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至高のカキ氷が食べたい!

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至高のカキ氷が食べたい!
至高のカキ氷が食べたい! 至高のカキ氷が食べたい! 至高のカキ氷が食べたい!

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「外、か……」
 氷精はため息をついた。
 ゴルガイスの話に何か思うことがあったのだろうか。
「あの、次は私からいい?」
 イランダ・テューダー(いらんだ・てゅーだー)が手を上げた。
「あ、ああ。お前はどういう話を聞かせてくれるのだ?」
「私は皆さんみたいに、壮絶な出会いとか、大冒険とかしたことないですけど……祖父のことや、このももたろうとの出会いを話そうかと思います」
 隣に座る、よいこの絵本『ももたろう』(よいこのえほん・ももたろう)の背中を押してイランダははにかんだ。
「ほう、どういう話だろうかな」
 氷精はまっすぐイランダを見つめる。イランダもその視線に負けることなく、氷精を見返すと、
「私が子供のころ……」
「待て、子供のころってお前のその見た目は子供のそれだろう!?」
 咄嗟に氷精は腰を浮かし、手を伸ばし突っ込んだ。
「貴方がそれをいうの?」
 イランダに逆に指摘されてしまった。
「ああいや、すまん……確かに人は見た目に寄らんな」
 そういえば自分も相当歳を食っているが見た目が見た目だったことを氷精は思い出した。
 咳払いし、氷の玉座に座りなおす。
「別にいいけどね。何歳に見えるかってからかうの楽しいし!」
「そ、そうか。いきなり話の腰を追ってしまってすまんな、続きを話してくれ」
「そうするよー。子供のころ両親が日本に長期出張することになったんだ。そのときに日本の祖父の家で過ごしていたの」
 イランダはももたろうを見上げながら話を続ける。
「日本語が話すことができないおかげで、同じ年頃の友達ができなかった私に絵本の“ももたろう”をくれて、何度も何度も……それこそ話の中身を暗唱できるようになるくらいまで読み返してくれたのが祖父だったのよ」
「優しい祖父だったんだな」
「ええ、とっても! でも、何度も何度もももたろうの本を読んだせいで、手垢はべったりついたし、本がくたびれてしまう位にぼろぼろになってしまったの。そしたらいつの間にか、そばにはももたろう……この子がいたの」
 もう一度、イランダはももたろうの背中を押した。
 おどおどと所在なさげにあたりを見回しているその格好は、御伽噺の桃太郎に出てくる桃太郎の格好そのものだ。
「長年の思いが一冊の本を魔道書に仕上げてしまったのかね。不思議なこともあるものだ」
「日本には、八百万の神という言い伝えがあって、どんな些細なものにも神様が宿るといわれてるのよ。だから一冊の絵本が意思を持ってもおかしくないと、私は思ってるわ」
「ほう……なるほどな」
 氷精は納得したように頷いた。
 そしてイランダは話を続ける。過去を思い出し話をする。大事な思い出の話を聞いてもらう、というのは中々に気分のいいことだった。
「ももが、私にできた初めての同じ年頃のお友達なの。それからは祖父がももと私に色んなお話を聞かせてくれたし、色んな日本の風景を見せに連れ出してくれたりしたの。さっきの八百万の神様の話も祖父がしてくれたのよ!」
 胸を張ってどうだとイランダは威張る。
「博識な祖父だな」
「うん! 冒険譚とかじゃなくて、ただの思い出話だけど、とっても大事な思い出話なのよ!」
 イランダは満開の花が咲いたかのような満面の笑みで大きく頷く。
「これで、私の話はおしまい。どうかな?」
「大事な人がいるということはいいことだな。今もその祖父が生きているようだったら大事にするんだぞ」
「あ、当たり前よ!」
 そういって、イランダは話は終わったとばかりに皆の輪の中へ戻っていく。
「ん? どうした、お前の主の話は終わったようだが……?」
 首を捻って、何かが違うというような様子のももたろう。それを目ざとく見つけた氷精はももたろうに話を振った。
「……うーん」
 ももたろうは氷精の隣まで行くと、耳打ちをし始める。
「ボ、ボクの知ってるおじい様と、ちょっと違うんです……」
「ふむ?」
「な、なんというかね、もっと、ほんとうにはっちゃけてて……“ふぁんきー”って言葉がしっくりくるおじい様です」
 ぽそぽそとイランダはおろか、他の人にも聞こえないような声でももたろうは話を続ける。
「若いときは、バイクで峠を爆走する団体の頭みたいでそんな写真も見たことあるんです。それに……庭の蔵には一般人が所持したら警察に厄介になるような重火器が置いてあったり……」
「クク……さっきの話とは180度イメージが変わるではないか……!」
 氷精は笑いをこらえるのがやっとといった様子で、ももたろうの話を聞く。
「行動も破天荒で、田んぼのかかし……お米をカラスから護る役割を持つ小道具なんですけど、それって人の見た目に似てるんです。それを妙にリアルに改造して通りすがりの人を驚かしてみたり……」
 まだまだある、とももたろうは話を続ける。
 行動を思い出しながら懐かしさと怖さとがない交ぜな表情で、ももたろうは氷精に耳打ちを続けた。
「それに、落とし穴を掘って、それに引っかかるボクを見て楽しんだり……ゲームが大好きで、あのさっきの理依さんが見せたやつですね。それでボクと3日徹夜で対戦してたりしたんです。おじい様、ゲームめちゃ強いんですよ!」
「クク、もうダメだ……! 同じ人物の素性を別人から話させるとこうも面白いとは思わなかったぞ!」
 腹を抱えて笑う氷精。
「ひ、ひひ、ははは! なんだそれは! 優しく博識な祖父は孫にだけで、それ以外には子供のように接するとは……!」
「そういうの見てると、やっぱりイランダと血が繋がってるなと思ったりします」
「あやつも、人にイタズラするのが本当は好きなのか」
 目じりに浮かんだ涙をぬぐいながら氷精はももたろうに聞いた。
 ももたろうも警戒が解けたのか微笑を浮かべながら、
「はい。好きな人に自分のほうを振り向いてほしいって感じの小さなイタズラですけど」
 そう言った。
「中々に面白いものだな。別にわたしの前で猫を被る必要は無いのにな!」
 いまだに笑いが収まりきらない氷精。
「久々に笑ってしまったではないか! 面白かったぞ!」
 ぽんぽんと、二度ももたろうの肩を叩き氷精は下がらせたのだった。