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ザナドゥの方から来ました シナリオ2

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ザナドゥの方から来ました シナリオ2
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リアクション

                              ☆


「ふふふ……急げばいいというものではない!」
 ブラックタワー前で不敵な笑みを浮かべるのは、ジークフリート・ベルンハルト(じーくふりーと・べるんはると)
 彼が『魔王軍』へと引き込んだ機晶姫 ウドに話しかけているのは、メフィストフェレス・ゲオルク(めふぃすとふぇれす・げおるく)だ。
「ウドくんっ!! 貴方はDトゥルーや魔族たちと戦わなくていいですからねっ!! せっかくこちら側についてくれたのですから、元仲間と戦わせるなんて鬼畜で外道な真似はしませんよっ!!」
「……」
 ウドにはどうやら言語を発する能力がないらしく、その言葉にこくりと頷いた。言葉を理解することはできるようで、メフィストフェレスにはそれで充分だった。
「ふむ……来たな」
 もう一人のパートナー、クリームヒルト・ブルグント(くりーむひると・ぶるぐんと)が呟いた。
 その言葉にジークが反応するよりも早く、何者かがジークに飛び蹴りをお見舞いする。
「ちょえやーっ!!」
「どぉうっ!?」
 ジークに飛び蹴りをかました少女――シュリュズベリィ著・セラエノ断章(しゅりゅずべりぃちょ・せらえのだんしょう)はそのままジークに掴みかかった。
「やあジーク、ずいぶんと面白そうなことしてるじゃないか!! ――セラも誘えよこのヤロ!!」
 セラとジークフリートは同じ『魔王軍』の仲間だ。首尾よくウドを仲間へと引き込んだジークが、戦いで負傷したウドの右腕を修理するために連絡を取ったのである。
「ふはははっ、まあ細かいことは気にするな!! それより、頼んだものは持ってきたんだろうな?」
 その言葉に、ノール・ガジェット(のーる・がじぇっと)がウドの為に持ってきたパーツを差し出した。
「このとおり、我輩にぬかりはないのである!!」
 メフィストフェレスが相好を崩して、ガジェットからパーツを受け取る。
「おお、ガジェットさんありがとうございますっ♪ さあ、突入前に応急修理といきましょうか!!」
 持参したスペアパーツを使って、ウドの右腕を迅速に修理するガジェット。メフィストフェレスの手助けもあって、修理は順調だった。
 ガジェットは同じ機晶姫として興味があるのか、修理を進めながらウドを観察している。
「ほほう……魔界の機晶姫の機構はこのような……興味深いであるな……」
 作業を手伝いながら、メフィストフェレスは呟くのだった。
「ああ……しばらくラーメン食べてないから禁断症状が出てきましたよ……ウドくん、この事件が終わったらシーフードラーメンでも食べましょうね〜♪」

 その作業が終わるのを待ちながら、ジークフリートはブラックタワーの上空、空中宮殿を見上げた。
「ふはははは!! 待っていろDトゥルー!! 貴様も我が魔王軍の一員にしてやるぞ!!」
 そのジークの高笑いをタワー前で聞いていたのが、ミシェル・シェーンバーグ(みしぇる・しぇーんばーぐ)であった。パートナーの矢野 佑一(やの・ゆういち)に一声かけて、ジークフリートの方へと駆け寄る。
「佑一さん、ちょっと待って……やっぱり、ジークさん!!」
 佑一が歩を止めるのにあわせて、同じく佑一のパートナー、シュヴァルツ・ヴァルト(しゅう゛ぁるつ・う゛ぁると)プリムラ・モデスタ(ぷりむら・もですた)も足を止めて、ウドを取り囲む賑やかな一団を眺めた。
「ん? あれは……『魔族6人衆』の一人じゃないか……危険じゃないのか?」
 呟くシュヴァルツに、佑一が返す。
「……どうかな。あの人たち、よくミシェルと遊んでくれてる『魔王軍』の人達みたいだし、悪い人たちじゃないと思うけど……」
 ミシェルもまた魔王軍のメンバーだ。事情をジークフリートやセラから聞いたミシェルは、佑一のところに戻ってくる。
「ねぇ佑一さん、ジークさんたち、あのウドって人を仲間にしたんだって、せっかくだから、ボクみんなとも一緒に行きたいんだけど、いいかな?」
 ミシェルの言葉に、佑一は大きく頷いた。
「ああ、もちろん。彼らがよければ、僕たちも一緒に行こう……えーと、いつもミシェルがお世話になってます、同行してもいいですか?」
 一応、ギルドマスターであるジークフリートに許可を求める佑一。それをジークフリートは二つ返事で快諾した。

「ふははははっ!! もちろんだ、仲間は多いにこしたことはない!! なんならこの機会に魔王軍に入ってもいいのだぞ!?」

「……よく笑う人ね」
 誰にも聞こえないような声で、プリムラが独り言を呟く。ジークフリートはプリムラの方を向き直って、言った。
「……おっと、うるさかったかな?」
 まさか聞こえているとは思わなかった。プリムラは視線を逸らして、一言。
「……失礼。……別に嫌じゃありませんよ?」
 返答の代わりに歯を見せて笑うジークフリート。
「急に人数が増えて賑やかになったもんだな……ま、同行する以上、せいぜい足を引っ張らないようにするさ」
 そこに、シュヴァルツが声をかける。プリムラとの会話を分断するように割り込んできた形だが、特にジークフリートは気にした様子もない。
 それに言っていることは殊勝に聞こえるが、飄々としたシュヴァルツの言葉は受け取り方を変えれば『足を引っ張るなよ』と言っているようにも聞こえる。
「ふはははは、まあそう言うな!! 仲間である以上カバーしあうことは当たり前だ!!」
 だが、それを一笑に付して、なかったことにしてしまうジーク。果たして器が大きいのかそれともただもバカなのか、とシュヴァルツは底の見えないジークフリートの笑顔に対し、苦笑いを浮かべるのだった。

「あー……では、よろしくお願いしますね、えーと、ジークさんでよろしいですか?」
 佑一たちに同行していた狐の獣人 カガミもぺこりと頭を下げる。
「あれ、カガミさん。カメリアさんはいいの? それに、カガミさんの家族は大丈夫なの?」
 ミシェルの言葉に、カガミはこくりと頷いた。
「はい……先ほど断ってきましたので」
 振り向くと、カメリアが佑一やミシェル、そしてジークフリートやセラたちに向かって深々と頭を下げていた。

「カガミの家族や山の動物たちのことは、フトリが避難させておる……どうか皆……無事で」

 カメリアに見送られ、セラは闘志を燃やした。
「ふふふ……期待には応えなくっちゃね……ウドもよろしくね!! この勢いでDトゥルーも魔王軍に入れちゃおう!!」
 まあ、実際は『使える手下は多いほうがいい』程度にしか考えていないセラだが、それもこの際ノータッチの方向で。
「ふははは!! 面白くなってきたじゃないか……ウドの修理は終わったか!? ならば行くぞ、魔王軍!!」
 ジークフリートの声を受けて、一同は気勢を上げた。

「あれ……そういえば、パートナーの人はどうしたの?」
 と、ミシェルがセラに聞いた。セラのパートナーはルイ・フリード(るい・ふりーど)であるのだが、姿が見えない。
 しかし、セラは事もなげに言い放った。

「ああ、あれ。留守番」
 と。


                    ☆


 そんな魔王軍メンバーを尻目に、ブラックタワーの中でカメリアから貰い受けた『バキュー夢』で何かを作っているのは、葉月 可憐(はづき・かれん)アリス・テスタイン(ありす・てすたいん)だ。
「あれ、可憐。こんなに背が高かったっけ?」
 アリスの言葉に反論する可憐。
「えー、このくらいでしたよ。何しろこの私の目にはリッパー様の面影がくっきりと残って……あれ、そういえばどんなお顔でしたっけ?」
「……仮面だ」
 そこに突っ込んだのが、魔族6人衆であるバルログ リッパーだった。とはいえ、今はコントラクターとの戦いに肉体を失い、魂だけの状態であったが。
 そこで可憐は、自分の記憶の中からバキュー夢を使ってリッパーの肉体を復活させようとしていたのである。

「よおしっ、できましたよっ!! さあ、この中にお入りくださいな!!」

 精神を集中していた可憐がリッパーの肉体を完成させる。しかし、その真意を測りかねているリッパーは戸惑いの声を上げた。
「待て、可憐。お前はいったい何を考えて……」
「まあまあそう言わずに♪ 自信作ですよっ♪」
 だが、可憐は有無を言わさずに、バキュー夢を利用して、リッパーをその中に押し込んでしまう。

「……人の話は聞くものだ」

 新しく出来た肉体に入ったリッパーはしかし、その完成度に驚いていた。どうやら、肉体の動きについて多少は可憐の制限を受けるようだが、運動性能自体は以前の身体とあまり変わらない。
 そもそも、Dトゥルーと魔族6人衆は秘術によって魂と肉体を切り離す術を心得ていた。ゆえに、ザナドゥ時空とシンクロした可憐がバキュー夢で用意した肉体にも、簡単に入り込むことができるのである。
 また、イイ感じにザナドゥ時空とシンクロした可憐が自らのフラワシとリッパーを重ね合わせることで、リッパーは可憐のフラワシと同様の能力を得るに至っていた。

「さあ、約束ですからね、リッパー様には私と一緒に空中宮殿に向かっていただきますよ?」
「……人の話は聞くものだ」
 リッパーは繰り返した。だが、可憐は構わずに話を進める。
「ああ、そうそう……私がどういうつもりでリッパー様に勝負を挑んだか、でしたっけ」
「……」
 リッパーは文句を口の奥に押し込んだ。確かに、それも聞きたかったことのひとつ。
「……そうですね。私は別に、そうたいしたことを考えてるわけじゃないんですよ?
 ただ私は、その人が選んだ道を、ただまっすぐに進んでいって欲しいと、そう願っているだけなんです。
 その人が……自分の意志で選んだ道を。
 ただそれだけの、非力な人間に過ぎません」
「……可憐……」
 アリスが何事かを言おうとしたが、なんと言っていいか分からない。可憐は続ける。
「ただ、そのために……力になりたいだけなんです。
 その人が選んだその道が……全ての人に受け入れられるようにと……ほんの少しでもいい。力になりたい、ただ、それだけなんです」
 可憐の言葉に、リッパーが頷く。
「ふむ、だから私ともお互いが納得できるような条件であるゲームで勝負をした、と……?」
「……はい。だから、私はDトゥルー様にもゲームを提案します。
 互いの妥協点を探りあう、ゲームを――これは侵略戦争ではありません、ゲームです」

 きっぱりと言い切る可憐。リッパーは、可憐の背に手を添えて、タワーを見上げさせた。
「……リッパー様?」
「良かろう。お前のゲームとやらがDトゥルー様にどこまで通じるか、私もお前のゲームに乗らせてもらうぞ」

 可憐とアリス、そしてリッパーはブラックタワーの内部から光に包まれ、空中宮殿へと飛んでいく。


 いくつもの選択肢の中から、ひとつ選んだ未来への道。その一歩をまた踏み出して。