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【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ

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【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ
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リアクション

 
 
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「ああ、すっかりいい季候になったわね。でも、これ以上寒くなると冬ごもりしそうになるからちょっとあれだけど」
 気温が零度以下になると、超感覚の弊害からか結構眠くなるから困ると、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が思い出した。秋の気温は、過ごしやすいので、できればずっとこのままの気温で冬も終わってもらいたいところだ。
「バカップルも、結構歩いてるみたいだし、秋よねえ」
 ちょっと意味不明なことを口走りながら、リカイン・フェルマータは道の反対側を歩いて行く健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)天鐘 咲夜(あまがね・さきや)カップルや、水神樹と水神誠のカップルたちを軽く睨みながら観察していた。もちろん、まだ告白していなかろうが、姉弟であろうが、リカイン・フェルマータには関係ない。男女が歩いていれば、それはすべてバカップルである。
「ふっ、こんなときには、あの人に会えそうな気がするわ……」
 軽く髪を風に流しながら、リカイン・フェルマータがつぶやいた。
「うーん、うーん」
 なんだか、呻き声が聞こえてくる。今にも枯れてしまいそうな声だ。
「やっぱり、いたわね。そろそろ帰ってくると思っていたのよ。私の超感覚からは逃がさないわ
 道端に行き倒れていたまたたび 明日風(またたび・あすか)を見つけて、リカイン・フェルマータが駆け寄っていった。
「どうしたのよ、しゃきっと生きなさい
 なんだかひからびかけている花妖精のまたたび明日風に、リカイン・フェルマータが言った。
「これは、リカインかぁ。拙者、もうだめかもしれぬぅ……。だが、こうして再び行き倒れていたところを見つけてもらったのも、何かの運命かとぉ……」
 ゼイゼイ言いながら、またたび明日風がひび割れた唇からなんとか言葉を吐き出した。
「再びって、あなたが行き倒れたのって、確か二桁超えて三桁に迫るんじゃなかったの?」
 ずいぶんとさばを読んだものだと、リカイン・フェルマータが実に冷静に聞き返した。ここで取り乱すのは、はっきり言ってばかばかしい。
「もしかして、あなた、枯れかけてる?」
「はははは……。面目ない……」
 力なく、またたび明日風が答えた。
「ヒャッハー、見えるぜ、見えるぜ。半分抜け出しかかった魂がよお」
 見鬼で瀕死のまたたび明日風を見つけだした南鮪が、水を片手に駆けてきた。
「さあ、グッといきねえ」
 差し出されたコップ一杯の水を、またたび明日風がむさぼるようにして飲み干した。
「元気百杯、またたび明日風!」
 どこからともなく響いてきたファンファーレと共に、またたび明日風が元気よく立ちあがった。
「あんたは、はえある命の恩人百人目だぁ。これを拙者だと思って、受け取ってくれぇ」
 そう言うと、またたび明日風が南鮪に第二世帯種籾の入った袋を手渡した。
「おお、これが今の空京の流行か!? ありがたくもらっとくぜ、じゃあな」
 ほくほくしながら、南鮪が種籾を持って去って行った。
「て、展開についていけないわ」
 軽く額に手を当てて、リカイン・フェルマータがちょっとよろけた。
「それで、今までどこに行っていたのよ」
「そうですなぁ、どこからお話ししましょうか。マホロバの扶桑は綺麗でしたなぁ。ティルナノーグは、花が咲き乱れてましてぇ……」
「ちょ、ちょっと、あなた、いったいどこまで行ってたのよ」
 夢見るように言うまたたび明日風に、リカイン・フェルマータが突っ込んだ。
「それはそれは、遠い所ですよぉ。そうそう、拙者がやってきたのも、遠い遠い所でしてぇ……。これから、じっくりとお話しいたしましょう」
「それって長い?」
 ちょっと嫌な予感がして、リカイン・フェルマータが訊ねた。
「なあに、たったの三日でさぁ」
 しれっと、またたび明日風が言う。
「長っ!! 話、長すぎるわよ」
「いえいえ、これでもかいつまんでですよぉ。さあ、では、お話しいたしましょう。昔々、ある所に……」
「そこからなの!」
 街路樹のそばに正座して膝突き合わせながら、リカイン・フェルマータとまたたび明日風はえんえんと話し続けたのであった。
 
    ★    ★    ★
 
「ははははは、仮面の貴公子、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)、空気を読んで今日も登場!」
「クロセル、今日こそ決着をつけてくれます!!」
 シャーミアン・ロウ(しゃーみあん・ろう)が空京大通りを走りながら大声をあげて、クロセル・ラインツァートを追い回していた。
 いつものことである。
「なんで、しつこく追いかけ回しますかあ!」
 今日は、思いの外しつこいと、クロセル・ラインツァートが叫んだ。
「何かよからぬことを考えているであろう。それがしの、正義の超感覚が、びんびんにそれを感じているのです」
 言いつつ、シャーミアン・ロウが投げナイフを放った。ちょうどクロセル・ラインツァートの頭の高さあたりで、街路樹にナイフが突き刺さる。すれ違い様それを素早く抜き取って、シャーミアン・ロウがなおも逃げるクロセル・ラインツァートを追いかけていった。
仮面への攻撃は反則です
 ひらりのらりくらりとマントを翻しつつ逃げ回りながら、やはりとクロセル・ラインツァートが考え込む。
 シャーミアン・ロウの攻撃は、いつもクロセル・ラインツァートの仮面に集中している。まるで、他の場所は目に入っていないという感じだ。
 確かに、仮面が本体だと言われたこともあるが、まさか本当にそんなことを信じているバカもいないだろう。いないだろう……なあ。
「やはり試してみますか」
 そうつぶやくと、クロセル・ラインツァートはマントを翻して一瞬身を隠した。その間に、愛用の仮面を取り外す。
どこだ、クロセル。どこへ行った!?
 そのとたん、クロセル・ラインツァートを見失ったシャーミアン・ロウが、キョロキョロと周囲を見回す。
なっ、それがしとしたことがッ! 隠れ身か!? 卑怯者め、どこに隠れたのです!?」
 周囲をしきりに見回しながら、シャーミアン・ロウが、どこにでもいそうな青年のそばを、つかつかとなんでもないかのように通りすぎていった。
「マジですか……。まさか本当に仮面を……。はははは、そんなことはありませんよね」
 そうつぶやくと、クロセル・ラインツァートは自分の仮面をそばの街路樹に貼りつけた。わざとらしく、コンコンコンと木を叩く。
「むっ! そこかっ。御印、頂戴いたします。ちぇすとー」
 シャーミアン・ロウの投げたナイフが、生身のクロセル・ラインツァートではなく、彼の仮面の眉間に突き刺さった。
「ついに、ついにやりました。さあ、この吉報を報告しなければ」
 小躍りして喜んだシャーミアン・ロウが、スキップしてその場を離れていった。
「ええと……。なんだか、すっきりしません」
 せっかく助かったのに、なんだかもやもやしているクロセル・ラインツァートであった。