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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 2/3

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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 2/3

リアクション


リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー) フレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛ぃ)

リリがたまに読むような、ミステリや童話にでてくるお茶会の最中には、殺人や悪いニュースが飛び込んでくるのは、よくあることなのだよ。
「ゆりかご」と言う名の刑務所で、めい探偵のパートナーが主催して、魔女を教祖にする集団が出席するお茶会が行われれば、連続殺人犯の入れ墨男が死神に首を切り落とされても、不思議ではないだろう。
しかし、これが現実の事件であり、リリがその入れ墨男の調査に来ていた探偵である以上、真相を究明しないわけにはいかないのだ。
「メメント・森の死体は、百合園推理研のメンバーが検死解剖しているのだな」
「ええ。正式なメンバーではありませんけれど、レストレイド警部の叔父様が元監察医さんだそうなんです。
ブリジットもお手伝いにいっていますから、結果がでたらお知らせしますね」
めい探偵ブリジット・パウエルのパートナーで、白いドレスの令嬢、橘 舞(たちばな・まい)が、育ちのよさを感じさせる穏やかな物腰でリリにこたえたくれたのだ。
さっきから舞は、周囲の状況に関係なくひたすら食べ続けているジョセフィン・L・レイヤーズの傍らで、彼女の世話を焼いている。飲食物をとぎれぬように渡し、他にいるものはないかと声をかけ、友人とはいえ、なかなかあそこまでできるものではないのだ。
舞は、面倒みのいい人柄なのだよ。
ところで、リリとしては解剖の結果がくるまでに、くわしく話をきいておきたい人物がいる。
アリー・セレマ・ベヨベヨ・ウイッチクラフトだ。
殺された森の背中には、ヘナタトゥーで『セレマ団に近寄るな』と彫られていたのだ。
セレマ団と同席したお茶会で森は殺された。
殺人と警告文がまったくの無関係と考える方がムリがあるのだよ。
「冒険屋ギルドのフレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛ぃ)ルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)だな。
薔薇十字社探偵局局長のリリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)だ。
リリは、メメント・森を逮捕し、ゆりかごに送り込み、最期をみとった人間なのだよ。
あなたがたは、アリー・セレマ・ベヨベヨ・ウイッチクラフトのセレマ団を調査にきたのだろう。
リリもセレマ団に興味があるのだ。
できれば情報交換をしたいと思うのだがどうだろう」
まずは、セレマ団の連中の側の席にいる、見覚えのある契約者に協力を求めてみた。
赤い髪の少女召喚師とパートナーの妙齢の美女とは、これまで他の事件の現場で、数度、遭遇しているのだ。
「リリもアリーを疑っているの?
私、あなたとは協力できないわ。
私はアリーとは友達なの。あの子は犯罪者なんかじゃない」
「ほう。それは友人としての意見なのか」
いきなりフレデリカににらまれたので、リリはすこし驚いたのだよ。
「リリさん、ごめんなさい。
フリッカは、ちょっと、感情的になっているんです。
お友達のアリーに会いにきたら、こんな事件に巻き込まれて、しかも、ここの雰囲気。
かくたる証拠もないのに、会場にいるみなさんは、アリーとお仲間の方たちへの敵意、警戒心をむきだしにしていますよね」
ルイーザの意見は、的確に現状を語っているのだ。
リリもそれはそうだと思うが、だが、アリーたちへの周囲の反応は、今日だけではなく、これまでの彼女らの言動が原因になっているのだろうと考えるのだよ。
「ルイ姉の言うとおりよ。
ゆりかごの連中は、みんな、アリーを魔女扱いして、殺人犯のぬれぎぬまできせるつもりなの。
アリーは、失った大切な人ともう一度会うために、研究をしているだけなのに」
「アリーの研究か。それは興味深いな。
研究の話と関係があるかは別にして、リリはアリーたちが森殺しに関与していると推察できる真実のカケラを持っているのだ」
「あなた、証拠を持っているの」
「これが真相解明への糸口になると考えているのだが」
リリは、フレデリカにデジカメの液晶画面をみせた。
つい数時間前に撮影した森の背中に書かれていた警告文、『セレマ団に近寄るな』の画像なのだ。
「独房に収監されている凶悪犯の体に、わざわざ意味のない落書きをするものはいないだろう。
メッセージの真意をリリは探しているのだ」
「やっぱり、危険なのはアリー個人ではなくて、あの子の仲間たち、セレマ団なのよ」
フレデリカのつぶやきが真実であればよいとリリも思うのだよ。