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第二章:Let’s 取締り


 バレンタインデーは無事に(?)催されているようですが、もちろんテロリストたちの存在を忘れてはいけません。
「始まったな」
「ああ」
 ツァンダの繁華街。
 例のモテない二人組みは、ベンチに腰掛けながら騒ぎが大きくなる街並みを眺めていました。いかにも平凡な外見の二人組み。誰も、彼らを気に止めようとはしません。ですが、彼らこそがこのテロの首謀者ともいえるのです。
 彼らの思いつきの一言から始まった恐るべきテロですが、ここまで大きくなるとは思っておらず、彼ら自身もびっくりです。ベンチに座りっぱなしなのは腰が抜けているからかもしれません。
 いずれにしろ想像以上の影響力です。無名なのに結構生意気です。彼らもこの力を別のほうへと注いでいれば、絵柄つきの有名NPCになれたり、さらにはいともたやすくチョコレートをもらえる身分になれたでしょうに。
「広告とって来たわ。スポンサーって探せばいるものね。これからはこの第十三新聞部が、スポンサー広告を記事に載せることでお金を調達してこれるわ。寄付金も集めれそうだし」
 意外な悪党の才能の持ち主がもう一人いました。
 一見間抜けな名前と外見の女子生徒、第十三新聞部の部長、東須 歩子(とうす ぽこ)です。頭の少し足りなさそうな甘ったるい感じの外見の少女で、黙っていればチョコレートを上げれそうな男子生徒が何人か寄ってきそうなものですが、存分に持ち腐れています。見かけより悪知恵が働くので油断はできません。
 歩子は、二人組みの隣に腰掛けると、膝の上でノート端末を広げます。
「今回の作戦の全貌とリア充たちの出現ポイントなどをみなに伝えて。資金源つきのテロリストって、本格的じゃない? 勝っても負けてもいいから頑張って盛り上げてね」
「カネならいらね。ヒモつきなんて、“フリー”を名乗る意味ねえもん。俺たちは政治犯じゃない。愉快犯のフリー・テロリストだぜ。リア充たちは俺たちを散々バカにするんだろうけどな。俺たちは誇りとポリシーを抱いてスカートめくりやるんだ」
「協力ありがとうな、歩子ちゃん。死して屍拾う者なし。タコ殴り上等でパンツ見るんだよ、俺たちは」
「ふ〜ん、それならいいわ。別に私もお金が欲しかったわけじゃないし。このテロが終わったら、恵まれない人たちに寄付するから。校舎の屋上からチョコまくのもいいわね」
「その辺は好きにしてくれ。……さあ、行くか」
「ああ。この戦いが終わったら結婚しようぜ」
「なにそれ? ヤベ、俺超リア充じゃん? パンツ新しいのにしてくればよかったぜ」
「俺は褌だぜ。でも、誰も俺のズボン取ってくれそうな奴いないのな……」
 そんなことを言いながら、二人はリア充を見つけ次第襲い掛かっていきます。
 辺りに悲鳴が沸き起こり、怒号と逃げる足音が沸き立ち始めます。
「……無茶しやがって、だわよね」
 その様子を見ていた歩子は、携帯電話を取り出し、蒼空学園の校長室へと電話をかけます。
「さて、バックアップバックアップと。匿名で山葉 涼司(やまは・りょうじ)にニセの情報リークしちゃおっと……」
 なかなかに色濃いテロリストたち。
 無事に鎮圧することが出来るのでしょうか……?