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盗まれた機晶爆弾

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盗まれた機晶爆弾

リアクション

   14

 メリッサとマックスがグールを連れて構内を歩いていた頃、三船 敬一(みふね・けいいち)レギーナ・エアハルト(れぎーな・えあはると)もまた、空京大学にいた。
 彼らが今回の事件を知ったのは、停電爆弾が発見されてからだ。ちょうど付近にいた二人はすぐさま師王 アスカに連絡を取った。アスカはその頃、爆弾を探してショッピングモールにいたのだが、事細かに状況を説明してくれた。
 話を聞いた敬一は、犯人が大学関係者を狙うと考えた。細かい設置場所に関しては、エアハルトに任せた。
 エアハルトは意見を求められ、しばし考えて後、口を開いた。
「講堂ではないでしょうか。これほど大きな大学であれば、避難所に使われることもあるでしょう。街中で爆発が起きれば、当然、ここへ避難してくる。その頃を見計らって爆発させれば……」
「よし、行こう」
 敬一は学校案内を頼りに講堂を探した。すぐに見つかった。体育館と兼用になっており、バスケやバレーボールをしている学生たちがいる。入った瞬間、彼らの汗と体温で蒸した空気が顔に纏わりついた。
 学生たちの目は、エアハルトに吸い寄せられた。何しろ顔にぐるぐると包帯を巻き、ブラックコートとハンチングを身に着けている。どこからどう見ても「おかしな人」である。
 当の本人はしれっとしているが、目立つことこの上ない。が、それらを取ってしまえば逆に記憶に残らないという利点があった。
 そんな視線を物ともせず、敬一とエアハルトは講堂内を歩き回った。舞台の裏も見、倉庫も探し、パイプ椅子を片付けてある舞台下の引き出しタイプの収納庫も確認した。更にその中に入り込み、舞台の下まで見た。鍵のかかった場所は、エアハルトが【ピッキング】で開けた。
 トレンチコートの埃を払いながら、敬一は顔をしかめた。
「ないな。他の場所は考えられないか、エアハルト?」
 エアハルトは再び考え始めた。思考の深海に深く身を沈める。
 あらゆる可能性が周りにあった。そのままであればただの雑音だが、正しく選択すれば、それは情報という武器になる。
 ぽーんっ、とバレーボールが高く上がり、照明器具の防球ガードに跳ね返って落ちた。昼間なので照明は切ってあり、天井付近は薄暗かった。
 エアハルトの目がそこに吸いつけられた。
「……敬一、学生を避難させてください」
「え?」
「おそらく爆弾は、天井にあります」
「天井!?」
「ええ。爆弾の方は動かすのは難しいでしょうから、学生を。私はアクリト・シーカーを呼びます」
 敬一は学生たちに講堂を出るよう頼んだ。が、事情を知らない彼らが了承するはずもない。爆弾があるんだと言っても、笑って信じない。どうやら一連の騒ぎを全く知らないらしかった。
 やむなく実力行使に出た。自動小銃「ハルバード」を突きつけ、出て行けと怒鳴る。学生たちは驚き怯え、ぶつぶつ文句を言いながらも従った。
「俺は見回りに出る。あいつらが戻ってくるかもしれないからな……」
 敬一と入れ代わるようにやってきたのは、十田島 つぐむ(とだじま・つぐむ)ミゼ・モセダロァ(みぜ・もせだろぁ)ガラン・ドゥロスト(がらん・どぅろすと)竹野夜 真珠(たけのや・しんじゅ)の四人だ。アクリト・シーカーは、地雷処理のためにショッピングモールへ向かっていた。
「照明のどれか一つが爆弾のはずです」
 天井を指差しながらエアハルトが言った。
「どれかって、どれだ?」
と、つぐむ。
「分かりません」
「分からないって、そんな、無責任」
 真珠が口を尖らせた。解体するのはつぐむの役目である。幼馴染の真珠としては、出来れば避けて欲しい仕事であった。
「ここにあるのは間違いありません。もし違っていたら、素顔を見せてもいい」
「よく分からないが、それだけ自信があるってことか? よし分かった、俺が見つけて解体してやる!」
 よろしくと言い残し、エアハルトも敬一同様、見張りに出て行った。