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【カナン復興】新年マンボ!!

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【カナン復興】新年マンボ!!

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第三章 開通

(1)マンボ(地下水道)−1

 西カナン中央部、地下水道「マンボ」修復組。二手に分かれた作業班だったが、そのどちらも作業は終盤へと差し掛かっていた。そして、
「野郎共!! 準備はいいかぁ!!
 アナグマの工員が声をあげた。そのすぐ横でハインリヒ・ヴェーゼル(はいんりひ・う゛ぇーぜる)は『トライデント』を構えていた。
 崩落箇所の最南部、最後の岩盤を今から突貫する。
「行くぜぇ!!」
「おぉおおおおお!!!」
 工員のかけ声に合わせてヴェーゼルも槍撃を放った。
 大きな破砕音、そしてガラガラと崩れる岩の塊。そうしてその先に崩落を免れた地下水道が姿を現した。
「ようやく開通したわね」
 鶴 陽子(つる・ようこ)ヴェーゼルを労った。アナグマたちと共に力仕事をしていたヴェーゼルの方が自分よりも疲弊していると思っているようだが、そんな彼女も作業開始時からずっとピアノ演奏を行っていた。慣れないピアノで半日以上演奏を行う事だって並大抵の事ではない。
「そんなの何てことないわ。それより聞いてよ、私、あの人に弟子入りしたの!」
「は? 弟子入り?」
 アナグマの工員の中にはピアノを演奏できる者が数名居たが、その中でも特に腕の良い工員に弟子入りを志願したのだという。その工員は地下でも音楽を楽しめるようにピアノとスピーカーを調整、また改造するなど、工員たちにも一目置かれる存在なんだそうだ。
「反響音なんかも計算して音を出してるし、場所によって演奏の手法も変えてるんだって」
「お、おぅ、そうか」
 返事はしたものの、正直よく分かっていない。陽子は「絶対マスターするんだ」とウキウキだったので、ヴェーゼルは「頑張れ」とだけ言って背中を押してやった。
「さて、オレも作業に戻るか」
 岩塊の突貫を終えても作業が終わった訳ではない。これまでの通路もそうだが、岩塊を壊し撤去したなら、水路と壁面の補修と補強をしなければならない。つまり、いま突貫したばかりの箇所とその周辺の作業が残っているというわけだ。
「そっちはどうだ?」
 水道を少しばかり戻った地点。ヴェーゼルは縦穴を覗き見上げて、もう一人のパートナーである天津 亜衣(あまつ・あい)に声をかけた。
「ん〜〜〜、そうね。もう少しかな」
 砂の撤去はすでに終えている。今は補強作業に入っているという。一緒に作業をしている工員に確認してから、改めて「終わりは見えてきたわ」と答えた。
「なるほど。急ごう」
 水道と壁面の補修部分はそれほど大きくはない。急務は岩塊の撤去作業だ。
「ん」
 終わりが見え始め、再び活気づいた現場の中でキュー・ディスティン(きゅー・でぃすてぃん)はそれを見つけた。
「行ったか」
「えぇ、ようやくね」
 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)がこれに応える。
「彼が『デジカメ』なんて、ちゃんと使えるとは思えないのよね、って言ったら渋々」
「まったく、面倒な性格だ」
「ほんと、素直じゃないんだから」
 話題の人、それはシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)である。彼女は渋々
……そうあくまで仕方なくジバルラの元へと向かったようだ。
リカ(リカイン)も踊りに戻らなくて良いのか?」
「え? 踊りってまだ必要?」
 崩落した岩塊の突貫は終えている。鰐土竜たちを刺激するような音は出ないはずだが。
「終盤に油断する事もあるまい。ほれ、彼らも踊るようだぞ?」
「あの人たちは単に踊りたいだけのような気もするけどね」
「そうかもな」
 キューは威嚇目的の『雷術』と補修箇所を補佐するべく、また『氷術』をすぐに放てるよう気構えて持ち場へと向かう。リカインはマンボを踊るためにアナグマたちの元へ。そして話題のシルフィスティはと言うと、
「ちゃんと撮れてるの?」
「あぁ゛?」
 ジバルラの元へと歩み寄っていた。
「手の中で転がしてても写真は撮れないのよ」
「うるせぇな、分かってるよ」
 リネン・エルフト(りねん・えるふと)から手渡された『デジカメ』。ジバルラはそれで「マンボ(地下水道)」の様子も撮影してきてほしいと頼まれていた―――のを、
「忘れてたのね」
「だからうるせぇってんだよ!」
 彼はここで初めて取り出した。その上、操作に手間取っている。
「貸して」
 言ってカメラを取り上げた。確かに聞いていたはずに、使い方の説明も忘れてしまったのだろう。
「ねぇ」
 レンズを覗きながらに。ブスっとしているジバルラに訊いた。
「覚えてる? あの時のこと」
「あの時?」
 ザナドゥの地でジバルラ紫銀の魔鎧に操られた時のこと。彼を止めるためにシルフィスティがしたことを―――
「さぁ? あの辺りの記憶は曖昧だからな」
「覚えてないの?!! フィスと『キッ―――』」
「き?」
『キス』、したでしょう?
「あ゛? だから聞こえねぇってんだよ!」
「もっ―――もういいわよ!」
「はぁ? なんだそれ」
「うるさい! 撮影の邪魔よ、そこ、もっと下がって」
 面と向かって言うことが、それも自分から言わなきゃならないことが、こんなにも恥ずかしいことだったなんて。いつもの強気な自分は一体何処に……。
「そっ、そうよ! 魔鎧! 紫銀の魔鎧はどうしたのよ。今日はしてないじゃない」
パイモンの野郎に引き剥がされたんだ。上の命令で無理矢理にな」
「良かったんじゃない? 言ってることは滅茶苦茶だったし、何言ってるか正直分からなかったし」
「何言ってやがる、俺は一貫して「国が欲しい」って言ってただろうが」
「なぁに? それじゃあ「誰のものでもない土地に線引きして『今日からここが俺の国だ』なんて言って威張り散らせば」気が済むわけ? そんなの子供の遊びじゃない」
「ん、だとコラ」
「だいたい「国を作る」って事は「人の上に立つ」ってことでしょ? 自分に向けられてる気持ちに気付かない鈍感が人の気を引こうなんて百年早いのよ」
「あ゛? 俺がいつ誰の気を読み違えたってんだ」
「「読み違えた」なんて言ってないでしょ?!! そんなんだから魔鎧にも操られるのよ!!」
「んなっ……それとこれとは話が違うだろうが」
 ギャアギャアワァワァ言い合いからの大騒ぎ。それになぜか張り合うようにマンボの音楽も大きくなってゆく。
 終わりの見え始めたマンボ修復。疲労はあれど、テンションだけは今も、いや今の方が皆に高い。
 マンボに水を通す、その時を目指して、一行は最後まで集中を切らさぬよう努めるのだった。



(1)マンボ(地下水道)−2

 縦穴(空気穴)の真下ならば辛うじてどうにか電波は届くものの、やはりにマンボ(地下水道)内では電波は届かない。
 とっぷり日も沈んだ夕暮れ後、作業を終えた契約者たちは地上へと戻り来ていた。今も地下に居るのは掘削集団「アナグマ」のお頭と工員が数名、そして夏侯 淵(かこう・えん)だけだった。
 北東、それから「エゼキエル」の集落に向かって修復を行っていた班のどちらも全ての作業を終えた。その連絡が、地上にいるルカルカの元へ、そして地下のの元へ伝えられた。
お頭さん。良いそうだ」
 5kmにも及ぶ崩落箇所、その全てにおいて、無事行程を終えたという。あとはここ、ルカルカたちが造った岩塊の水門を開くだけ。
「最後の仕上げだ」
 は一本の「ツルハシ」を手に、
「このツルハシで壁に穴を開けてくれぬか」
「良いのかぃ? 俺たちがキメちまって」
 ツルハシを受け取り、お頭が笑む。
「もちろん、掘削はアナグマの命だろう?」
「へっ、言ってくれるぜぃ」
 お頭を入れて工員は4人。その全員で一気に水門に鋭先を突き立てた。
 間もなく壁にヒビが入った。と、次の瞬間には、せき止められていた地下水が一気に水門を壊して溢れていった。
「よっしゃ、成功だ!!」
 20kmも離れた水源から流れきた水が「エゼキエル」の集落へと流れてゆく。
 掘削集団「アナグマ」と集まってくれた契約者たち。彼らの働きにより、僅か一日で5kmに及ぶ崩落箇所を修復する事ができた。無論、細かい補修や補強は必要になるが、とりあえず集落に水は届く、水さえあれば人々が戻ってくる事ができる。
 西カナン各地に残る戦争の爪痕。弊害もこれから様々に判明してゆく事でしょう。
 それでも、ひとつずつ解決して乗り越えてゆくより他にない。自分たちの手で、また手を貸してくれる人がいるならその人の手を貸りながら。
 ひとつずつ、ひとつずつ。
 元の暮らしに、いや、それ以上の暮らしにしてやるべく、今日も明日もひとつずつ。

担当マスターより

▼担当マスター

古戝 正規

▼マスターコメント

 
 おはようございます。ゲームマスターの古戝正規です。
 「【カナン復興】新年マンボ!! 」如何だったでしょうか。
 お楽しみ頂けたなら幸いです。

 さて、ようやく平和の訪れたカナンですが、民が日常を取り戻すにはもう少しばかり時間が必要になることでしょう。
 要らないものを捨てなければ新しいものは入って来れない。頭では分かっていても難しいですよね。

 復興、そして発展。
 問題が山積みで不自由な毎日の中でも、少しでも笑えるように、笑みを交わし合えますように。
 2012年は【カナン復興】の年でもあります。今年も一年、よろしくお願い致します。

 次の機会にもお会いできることを心より祈っております。

▼マスター個別コメント