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友達が欲しいメデューサ

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第一章 



 心霊スポットの話を聞いて肝試しをと遺跡へとやってきた泉 美緒(いずみ・みお)達。
「お話に出ていた場所というのはここですわね」
「おー、いかにも何か出そうなところだな」
 鈴木 周(すずき・しゅう)がぐるっと遺跡を見回す。
「でも、肝試しだしこのぐらい雰囲気がないとね」
 その後ろからひょっこり出てきたマッシュ・ザ・ペトリファイアー(まっしゅ・ざぺとりふぁいあー)
「おう! そうだな!」
「うふふ、やはり夏と言えば肝試しですわよね。入り口はどこにあるのかしら……?」
 遺跡とは言え、原形をとどめておらず、土に埋もれている場所や柱のみが突き出ていたりしている。
「お? ねぇ、ここから入れそうだよー」
 マッシュがぽっかりと空いた穴を見つける。
「本当だな。行ってみようぜ!」
「そうですわね」
 美緒達は早速遺跡へと足を踏み入れた。
「みんな、暗いし瓦礫が結構あるから足元に注意しろよ」
 周を先頭に遺跡の中を歩いていく。
「……」
 そんな中、一番後ろを歩いていたマッシュはみんなから静かに離れていった。

「さてと、これからがお楽しみだよ♪」
 マッシュがここへと来た理由……それは一緒に来た美緒達を石化させることだった。
「まずは先回りしないとね……」
 別のルートを探し、一人奥へと進んでいく。しばらく進んだところで近くから何か物音が聞こえたマッシュ。
「当たりみたいかな♪」
 早速『黒影』の能力で影の中へと隠れる。じっと待っていると何かが目の前を通るが、暗くて良く見えない。
「……誰なのか見えないなぁ。でも、俺達以外には誰もいないし……よし!」
 その何かが通りすぎたあたりで影から出たマッシュは相手の後ろへと近づく。
「フフフ……。さぁ、石になぁれ! ペトリ――」
「……ふぇ?」
「……え?」
 振り返った相手と目があったマッシュ。それと同時にマッシュの目の前が真っ暗になっていったのだった。

「……いないな」
 マッシュがいないことに気づいた周達は手分けして早速探す事に。
「マッシュ様はどこに行ってしまわれたのでしょうか」
「おーい!」
「周様、あれを」
 美緒が指差した先で動く影。影はこちらに気づいたようで奥へと逃げてしまう。
「追いましょう!」
「そうだな!」
 みんなで動く影を追うように奥へと向かう。そんなに速度は速くないようで段々追いついていく。
「おーい! なんで逃げるんだー!?」
「わたくし達は怪しいものではありませんわー! ぜひともお話をいたしましょう!」
 声をかけて追いかけるとしばらくして影の動きが止まり近くの柱へと隠れる。どうやらそこから逃げる様子はないようだ。
「ふぅ……やっと止まってくれたか」
「どうしてわたくし達から逃げましたの?」
「私とお話すとみんな動かなくなっちゃうの……。私はただお話して仲良くなりたいのに」
 どこか寂しそうな声で影が喋る。
「美緒……どうするんだ?」
「敵意はないようですし、少しお話してみませんか?」
「任せるよ。それに声からして女の子みたいだし、お友達になれるならなりたいしな!」
「それじゃあ、わたくし達とお話しませんか?」
「……うん!」
 さっきまでと違い明るく元気な返事が返って来る。
「君はどこかの学生かい?」
「がくせい? ううん、私、起きたときにはここにいたの。何でここにいるのかも分からないの」
「そうなんですの……。じゃあずっと一人で?」
「うん……。だから誰かと仲良くなりたいんだけど……」
「ならわたくし達が仲良くなって差し上げますわ」
「本当!?」
「もちろんだぜ!」
「はい。だからそこから出てきてこちらでお話いたしましょう?」
「……うん!」
 そうして柱から出てきたのは人ではなく上半身は女の子だが、髪の毛は蛇、下半身は蛇のモンスター――メデューサだった。下を向いていたメデューサが美緒達の方を見る。
「っ!」
 そこでつかさず周が美緒の前に出る。みるみる内に周の身体が石へと変わっていく。
「ぁ……。ぅぅ、やっぱりみんな動かなくなっちゃう……」
 それを見てメデューサが泣きそうな声で言う。
「あぁ、泣かないでくださいな! きっとあなたのせいではありませんわ!」
 相手がメデューサだという事を忘れ、メデューサの近くに行き慰める美緒。
「じゃあなんでみんな動かなくなっちゃうの!?」
 っと顔を美緒へと向けたメデューサと目が合う。
「あ――」
 不注意により目を合わせてしまった美緒も石へと姿を変えてしまったのだった。