リアクション
第6章 パーティー終了、結果発表
パーティー会場は、飛び散ったチョコレートによって一面チョコだらけになっていた。
「怪我人は、いないようだな」
ダリル・ガイザックが診察鞄を持ってチョコだらけの会場を歩いて回る。
怪我人は、いない。
しかし参加者は全員、チョコレートまみれになっていた。
急遽、「ウェザー」のシャワー室が解放され希望者が次々とシャワーを浴びる。
「ある意味、ちょうど良かったかも。皆、これを使ってねぇ」
シャワーが終わった参加者に、佐々木 弥十郎がチョコレート色の液体が入った小瓶を配っていた。
「これは、チョコレート? でも弥十郎さんのチョコはさっき灰色人間にやられたんじゃ?」
不安そうに告げるサニーに、弥十郎は微笑んで行った。
「これは、飲食物じゃないんだよねぇ」
ぺたり。
液体をキッチンペーパーに漬し、それをサニーの顔に貼る。
「肌ケア用の、パック液」
※※※
「それでは、チョコレート活用コンテストの結果を発表しまーす!」
ぱちぱちぱち。
サニーの元気な声と拍手が響く。
簡単に片づけられた会場で、コンテストが仕切り直された。
審査員のサニー、レイン、テテ・マリクル、アゾート・ワルプルギスの喧々諤々の評議の後、やっと結果発表が行われることになった。
「えーと、皆さん、素敵なチョコレートの活用方法、どうもありがとう。どれもとっても素敵な案ばかりで、すごく楽しかったです。評価するのが勿体ないくらいだけど、お祭りだから、発表しちゃうね」
ぺこりと一礼するサニー。
「まずは、審査員特別賞。パーティーを楽しく彩ってくれたチョコレートファウンテンの発案者、ジーナ・フロイラインさん!」
「すげーじゃん、じなぽん! がんばった甲斐があったなあ!」
「お、おっきな声を出しやがるなです、バカマモ!」
自分のことのようにはしゃぐ新谷 衛を殴るジーナ。
しかしその顔は真っ赤に染まっている。
「そして準優勝。審査員一同その腕前と細部まで組み立てられたメニューに感激しました。フルコースを作ってくれた、秋月 桃花さん!」
「わ、わあ桃花、準優勝だって!」
「……郁乃様が喜んでくれて、嬉しいです」
「そ、そんなそんな。……桃花が私の婚約者で、誇らしいよ」
赤くなって俯く桃花の頭をそっと撫でる芦原 郁乃。
「優勝は…… 女性陣みんなお世話になりました。意外でとっても実用的なチョコレートパックを提案してくれた、佐々木 弥十郎さん!」
「……おぉー」
「何、兄さん反応薄いねぇ?」
「いや、驚いてるんだ。まさか優勝とはな」
「……これも実験台になってくれた兄さんのおかげだよ」
サニーに促され、受賞者は舞台に上る。
ジーナと桃花に、手のひら大のそれぞれの形をしたチョコが渡された。
「おぉ、細かい所までよくできてるです」
「郁乃様に食べていただきましょう」
そして、弥十郎には等身大のチョコレート。
「……どうやって持って帰ろうねぇ」
「ご心配なく! 今ここで皆さんに食べていただきまーす」
「えぇ(汗)」
わぁ、とあがる歓声に困惑する弥十郎。
「ふふふ、いよいよ俺様の出番がきたようだな! 俺様が喜んで(主に局部を)いただこう!」
「いや君の出番はもうとっくに終わってるよ」
しゃしゃり出る変熊 仮面をやんわりと押しとどめる弥十郎。
弥十郎の困惑を余所に、チョコケーキはバラバラに切り分けられ、参加者全員に取り分けられた。
弥十郎にはこの他に5分の1サイズの弥十郎型チョコも渡された。
「最初からこれを渡してくれればよかったのに……」
※※※
「楽しかったねー、雅羅。でもちょっと食べ過ぎちゃった。後でどっかで運動してかない?」
「そうね。食べた分、カロリーを消費しないと」
白波 理沙の声に頷く雅羅・サンダース3世。
「色々あったけど、とても楽しかったよ。サニーさん、またこんなイベントを企画してくれたら嬉しいな」
「わあ、突発的な企画だったんだけど、楽しんでくれて私も嬉しい! 次は何をやろうかしら。もうちょっとしたらお花見かな、あ、遊園地も行きたいし……」
「……ほどほどにしてくれよ、姉さん」
杜守 三月の言葉に浮かれて色々案を練り始めるサニー。
それを静かに窘めるのはレイン。
「あら。いつもはもっと厳しいツッコミが入るのに。今日は大人しいのねえ」
「あー……まあ、変熊のアレに比べると大体の事はもういいような気がしてきてな」
「あー、そうねぇ」
姉弟間でも変熊事件は大層なトラウマになったらしい。
「そうか、遊園地、行きたいね」
「いいなあ。私も行きたいです。……海くんも、どうですか?」
ちらりと高円寺 海の顔を伺う杜守 柚。
「……みんなで、遊園地」
「遊園地ね。たまには悪くないかもな」
ふたりで、とは言えなかった柚だが、海の返事を聞いて表情を明るくする。
「雅羅も、どう? 遊園地だって。あれ?」
隣りに立っていた筈の雅羅を探す理沙。
雅羅は想詠 瑠兎子に手を引かれ、想詠 夢悠の前に立っていた。
「バレンタインデーの時は、ごめんなさい!」
雅羅にラッピングした箱を渡す夢悠。
中身はもちろん、チョコレート。
「ああ、瑠兎子から事情は聞いたわ」
夢悠のチョコを受け取る雅羅。
「じゃあ……」
「ええ。怒ったり、不快になんか思っていないわ。それに……人の嗜好はそれぞれだし」
視線を彷徨わせ言葉を濁す雅羅。
その様子に夢悠ははっと気づく。
自分が女装したままだったことに。
「い、いやこれは僕の趣味ってわけじゃなくて……」
「あ、いた雅羅! 今度、皆で遊園地に行けたらいいねーって話してたんだけど」
「いいわね」
「え、ちょっと雅羅が行くならオレも行くー!」
夢悠の叫びを余所に、雨宮 湊も雅羅に声をかける。
「やっと挨拶できたぜ。雅羅、前に世話になったなあ。まあ、ひとつどうだ?」
「あら、ありがとう」
湊が差し出すコップを受け取ろうとした雅羅の手が止まる。
「……ってこれ、お酒?」
「チョコと合わせてウイスキーボンボンに」
「こらー、駄目でしょ!」
湊を窘める理沙。
そのまま3人で話が弾む。
「うわあオレをスルーして話を進めないでえ」
「うぅ、せっかくルカルカさんにもらったのに……」
最後の盛り上がりをみせるパーティー会場で、一人沈んでいるのは大谷地 康之。
ルカルカに書いてもらったサインが、チョコレート爆発の直撃をくらって、チョコまみれになってしまったのだ。
そんな康之にルカルカが声をかける。
「どしたの? 元気ないねえ」
「いや、何でもないです! 何の話ですか?」
「遊園地だって! また皆でこうやって遊べたらいいね!」
「また……いいッスねえ!」
「遊びに行くの?」
「どこどこ?」
次々と、会場の輪に楽しい計画と笑い声が溢れる。
チョコレートの香りの中で。
初めての方ははじめまして、もしくはこんにちは。
「アフター・バレンタイン」を執筆させていただきました、最近、チョコレートの使い方が間違っているような気がする、こみか、と申します。
チョコパーティーにご参加いただき、どうもありがとうございました。
どれも楽しいアクションで、執筆していてとても楽しかったです。
PCさんたちの会話を書くのが楽しくて、少しボリューム多めになってしまいました。
それぞれのページにPCが分散していることが多いのでご注意ください。
チョコ活用コンテストも、どれも工夫を凝らした案で素晴らしかったです。
チョコ料理がおいしそうでおいしそうで……
食べる以外の案も予想外のものが多く、本当に力作のアクションありがとうございました。
最後にちょっと遊園地のお話が出ました。
いつか、(少し先になるかとは思いますが)遊園地を舞台にしたシナリオも、できたら良いなと思います。
リアクション、少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。
またどこかでお会いする機会がありましたら、よろしくお願いいたします。