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【黒髭海賊団】名も無き島の探索を

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【黒髭海賊団】名も無き島の探索を

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 攻撃を合間を潜り抜け、火の手の上がっていない2隻へと船員たちの大半が乗り込むと、それらは入り江を出ようと動き出す。
 入り江の上空へと辿り着いた美緒たちも攻撃を仕掛けるけれど、2隻の船は止まらない。

「SRNだ。この辺りは通常の航路から大分外れているが、何かトラブルでもあったのか?」
 入り江の出入り口で待ち構えていたのは、火山の名を持つ小型飛空艇ヴォルケーノに乗り島の周りを哨戒していたグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)だ。
 フランシス・ドレーク(ふらんしす・どれーく)と共に、その船の甲板へと降り立つと、そう訊ねる。
「何でもない! ただ、水の補給のために立ち寄っただけだ」
「そうだ、もう出発するつもりなんだ。だから、退いてくれないか?」
 甲板に出ていた船員たちが、やや焦りながら答える。
 その様子を不思議そうに窺っていると、船の後方――崖の上から美緒を乗せたランスロットのレッサーワイバーンがやって来た。
「くそっ、追いつかれたかっ!」
 焦った船員たちは拳銃を引き抜くと、グロリアーナに銃口を向ける。
「命が惜しくば、退け、女!」
「そういことか」
 納得するように呟いたグロリアーナに向けて、銃弾が放たれる。
 それに対して、舞踏のような動きで回避した彼女は、サターンブレスレットを掲げた。
「くっ!?」
 侵食を受けて怯む船員たちに、相手にとって恐ろしい幻覚を見せ、更におぞましい邪気で責め立てると、機晶爆弾を甲板に向けて投げつけた。
 爆発による煙幕を目晦ましに、ドレークと共に、グロリアーナは甲板を離れると、HMS・テメレーアを潜水させて待つ、パートナーのローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)へと救援要請を出した。



「ネモソン船長」
「はっ! これより浮上する。エンジン始動! 万能戦艦『テメレーア』――発・進!」
 近くの海中に潜んでいたローザマリアは、グロリアーナからの救援要請を受け取ると、短く、ホレーショ・ネルソン(ほれーしょ・ねるそん)へと声を掛けた。
 海底2万マイルの潜水艦ノーチラス号のネモ船長にかけて、ネモソン船長と名乗るネルソンは、答えて、HMS・テメレーアを浮上させていく。



 内海の新たな海上交通の中継地点の視察に来ていた武崎 幸祐(たけざき・ゆきひろ)は、島の傍に海賊旗を掲げる船を見て、飛空巡洋戦艦グナイゼナウを寄せた。
 良く良く見れば海賊旗は、黒髭海賊団のもので、その下にヴァイシャリーの旗も掲げているのだと気付く。
「拠点建設の先遣隊がヴァイシャリーの私掠船団とは思いもしなかった……。ヴァイシャリー旗を掲げていなければ、危うく攻撃しそうな光景だな」
 苦笑しつつそう呟けば、黒髭の海賊船に向けて『航海の安全を祈る』と電文を送る。
 そうしているうちに、島の反対側から、爆破音などが聞こえてきて、急ぎ向かうことにした。



 甲板を爆発されながらも入り江の出入り口を突き進んだ2隻の海賊船の前にHMS・テメレーアが立ち塞がる。更に上空には飛空巡洋戦艦グナイゼナウが辿り着いた。

「此方は戦艦テメレーアのネモソン船長だ。直ちに戦闘行為の停止を要請する。尚、遺憾ながら受容れられぬ場合は――」
 ネルソンが海賊船に向けて降伏を勧告する。それに伴い、勧告を受け入れられない場合に、と主砲の軸線を海賊船に合わせた。
「主砲の照準を海賊船の右側に」
 それでも止まることなく、突破しようと進む海賊船に向けて警告の一撃を放つよう、ローザマリアがネルソンに告げる。
「はっ!」
 短く答えたネルソンは、海賊船の直ぐ傍に砲弾が落ちるよう、照準を船そのものから少し外して、一撃を放った。
 ドォン……と大きな音と共に、水柱が上がる。
 それでも海賊船は止まることを知らない。
「止まらないようね。容赦しなくていいみたいよ」
「第一から第四主砲塔、全自動射撃。主砲角、誤差修正。右1度、上下角3度――ファイア!」
 様子を見てローザマリアが告げる。
 それらを止めようと、ネルソンは砲塔の照準を海賊船へと合わせ、発射した。

 上空からは、幸祐の操作する飛空巡洋戦艦グナイゼナウがグレネードの照準を合わせ、発射する。
 更に、高初速滑腔砲やアサルトライフルを用いて、幸祐は次々と攻撃を仕掛けた。
「あなたたち! 観念して、お縄につくのね!」
 華麗に甲板へと降り立ちながら、蘇 妲己(そ・だっき)が告げる。
「今降伏すれば、これ以上の攻撃は行わないわ。それとも、今更降伏するのはいや?」
 小ばかにしたような態度で、妲己が訊ねる。
「うちのキャプテンが、降伏なんかするわけないだろ!」
「そーだそーだ!!」
 海賊たちの答えを聞けば、妲己はすっと扇を持つ手を上げた。
 上空の飛空巡洋戦艦グナイゼナウから伸びる砲台が後続の船に向けられる。
 そして、次々と銃撃が船を襲った。
 あっという間に、後続の船は落とされてしまう。
 その様子を不敵な笑みを浮かべて眺める妲己に対し、彼女の死角から1人の海賊が攻撃してきた。
 妲己はその攻撃を受けつつも、すぐさまハルバードを続けざまに繰り出し、攻撃し返す。
「無粋ね……」
 冷たく薙ぎ払えば、次の相手を探すように首を巡らせる。
「ターゲットを確認、殲滅を開始します!」
 船を捨て海に逃げようとする海賊たちを確認したヒルデガルド・ブリュンヒルデ(ひるでがるど・ぶりゅんひるで)は、飛空巡洋戦艦グナイゼナウから片方の船へと降り立つ。
 甲板に出てきていた海賊たちが彼女を迎え撃った。
「警告します。貴方では私は倒せません!」
 告げてから、リミッターを外した彼女は、六連ミサイルポッドからミサイルを発射させると、先ずは全体に向けて、痛みを与えた。
 続けて、機晶キャノンを構え、機晶石から放射されるエネルギーを蓄えてから発射する。エネルギーは弾丸となって、立ち向かってくる船員2人に向けて放たれ、その身を貫く。
「くっ、高々女1人に……!」
 ミサイルでの爆撃を喰らいながらも海賊は立ち上がり、倒せないと告げてくるヒルデガルドに向かって、構えた剣で斬りかかった。
 ヒルデガルドはそれを難なく交わし、機晶キャノンで反撃する。

 船を沈められ、仲間たちを倒されていく中、数機の小型飛空艇が飛び出した。
 小型飛空艇の速度は速く、あっという間に飛び去っていく。
 残され捕らえられた者たちの中には、リーダー格の者の姿はなかったため、リーダーとその傍の者たちが乗っていたのだろう。