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新入生とパートナーには友達が少ない?

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新入生とパートナーには友達が少ない?

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「次は……アントゥルースか」
 アキレウスが指名すると、ラルクは首を横に振った。
「ああ、この流れでわりぃが俺はいい。パートナーも連れてきてねぇしな。どうせ話すなら、アイツらを連れてる時がいいな」
「そうか、じゃあ……」
 ラルクの断りを受け、アキレウス視線を巡らす。
「次はあたしだね!」
 練が乗り出す。
「ひーさんを最初に見たときは、正直、幽霊か変質者だと思ったな!」
 カラカラと笑いながら、練は語り出した。
「日本のとある場所に、私の両親が経営する工房――木賊修理工房――っていうのがあってね。代々家族全員が整備士をやってるんだけど、結構腕は信頼されているみたいで、各地から修理の依頼が殺到していたの。でも、その日は珍しく暇だったから、自分の小型飛行機を整備していたんだけど、その時、ぼやっと光った侍が侵入してきたの! 時代劇の撮影? とか思ってポカンとしていたら侍が話しかけてきてね」
「私は当時、マホロバで特殊部隊の訓練を受けていた筈だったのですが、気がついたら見知らぬ場所にいたのです。今思い返せば、封印されていたことに気付いていなかったのでしょうね。それで、体は薄ぼんやりと光っていますし感覚もないしで、とにかく人目に付かない所へ、と飛び込んだところが木賊殿の工房だったのです。まだ幼いおなごでしたが、どこか貫禄があるように思えて。衝動に駆られて契約を請うよりも早く、私は飛行機へと誘われたのです」
 練の言葉を引き継ぐようにして、秘色は当時のことが衝撃的な記憶だったと思い出を引き出した。
「練ちゃんたちの出会いって、不思議なんだね」
「うーん、そうかもね。そういう葛はどうだったの?」
 葛に問い返す練。
 葛は思い出すように、空を見つめる。
「ボクがダイアと出会ったのは、お母さんを探してた時かな。お父さんが、お母さんはお空に浮かぶ島にいるっていってたから、お父さんの大事にしてたロケットを持って、長さんに空京まで連れて行ってもらったんだ。ダイアと出会ったのは空京の外れ。モヒカンの人達? に絡まれて居る時に助けてくれたの。男の人の頭より高く跳んで、素早く動いて……すごく格好良かったんだ! それに綺麗だった! しっぽとお耳がもふもふで気持ちよかった♪ ずっとダイアにひっついて帰りたくないって泣いてたら、背中に乗せて公園に連れて行ってくれたの。
ボク、ずっと大きなわんわんを飼いたかったの。日本ではお父さん忙しくてずっと一人だったから」
「葛は私の事、未だに大きな犬だと思っているのね」
 ダイアは苦笑する。
「葛の事は、執事さんと相談して私が面倒をみて一緒に母親を探すことになったの。私は昔、娘を亡くしていてね。事故だったのだけど、私がちゃんと見ていなかったせいだと、ずっと自分を責めていたわ。そんな時に葛と出会った。どこか娘に似ていて、放って置けなくなったのでしょうね。それもあるのでしょうけれど、私はもう二度と失くさないと誓ったわ。何かがあったら、私の命を掛けて守るわ」
「ダイア……」
 気持ちが温かくなるのを感じながら、葛は今度はヴァルベリトとの出会いを回想する。
「う゛ぁるは……」
「俺とかずらとの出会いは、蒼空壮っていうボロ寮だな」
 口を挟み、ヴァルベリトが記憶を語る。
「確かすげえお宝があるとかで忍び込んだんだけど。寮って言うか巨大迷路お化け屋敷みたいなところでよ。最初に出会ったのがばかずらだったわけ。泣きながら抱きついてくるし、どきっとし……じゃなかった。迷惑だったけど一緒に行ってやる事にしたんだよ。でも、やっと外に出られたと思ったら、おばさんにいきなり頭噛まれるしよー。あれは散々だったぜ」
 失言にちょっと顔を赤らめながら、ヴァルベリトは回想を終えた。


「皆さん、やはりそれぞれの出会いをしているんですのね」
「それが今日この場で聞けたのは、何よりの事だと思うぜ」
 茶会もそろそろ終わりに近付き、アルセーネとアキレウスはそれぞれに感想を述べていく。
「そうそう。せっかくこうして皆さんが集まったのですから、何か聞きたいこととかあったら……」
「それじゃ、遠慮なく。俺から皆に聞きたいことがあるんだが」
 アルセーネの案に、ラルクが立ち上がる。
「ちょっと鍛えるのに良い場所の情報とか欲しくてな。って、訊くだけじゃ駄目だよな。俺からもお勧めスポットを話すとするぜ。そうだなー。キマクのアトラスの傷跡の近くに秘湯があるのを知ってるか? その近くがいい修行場でよー筋肉を鍛えるには最高だぜ! なんせ、修行の後には温泉に浸かり放題だしなー。ただ、まあ難点なのが混浴でよ。……と、まあ、こんな感じでお勧めの場所を教えて欲しいんだが」
 ラルクの言葉に、考え込む面々。
 アキレウスが何かを言おうとした所で、それをひとつの声が遮った。
「お勧めの場所と言うたら、我が妬み隊や! 自分等、妬み隊に入ってみぃひんか!?」
「あーあー」
 お茶会席に飛び込んできたのは瀬山 裕輝(せやま・ひろき)。やってしまったとでも言う様に、呆れた顔をしたパートナー鬼久保 偲(おにくぼ・しのぶ)も現れる。
「何で私も手伝わにゃいかんのだね」
 溜息を吐き、偲はやる気がなさそうな様子。
 しかし、それを無視して裕輝はアピールを続ける。
「蒼空は関係ない。どんな学校所属でも、関係ない。種族も、勿論関係ない。モテている奴を怨んだりするモテない人や、貧乳やチビが巨乳や高身長を妬む、そんな感じの妬み恨み辛みを持っているだけでいい……。それだけでいいんや! どやっ! 興味を持つやろ!?」
「妬み隊……」
 アルセーネが理解しようと呟く。
 雲行きが微妙なことを察してか、アキレウスが二人に席を勧めた。
「それよりも今は茶会の席なんだ。丁度良い。自分らの馴れ初め話も聞かせてくれないか?」
「馴れ初め……」
 裕輝は少し考えてみるも、
「知らん。全っ然知らん。知ってても知らん。つーか、とっとと去ねばいいと思っとるわ」
「正直、思い出したくない。記憶から抹消したい。というか、コイツ早く死ねばいいのに」
 お互いに険悪な雰囲気を醸し、視界に入れまいとそっぽを向く。
「……ちぇ、誰も勧誘に引っかからんなら、ここに長く居るんも無駄やな」
 しばらく反応がない周囲を見て、裕輝は踵を返す。
「ほんなら、気が変わったらいつでも入隊希望しに来てくれな。歓迎するでー」
 ひらひらと手を振って去って行く裕輝。
「ああ! ちょっと、待ちなさい!」
 置いていかれまいと、偲は慌てて後を追った。
 後には、嵐が去ったような、そんな空気が残ったのみだった。




「ああ、東雲! 大丈夫!? ちゃんと歌える!? ずっと入退院を繰り返してた病弱虚弱体質だから、倒れちゃわないか心配だよ!」
「大丈夫だよ。いっぱい休んだし。それに、俺にはこれ位しか出来ないしね」
 お茶会も終わりを迎える時間。
 東雲は今日のお礼をしたいと言い、歌いたいと申し出た。
「それじゃあ、いくよ」



 深く息を吸い込み、旋律を紡ぎ出す。
 賑やかで温かだった席は、澄んだ歌声に包まれ締め括られた。