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縺れた感情と思惑

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第2章.現場 修羅場

 
 修羅場の現場。
 森の開けたそこでは流血しながらも互いに殺意を持って戦い合っている三人がいた。
 そんな所に到着した一行。
 一行の状況というと――藤原が山田の腕に抱きついたままの藤原がいる状態だった。
 山田の気配を感じた三人が山田の方を向くと――それを確認したように山田に「バレンタインデーキス」をする藤原。
 
「な、何をするのおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
 
「……!!」
 
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
 
 あまりのショックに更に発狂する、カナメとエリザと亜里沙の三人。
 あまりの発狂ぶりに三人は大きく目を剥き、血涙を流して藤原をガン見している。
「あまりにおかわいそうですし、慰めてさしあげようかと存じまして」
 と、勝ち誇った様に笑みを返し、また山田に「バレンタインデーキス」を見せ付けるようにする藤原。
 刹那――声にならない声が三人より洩れ、凄まじい殺意があたりを包み、山田の護衛役であった白砂とサクラコが山田を守るような位置に付いた。
 山田自体は攻撃を受けることはないだろうが――攻撃の余波を受ける可能性は十分あった」
 そして、藤原は嬉々として三人の中へと向かっていった。
 「そうですよね。お辛いのですよね。ご無理なさらず治郎さんを諦められた方が御身のためですよ」
 と更に挑発しながら「分身の術」で分身の術「絆の糸」で首を狩ろうとするが――。
 山田を護衛している白砂に代わって、サクラコが首を狩ろうとする藤原を牽制する。
 彼女たちを殺させない――これも護衛の一つであった。
 また、亜里沙達三人も一時、結託して藤原を集中攻撃することとなった。
 サクラコの牽制を、亜里沙達三人の攻撃を「行動予測」で警戒していたため、「空蝉の術」で近くにあったもを使い、回避をした。「みんな! ……ヒィ!」
 激化した修羅場に怖怖と声を出した山田、だが、血涙の跡を残した顔で満面の笑顔を山田に向ける亜里沙達に恐怖を感じ奥に引っ込んでしまった。
 それでも山田の方に意識を向ける亜里沙達。藤原はサクラコによって牽制され、動けない。
「お前ら、いい加減にしろよ。山田のことちゃんと考えたことがあるのかよ?」
 激化した修羅場を見た猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)はこの場を鎮静させようと奥に引っ込んだ山田に変わって説得を試みる――。
「パートナーってのは友達で、仲間で、家族で、大切な人だろ ?もし、もっと一緒に居たいならその気持ち、山田にぶつけたのか?」
「……」
 さすがに、山田以外の人間に対しては能面のような表情をした三人だったが、猪川の問には沈黙してしまった。
「な、だから、今からでも遅くないから山田のことを考えて皆で仲良く、互いの気持ちを伝えてやっていけば良いと思うぞ」
 攻撃を警戒しつつ猪川の問いに対して互いを見る三人。
「そうですわ! 貴方達の気持ち、本当に、本当に分かりますわ。ですが、こんな争いは無意味ですわ。本当に勝ち取りたいのであれば力ではなく、事実関係の積み重ねが大事なのです」
 猪川の発言に続けてパートナーであるウイシア・レイニア(ういしあ・れいにあ)が三人にそんなことを言う。
「手に入れる……事実関係……既成事実……」
 カナメがウイシアの言葉を反芻するかのように呟く。
「ちょ、まっ……」
 雲行きが怪しくなって行く様子に焦る、猪川。このままでは修羅場が再開しかねない。
「な! とりあえず、争いをやめて……」
 再開するのを阻止しようとするが――。
 
「私が一番先に! 私が! 一番最初から彼の隣にいた私が既成事実を作るのよ!」
 
 山田に向かって走りだそうとするが……。
 
「キエロ!」
 
 それを阻止する、エリザ。
 
「あはははははは! 消えるのはそこの婆共だわ!」
 
 二人を攻撃しようとする亜里沙。
 どうやら、修羅場は――誰が一番先に既成事実を作るかということで再開してしまった。
「あーあ、振り出しに戻っちまったぜ。雄平は似たところがあるしなぁ」
 今までの流れを見ていた猪川のパートナーであるウルカ・ライネル(うるか・らいねる)似たような所を感じていた。
「俺も止めに入るか。といっても俺、こういうの苦手なんだよな。最悪力ずくでも止めに入ろうかな」
 ウルカは言葉での説得を諦めて、力づくで止めようと殺戮の間に参加した。
 「空中戦闘」を使い攻撃を受けないように、空中から「幻槍モノケロス」で気を使いながら戦いを止めるために三人に攻撃をかけるた。
 
「……ダメだこりゃ、説得するにもまずは落ち着かせないとね」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は目の前で繰り広げられている惨状を見て考えていた――。
 そう、三人は「山田しか見えない」「自分以外の女は全て敵」状態なので、同じ女である自分達が説得に当たっても事態が複雑化すると判断した。
 故に――現状では説得できるどころか攻撃を受けかねなく、この興奮状態では説得も無理であると判断し、落ち着かせようとした。
 慎重を期し、狙撃に適したポイントに移動すると、スナイパーライフルでスナイプを使い麻酔銃で対象の三人を狙うが――。
 激しく戦闘している現状では誤射をしかねずタイミングを見計らう事になった。
 未だ――勝負の時ではない。
 
 狙撃を行おうとしているセレンフィリティのパートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は万一に備えて「シーリングランス」を準備して待機している。
 
 一方――積極的に実力行使を行う者達もいた。
「この争いを止めないことにはにっちもさっちも行かんからな……仕方ない、無理やり介入させてもらおうか」
 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)とパートナーのコルデリア・フェスカ(こるでりあ・ふぇすか)ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)はそんな者達だった。
「あんな修羅場の真ん中に突っ込もうなんて、エヴァルトさんの考えが分かりませんわ〜……。まぁ、実力行使が一番手っ取り早いのは分かりますが〜……」
 コルデリアはトンファー型光条兵器を射出してエヴァルトに渡すのだった。
「いやー……ちょーっとコワいね、コレは。みんながみんな、パートナーの山田くんが好きで、一歩も退けないからこんな大喧嘩しちゃったんだね」
 ロートラウトはこの惨状を見て言わずにはいられなかった。
「でも軟弱だねー。好きとか嫉妬とかって感情が備わってなかったからって、暴走するなんて。ボクなんて、好きな相手が恋愛不可でも、くさることなく好きだもんね。感情設定は大切な人だけど」
 同じ機晶姫であるエリザをみてそう感想を漏らしてしまう。
 正面からの攻撃を避け、エヴァルトの攻撃に合わせて時間差で攻撃をしようと考えていた。
 アリサ達三人が互いに攻撃するタイミングを伺うエヴァルト。
 他の生徒の参戦もあってなかなかタイミングがつかめない――。
 一方、そんな修羅場を観戦していた生徒達もいた。
 志位 大地(しい・だいち)はシーラに頼まれてカメラで撮影をしていた。
 まあまあこれは……!いけませんわ……もっと、もっと……それは禁断の……いけませんわ〜〜〜!!」
 志位のパートナーであるシーラ・カンス(しーら・かんす)はこの状況を見て激しく妄想を掻き立てられ、自分の世界へどっぷりとはまっていた。
 どうやら、シーラには百合百合しいキャットファイトのようにでも写っているのだろう。
「ああ、なんて大胆なんでしょう! 破けた服から見えるその姿が扇情的でいいですわ〜〜!!」
 人目もはばからず大興奮な様子。
「この組み合わせだとどういった感じになるのでしょうか? 攻めが二人で受けが一人? それともリバーシブルがひとりなんでしょうか〜〜!!」
 早速、周りはドン引きである。因みに戦闘に必死になっていた三人には届いてない。
 そんな様子に何時ものことだと思いながらビデオを回す志位だが、そのアングルは舐め回すようなカメラワークだ。
 大方、アングルの指示はシーラによるものだが。
「・・・リキュカリア、何しに来たんだよ。彼女たちを止めようと思ったの?」
 五百蔵 東雲(いよろい・しののめ)は目の前で繰り広げられているのを物陰で恐ろしものを見るように見ていた。
「あの中に入っていけるわけないじゃん。今後の参考にしようと思って」
 リキュカリア・ルノ(りきゅかりあ・るの)は森の広場で繰り広げられている修羅場に興味があって五百蔵を連れてきたようだ。
 
「死ねぇ!」
 
 五百蔵達の眼前に映る光景――
 あたりを包み込む濃厚な殺気と響き渡る怒声、亜里沙達三人は自分達以外にも止めようと攻撃している生徒達にも攻撃を行なっている。
 制圧しようとする生徒にも積極的に攻勢をかけるグループと狙撃チャンスを狙う生徒や三人同士討ちのタイミングを狙う生徒もいた。
 それから離れた地点では五百蔵の様にこの修羅場を観戦している生徒――妄想ダダ漏れなシーラや修羅場を撮影する志位。
 そして、シートに座り飲食しながら大人しく観戦しているゴブリンなど。
 流血した三人が戦い、生徒が介入する地獄のような修羅場とは違った雰囲気で対照的だった。
 そんなデスマッチを見ている五百蔵には貧血の時とは違う冷や汗が流れていた。
 対して五百蔵のパートナーであるリキュカリアはまた違った視点で見ていた。
 確かにリキュカリアの目の前に広がるのは修羅場という戦争。
 (東雲は見た目ひょろひょろのノッポだけど、放っておけないっていうか危なっかしいっていうか儚いっていうか……んもうとにかく誰かひっかけたら大変だし!)
 それは何時か来るかもしれない事態であると改めて覚悟をしていた。
 
 ところで山田はというと――。
「今3人に近づくのは危険だし、人の居ない所にいる方がいいんじゃない? 皆が止めてくれると思うし」
 白砂が目を離した隙に修羅場を前に怯えている山田を人気のない所に誘うミネッティ。
「え、あ……」
 誘う――と言うよりも腕を引っ張られ、困惑しつつも連れ込まれていく山田。
 森の茂みの方へ移動する二人。
「3人一度に虜にするくらいすごいんでしょ? 興味あるなぁ」
 ミネッティは山田を木に押し付けて迫り、返答に困惑する山田。
「ちょ……」
 山田を体で抑えつけたままカーディガンを脱ぎ、山田の上着も脱がせていくミネッティ。
「え、あ、助……むぐぅ」
 何かを言おうとして、大人のキスをされてその口をふさがれてしまう山田。
 そして、そのまま押し倒されてしまった。
 日に照らされた二人の影が激しく動き、乾いた音と湿った音の間に二人の声が聞こえる……。