頂き有り難うございます。スカート捲りをしくじってニードロップを貰った覚えのあるアマヤドリです。
 今回捲った方々にはそんな不幸は訪れませんでしたが、別方面でダメージを食らった方もいらっしゃるようで。
 いやまあ、捲られた人の方が割合多かったのですから役得と思って我慢して下さい、ということで勘弁して頂けると大助かりです
 そして、もっとエロいのを期待していたのに! と憤慨なさっている方。御免なさい。 ワタクシ、初心なものでこれが限界でした。
 新制服も導入され、捲り以外にも様々な好奇心がこれから芽吹いて来ることと思われます。その好奇心を少しでも満たせたのならば幸いです。
 ここまで読んで頂いたことへの感謝を持って、〆とさせていただきます。

▼マスター個別コメント