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終身名誉魔法少女豊美ちゃん! 『私、お母さんになりますー』

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終身名誉魔法少女豊美ちゃん! 『私、お母さんになりますー』

リアクション

「ねえ、どうしてこんなことをしているのかな? 目的はさららちゃん? 豊美ちゃん? それとも魔法少女そのもの?
 みんなで仲良くできないかな?」
「あなたのことをよくは知りません、けど、何故魔法少女をそれほどまでに否定するの?
 魔法少女の皆さんは、街の平和を守るために日々、頑張っているんです。その頑張りを、まずは見てあげてもらえないかな」
 詩穂とコハクが口々に、これ以上騒ぎが大きくならないよう説得の言葉を投げかける。
「魔法少女なんて、いなくなってしまえばいいのよ。魔法少女を匿う街、国……そんなの、滅んでしまえばいいわ」
 しかし、姫子は聞く耳持たず、といった様子である。どうしよう、と顔を曇らせるコハク、姫子の言葉が癪に障ったらしく今すぐにでも飛び出しそうな詩穂を抑え、望が進み出る。
「まあまあ、お互いに素性を知らない内は、何を話しても平行線、そうではありません?
 せめてあなた様のお名前を伺ってもよろしくて?」
 相手が豊美ちゃんと同類の英霊であるなら、丁寧な物言いに対して無下な対応はしないはず。その意図は見事的中し、姫子は渋々ながら自らの素性を明かす。
「我は高天原 姫子、かつて帝として国を総べていた者である」
「えっと……ということは、讃良さんと同じ、ということなんですか?」
「そのようですわね。元が同じ英霊、というのは決して珍しいことではございません。同時期に現れるのはかなり特質と言えますが」
「であるな。それに元が同じというなら、その者同士は互いの存在を感知出来てもよかったはずだが」
「けれど、あの人も讃良さんも、嘘を吐いているようには見えませんよ」
 姫子の言葉を聞き、伊織とパートナーたちがあれこれと想像を巡らせる。もちろん、得た情報をHCを介して『INQB』へ送っておくことも忘れない。『豊浦宮』へも他の魔法少女たちが同様の手順で情報を送っていることだろう。
「そんな理由で魔法少女を狙うなんて、ちょっと短絡的じゃないかな? これだけの契約者を簡単に操れるくらい凄い力を持ってるんだから、もっと別のやり方とかあるんじゃないかな?」
「だいたい悪役ってこんな感じだよね、大層な理由を掲げてるように見えてその実大したこと無いってパターン。もっと誰もが共感できちゃうような理想持ってたら面白かったのに、興醒めだよ」
「何よ何よ、よってたかって言いたい放題言ってくれちゃって! いいわよいいわよ、こうなったらみんなまとめて消してあげる!」
 歩と円の容赦ない評価(二人とも決して意図的というわけではないが)に、姫子がプツンとキレて魔力を増大させる。
「はい牛ちゃん、さっきボクを貫いたんだからここでは仕事してよね」
「えー、たたかうのー? こわいー、やばんー。あるちゃんはおやつとおんなのこたべるせんもんなんですぅー」
 あくまで可愛く振る舞っているアルコリアだが、しかし手には妖気を放つ太刀が握られていた。
「てりゃー」
「…………えっ?」
 そして、目にも留まらぬ速さで懐に飛び込んだアルコリアの、これまた目にも留まらぬ剣戟が姫子をすぱぱぱぱん、と切り刻む。通常ならとてもお見せできないようなグロ映像が展開されたかもしれないが、今夜は魔法少女の世界。一瞬でズタボロになった姫子が地面に突っ伏し、「う、嘘……なんでこいつら、こんなに強いの……?」と声を震わせていた。
「……え、ちょっと待って、これでおしまいなの? 盛大に登場したイベントボスが、ものの数秒でやられちゃったような感じじゃない」
「えーと……多分アレだよ、二回三回と登場する度に強くなっていくタイプなんだよ! 今日は顔見せって所?」
 思わぬ光景に呆然とする魔穂香を、ネトゲにたとえて美羽がこんな感じじゃないかな、と説明する。姫子にとっては相手が悪すぎたというのもあるが、実際の所姫子に直接戦闘力はほぼなかった、というのがこの事態の真相であった。
「さっき、国を滅ぼしてやる、なんて言ってたよね? 流石のきさらちゃんも、ちょーっと怒っちゃうかなー♪」
「ぎゃーーー!! 痛い痛い痛い止めて止めて止めてー!! 折れる、折れるってばー!」
 その後は、見ている方が可哀想になってくるくらいの、一方的な展開だった。笑顔で固め技を繰り出す詩穂に全身の骨を軋ませられたと思いきや、お次はレイナに正座させられ説教を受けさせられる。
「……あなたのしたことが、どれほどの苦痛を生み出すものか、理解しているんですか……?」
「な、何よエラそうに……あ、えっと、その、なんでもないわよ……うぅ、ごめんなさーい、私が悪かったわよー」
 最初こそ抵抗していたものの、段々と小さくなっていく姫子。傍で見守る美央とセラは、決してレイナを怒らせないようにしよう、と心から誓うのであった。
「うわーん! 私をここまでコケにしたこと、覚えてなさいよー!」
 と、姫子が喚いたかと思うと、辺りをひときわ濃い靄が包み込む。隣の者すら把握できないほど濃縮された靄、そしてその靄が晴れた頃には、姫子の姿は忽然と消えていた。
「消えた……? これだけの人数を掻い潜って逃げのびるなんて……」
「……確かに、持っている力は相当のもののようですね。これは、一度では終わらないかもしれませんよ」
 確証はないが、なんとなくそうなるような気がして、望は呟く。

 やがて空京の街に、朝日が差し込む。
 街を騒がせた事件は、ひとまず解決を見せたのであった――。

●朝:豊浦宮

「報告書どうもありがとうございますー。随分多くの魔法少女が活躍されたんですね。その方には私の方から連絡を入れておきますー。
 高天原姫子さん……その方が、今回の騒ぎを起こしていたんですね」
 戻って来た魔穂香と六兵衛から報告を受けた豊美ちゃんが、うぅん、と唸り声をあげて押し黙る。
「讃良さんと姫子さんは、元が同じ英霊ってことになるわけだけど……なんか、匂うわね」
「? 何がッスか、魔穂香さん?」
 首を傾げる六兵衛の前で、魔穂香が口を開く。
「そうそう、元が同じ英霊が同時期に現れるものかしら。私はパラミタに来て日が浅いけど、そんなことって滅多に無いと思う。
 豊美ちゃん、何かあるんじゃないの? たとえばあの二人の元になった人と縁が深いとか」
 魔穂香の言葉に、豊美ちゃんはしばらくの間沈黙を続けていたが、やがて力なく笑みを浮かべる。
「……あはは……はいー、魔穂香さんの言う通りなんです。
 私は、讃良ちゃんと姫子さんの元になった人に、会っているんです。存命中ではありませんでしたけど……」
 ――そして豊美ちゃんは、過去にあった出来事を二人に語る……。

●?

「……我としたことが、不覚を取ったわ。
 パラミタ……この世界は我が思う以上に複雑で、そして強力な力を持つ者たちが存在しているのね」
 忌々しげに呟いた姫子が、まだまだ諦めないといった様子で呟く。
「我一人だけでは、力が足りない。……なら、力の有りそうな個人、種族を取り込んでしまえばいい」
 その結論に至った姫子が、対象に選んだ相手は――。

「はぁ……これで今日の買い物はおしまいなんだな。
 いい加減リンネも、ボクに家事の全部を任せるんじゃなく、自分でやってほしいんだな」

 果たして、その者の運命や、いかに。

『終身名誉魔法少女豊美ちゃん!』 完

担当マスターより

▼担当マスター

猫宮烈

▼マスターコメント

猫宮烈です。
『終身名誉魔法少女豊美ちゃん!』、いかがでしたでしょうか。

今回初登場の姫子。当初から、『物凄い力を持っているのだがどこか抜けており、そして直接戦闘力は皆無』という方向でいこうと決めていました。
故に、一回目である今回は、仰々しく登場した割に一瞬でやられる、という結果でした。きっとここから二回目、三回目……と進むに当たって、悪役らしくなっていく……かもしれません。
最初から立派な悪役を出すのが難しいなら、シナリオが進むごとに成長していく悪役を出せばいいじゃない。……すみません石を投げないで(土下座

というわけで、しばらくは頑張って魔法少女のシナリオを続けてみようかと思います。
一つのシナリオ当たりの文量は抑えめにして。まぁ、色々とインフレでしたからね。
もしかしたら物足りないと思われるかもしれませんが、何卒ご容赦いただけますと幸いです(ぺこり

あ、後、目次も作ってません。やや負担でもあったので。
出来る事が限られている現状ですが、精一杯やっていこうと思いますので、ご理解いただければ幸いです。

それでは、次の機会にまた、どうぞよろしくお願いいたします。