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リアクション
「未散さん! ハルさんのことは我が説得してみせる。だから、そんなに心配しないで」
天禰 薫(あまね・かおる)は噂を辿りながら、隣で一緒に行動する若松 未散(わかまつ・みちる)を励ます。
「そうだ。天禰もそう言っているんだ。大船に乗った気持ちで任せてくれるといい」
薫のパートナー、熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)も未散に不安を与えないようにそれに乗った。
現在捜索しているのは未散のパートナー、ハル・オールストローム(はる・おーるすとろーむ)だ。
何件かの吸血事件を起こし、未散を探し回っているとの情報があった。
「ありがとう。……正直、今でもハルがこんな事件を起こしているなんて信じがたいけどな」
二人の励ましに若干冷静さを取り戻したものの、未散の表情には硬さが残る。
「未散さん……」
そんな未散の気持ちを推し量り、薫はさらに心を痛めた。
その時、孝高は路地の向こうに入っていく人影を見つけた。
「天禰、あの人影を追うぞ!」
走り出した孝高を追い、大通りにいた薫たちはその路地へと向かった。
「ハル! 待て!」
未散は先にいる人物を鋭く呼び止める。
呼ばれた人物はゆっくりと振り返り、未散の姿を認めると口元に笑みを浮かべた。
「ああ、未散くん。わたくしを追ってきてくれたのでございますね」
「な、もしかして今のはここに誘き寄せるために姿を見せたのか?」
孝高はハルの言葉にハッとする。
路地の深いところまで入り込んでおり、それがハルの作意によるものだと気付く。
「そうだとしても、ハルさんを探して我らには都合がいいじゃないか。孝高、説得するよ」
「ああ、俺も付いてる。だから安心して行って来い」
薫は未散を守るように前へと歩み、真っ直ぐハルを見据える。
ハルには敵意がないことを示すために、「カムイ・クー」と矢筒は布で包んで背負っていた。
「ねえ、ハルさん。過剰吸血も闇討ちも、みんな困ってるよ……?」
薫は恐る恐る言う。
「でも、あの、一番心配しているのは未散さんだよ」
薫の言葉に、ハルはピクリと反応を示す。
「我、思うの。大切なパートナーがいきなりどこかに行っちゃったら、心配になるんだろうなって。それで次に会った時には、こんな大変な事を仕出かしていたら、びっくりして、不安になっちゃうし……」
「それは……ですが、わたくしには未散さんが必要なのです」
どこか迷う素振りを見せたハル。
だが、すぐに元の不敵な笑みを浮かべた。
「ハル、お前は――」
孝高はその姿に何かを感じ、言葉をかけようとする。
そこへ、その時どこからか矢が飛び込み、瞬時にそれを視界に捉えたハルは大きく右へと避けた。
「く……! 当たりませんか」
死角からの攻撃に無理を感じ、レイカ・スオウ(れいか・すおう)は素早く薫たちの元に合流した。
「未散さん、ハルさんの仮面は私が取り払います。私だって、この間は未散ちゃんたちに助けて頂きましたから! このご恩はなんとしてでも返したいのです!」
弓を持ち、レイカはハルの前に対峙する。
「恩を返したいというなら、わたくしに未散くんを渡すというのが妥当だと思いますが」
ハルはレイカの言葉に不満そうに返す。
「仮面に返す恩なんてありませんよ! 私が恩を感じているのは未散ちゃんとハルさんなのですから!」
言うやいなや、レイカはまた矢を飛ばす。
しかし、ダッシュローラーで素早さを上げていたハルには軽々と避けられてしまった。
「まったく、大人しく当たって下さい、よ。狙いは仮面だけなのですから!」
体に重さを感じてきたレイカ。
何本もの矢を打ち、体力を削られていた。
「そう簡単に当たるわけにはございません。さて、そろそろ終わりにしますよ!」
ハルがこちらに駆け寄ってくる。
自分に攻撃が向かうと思い咄嗟に構えていたレイカだったが、悲鳴は別の場所からあがった。
「未散さん!」
ハルの目標は未散だった。
未散はハルに攫われてしまっていた。
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