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リアクション
七章 二人の門番 前編
刻命城のたった一つの黒き門。
その前でグレンとレインの二人の門番と契約者たちが対峙していた。
「……言葉は不要。かかって来い」
「後ろの奴と同じ気持ちなのは心底気分が悪いですけど、まあ――手加減せず一発で殺すつもりで行きますよ」
二人は交互にそう言うと、互いに心底嫌そうな表情のまま構えをとった。
軽口を叩きつつも、その二人が発する雰囲気は異質。それは百戦錬磨の強者のみが持つ、独特の雰囲気だ。
契約者たちは固唾を飲み、各々の武器を取り出す。その中で光条兵器・対戦車ライフルモードを構えた相沢 洋(あいざわ・ひろし)はパートナーの三人に作戦を伝えた。
「作戦目標は簡単だ。橋頭堡を確保するぞ。エリス、光条兵器・対戦車ライフルモードで城門に向かって撃ちまくれ。洋孝、みと、護衛を牽制。私も対戦車ライフルを使わせてもらうぞ」
「砲撃による城門破壊ですね。了解しました。光条兵器対戦車ライフルモード選択。目標、城門内部の蝶番、洋様。支援射撃お願いします。以上」
パートナーの一人であるエリス・フレイムハート(えりす・ふれいむはーと)は淡々と作戦内容を復唱すると、大型対戦車ライフル砲タイプの光条兵器の狙いを城門の一点に定める。
洋も歩兵携行型ガトリング砲の光条兵器の狙いを定め終わると、大声で叫んだ。
「目標! 城門! 撃ちまくれ! 橋頭堡を確保する! 友軍進撃路を作るぞ!」
洋とエリスが引き金を引くと共に、轟音が響く。それは開幕の狼煙。
音速で中空を切り裂き、飛翔する数多の弾丸が城門に飛来。二人の門番は門を守ろうと行動を開始。
グレンが龍の波動、レインがヘルファイアを放ち、全ての銃弾を打ち落とす。しかし、これは第一波に過ぎない。
「火砲による城門破壊は有効打となっております。継続しての攻撃を実施します。敵戦力を近づけないようにお願いします。以上」
エリスの言葉に相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)が頷き、元気良く言い放った。
「門番相手の銃撃戦ってね。イコプラ部隊! 牽制射撃! 及び神風!」
洋孝が三体の戦闘用イコプラを囮と突撃役に仕立てて、二人の門番に切り込ませる。
と、同時に継続的に放たれた洋とエリスによる数多の銃弾がまた城門に飛来。
門を守ることとイコプラの迎撃。言葉も目配せも交わさず、二人の門番は役割を分担する。
「こんなものでは足止めにもなりませんよ」
そう呟き、三体の戦闘用イコプラに向けて、人間とは思えない速度で迫ったのはグレン。
右の貫手でイコプラの首を切断。傍にいたもう一体のイコプラに、軸足で回転し強力な下段蹴りを浴びせ、両脚を刈り取り行動不能に陥れる。
少し離れた場所にいた射撃の構えをとる最後の一体にグレンは龍の波動を放つ。直撃したイコプラの胴体はひしゃげ瞬く間に動かなくなった。
「……あいつに遅れては矜持が傷つくのでな」
レインは透明の大きな魔法陣を一瞬にして展開。
封じていた魔力を解放するため、パラダイム・ロストを発動しようとしたが。
乃木坂 みと(のぎさか・みと)が氷術で作り上げた氷の弾丸を飛ばし、その行動を中断させた。
「城門破壊による進撃ルート確保ですね。ホント、ランチャーでも欲しいところです。まあ、ランチャー並の戦力なら、わらわたちでも十分ですが」
みとはそうぼやきつつ、魔法を唱える手を止めず、レインを牽制する。
その様子を見たグレンは城門を守るために、行動を行うが。
「いやー。やっぱり玩具じゃラチあかないか。じゃあ、本番といこうかなーっと。喰らえ! 五百年先の兵器フューチャー・アーティファクト!」
洋孝がビームライフルのようにフューチャー・アーティファクトを使用。連続して引き金を引き、グレンの行動を妨害した。
やがてすぐに、洋とエリスの派手な砲撃により、大きな黒い城門の一部が破壊された。それは複数人が十分に通れるほどの、大きな穴だ。
「友軍の諸君! 城門は開かれた! 進め! 進め! 進め! 門番の足止めはする!」
洋の言葉を受け、幾人かの契約者が刻命城に侵入しようと走った。
しかし、その契約者たちはレインの正確な銃撃による足止めを受け、その隙に叩き込まれたグレンの拳でもとの場所へと吹っ飛ばされた。
「あーあ、また門を壊されてしまいました。おまえのせいですよ、クソ野郎」
「……ふざけるな、通算では貴様のミスにより壊されたことが多い」
門を壊されたというのに、二人の門番はあっけらかんとした様子で変わらず契約者たちと向かい合う。
「まあ。要は門を壊されたとしても、侵入者を中にさえ入れなければいいんです」
「……その意見には悔しいが同感だ。ここからが、刻命城の門がいかに堅牢かと言われる所以」
レインの背中を突き破り、うっすらとした光の翼が生えてくる。
グレンの額から真紅の一本角が出現し、身体が一回り大きく肥大化する。
二人の姿は昔話の通り、まさに『鬼人』と『天使』。雰囲気が刺々しいものへと変わり、肌で恐怖を感じてしまうほどのものに変化する。
洋は武装をミニガンモード光条兵器に変え、楽しそうに言い放った。
「なるほど、護衛戦力は優秀だな。むしろ楽しいぞ。総員! 最大火力で叩くぞ!」
他の契約者たちが二人の門番に突撃した。
――――――――――
まず初めに、契約者たちが門番と戦うさいに重視したのは、二人を分断することだ。
一人でも強いのに、束になって戦われたら為す術がない。そう考えたうえでの作戦だった。
「……まずは、グレンを引き寄せようかねぇ」
静かにそう呟いたのはキルラス・ケイ(きるらす・けい)。
城壁に隠れながら対物ライフルを構え、身体能力と魔力を上げるために超感覚と紅の魔眼を発動。
紅に染まった瞳でスコープ越しにレインを狙い、シャープシューターで正確に頭部に照準を合わせると、一気に引き金を引いた。
「……、そこに隠れているのは誰だ?」
守護天使の種族スキルである禁猟区で銃弾を察知したレインは身体を反らし、飛来する銃弾を回避。
キルラスを見つけると、空から二丁の拳銃の狙いを合わせ、魔弾の射手で計八発の銃弾を射出した。
キルラスは全ての銃弾を銃舞で躱し、片手でライフルを構えてスナイプでレインを狙い、朱の飛沫の発動と共に発砲。
普通なら当たるはずのないその狙撃は正確な軌道を描きレインに向けて飛翔する。が、レインは同じく魔弾の射手で計八発の銃弾を放ち迎撃。
衝突した銃弾は轟々と燃え盛り、推力を失い共に地面へと落ちていった。
「ほう……俺と同じく魔銃士か。面白い」
「同じ? 俺を普通の狙撃手と一緒だと思ったら危ないさぁ」
キルラスは不敵な笑みを浮かべて挑発気味にそう言った。
レインはキルラスに向けて高速飛翔。同じ魔銃士なら、銃の差異が勝負に大きく関わってくる。
相手の得物はライフル。こちらの得物は二丁の拳銃。速射性能に勝るのなら近づくまで、とレインは判断したからだった。
キルラスは片手でライフルを構えたまま、スナイプで狙い撃つ。が、ことごとく銃舞で避けられ、地面に降り立ちキルラスに接近したころ。
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