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【2022バレンタイン】病照間島の死闘

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【2022バレンタイン】病照間島の死闘

リアクション

 港には、小さな一艘のボートがあった。
 堂島 結と仁科 美桜。
 二人を待っていたかのように、波に静かに揺れていた。
「さあ……」
 先にボートに乗ると、結に手を貸す美桜。
 結は黙ったままその手を掴む。
 ボートが岸から離れたその瞬間だった。
 美桜は、違和感に気づく。
 ボートに、チョコレートが付着している。
 先に誰かがここに来た?
 チョコレートの下に隠されていたもの……それは、ダイナマイト。
 朝霧 垂のものだった。

 ティアン・メイに崖から突き落とされた垂は、落ちてからしばらくはまだ生きていた。
 最後の力を振り絞って、垂はボートにダイナマイトを仕掛ける。
 他人を殺してまで得た『幸せ』なんて、垂は許せなかったから。
 ボートが動き出したら起爆するように仕掛けて、垂は力尽きた。

 そしてダイナマイトは、今、まさに起動した。
「結、危ないいっ!」
 外すのは、間に合わない。
 そう判断した美桜は、咄嗟に自分の身体全体でダイナマイトを抱え込んだ。

 ドッカーーン!!

 この島に、最後の爆発音が響き渡る。

「み……美桜ちゃん、みおう……」
 奇跡的に、ボートは無事だった。
 結も、ダメージを受けたがなんとか生きていた。
 しかし、美桜は。
 結の目に入ったのは、ほんの少し前まで美桜だった、チョコレートの塊だった。

   ※   ※   ※

 ギィ……ギィ……
 波間に、ボートが進む音が響く。
「これは……美桜ちゃんの、指。これは……耳。これは……あはは、唇、見いつけた」
 たったひとり、ボートに乗る結は、ずっと何かを呟いていた。
 美桜だったチョコレートを並べながら。
 その全身からは、ぽたり、ぽたりとチョコレートが垂れる。
 尋常ではない量のチョコレートが、ボートに溜まっていく。
「美桜ちゃん……ありがとう。ずっと、ずっと、一緒だよ……」
 結は、唇らしきチョコレート塊に、そっと自分の唇をつけた。
 その瞳は、数刻前まで病照間島にいた人間と、同じ色をしていた。





 朝霧 垂:死亡確認
 仁科 美桜:死亡

 堂島 結:生存……その後は、不明