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リアクション
ルーン召喚術式で呼び出された麒麟、カグヅチ、オーズがモヒカンたちを相手に暴れていた。
雷を身に纏う麒麟がレーザーを放ち、前方の敵を薙ぎ払う。
火を纏ったカグヅチは、灼熱の炎を周囲に振り撒き、哀れなモヒカンを燃やしていく。
逃げ出す敵にはオーズの冷気が動きを鈍らせ、衛の魔法がさく裂する。
「カッカッカッ! モヒカンの分際でなかなか粘るではないか。だが、それもどこまでもつか見ものじゃのう」
衛は先頭に立ち、じわりじわりとモヒカンたちを威圧しながら魔法を放っている。
想定外の爆発により、予定していた奇襲ができなくなったため、衛はリブロたちと合流して制圧に当たっていた。
衛の左右ではメイスンと妖蛆がモヒカンたちを恐怖に陥れ、ゆっくりと、だが確実に進行していた。
「真っ二つになりたい奴はだーれじゃあ」
離れていても届く剣圧にモヒカンたちがたじろぐ。
持ち主の身長を遥かに超える長さの機甲砲剣ブリューナグを振り回すメイスンに、誰も近づくことすらできないでいた。
空から襲い掛かるモヒカンも居たが、機晶レーザー砲モードに移行したブリューナグのレーザーで叩き落とされてしまう。
「ヒャッハア……ア……」
ならば、と妖蛆に攻撃を仕掛けたモヒカンは、睨まれた瞬間にガクガクと震えだし、棒立ちのまま倒されていく。
「簡単に触れさせるほど、わたくしは安くありませんわ」
艶やかに笑う妖蛆は、衛の死角をカバーするように、恐怖と魔法をまき散らしていった。
「賊徒らに血の粛清をっ! 我らに正義と栄光をグローリアっ!」
すぐ後ろではリブロが凛とした声で叫んでいた。
レノアと並び、間断なく銃を撃ち続けている。
制圧が進み、村の南西にある広場を占拠すると、モヒカンたちの抵抗が弱まった。
リブロはまだ意識のある負傷したモヒカンを起こすと片膝を着き、額に銃を突きつける。
「さて、お前には種モミと強制労働させている村人の在処を吐いてもらうとしよう」
「し、しらねえ、オレはしらねえんだよ! いのちだけはたすけてくれええ」
後ずさりながら首を振るモヒカンに、リブロは冷徹な目を向ける。
そして何も言わずに見える位置で撃鉄を起こす。
「ほ、ほんとうだ! オレはべつのむらからきたからわからねえんだ。しんじてくれよぅ」
トリガーを引く指に力を込めたとき、後ろから衛の声がかかる。
「カッカッカッ、そいつの言葉はたぶん本当じゃろうな。グナイゼナウから来た情報によれば、運悪く他のモヒカン村の連中も集まっているらしい。別のモヒカンを探した方が早そうじゃのう」
「なるほど……」
納得した顔で立ち上がるリブロの様子に、安堵したモヒカンがため息をつく。
だが、別の銃口が突きつけられていることに気付くと、今まで以上にぶるぶると震えだした。
「おまえは今までに、罪の無い村人を何人殺してきた? 五人以下か? それ以上か? 数によっては助けてやる」
レノアは銃を構えたまま、モヒカンに問いかける。
モヒカンはぶるぶると震えながら、右手の指を一本一本折って数え、左手の指も折ろうとしたところではっと顔を上げた。
「よ、よにんかな?」
モヒカンが汗だくの笑顔でそう答えた瞬間、レノアの手から銃声が響く。
不思議そうな表情で頭を撃ち抜かれたモヒカンは、後ろに倒れたまま動かなくなった。
「こうなるともう哀れよね。なぜ自分が撃たれたのか最後まで分からなかったんでしょう」
リブロたちに追いつき、途中から見ていたセフィーが口にする。
そのとき、頭上で連続した爆発が起きた。
複数のモヒカンイコンが爆散し、燃え尽きていく。
「あ、そうだ。ここへ来る途中、あたしたち以外にモヒカンと戦ってる人を見たわよ」
セフィーが思い出したように話し始めた。
村の中央入り口から西側のこの場所まで来る途中に、東の方で交戦している姿を目撃したという。
どんな人が戦っているのか、興味が湧いて近寄ってみれば……。
「セレンフィリティとセレアナだったのよ。何故かビキニとレオタードだけの恰好で、色っぽく戦ってたわ」
「そういえばセフィー、あの時何か妙なことをしてましたよね?」
エリザベータがずっと不思議に思っていた光景だった。
セフィーとセレンフィリティは、声も出さずに互いを見ながら、謎のジェスチャーをしていたのである。
「ああ、あれね。形の良い綺麗な胸だなって見ていたら、こちらを見て、両胸を持ち上げるようにポインポインってしてきたのよ。だから同じようにやり返してみただけ」
それを聞いたオルフィナが呆れた顔をする。
「俺はてっきり夜のお誘いの合図かと思ったよ。ま、シュールな笑いはあったけどさ」
オルフィナは思い出し笑いをしながらセフィーの肩を叩いた。
「皆さん、人質と種モミの場所がわかりました」
そこへ、ヒルデガルドがセフィーたちを呼びに来た。
◇
周囲を警戒しつつ、皆は通信機の周りに集まっていた。
『現在、人質と種モミは村の北西、ちょうどそこから北に行ったところにある貯蔵庫に入れられているらしいです。しかし、厄介なことにモヒカンのイコンたちが防衛体制をとっています』
「わしとメイスンなら、一体ずつのイコンを相手できるが、それ以上の数があると厳しいじゃろう」
通信機から聞こえる幸祐の言葉に、衛は顎に手を当てて眉を顰める。
『そこはもう話をつけてあります。上をご覧ください』
リブロが夜空を見上げると、皆をを守るように待機しているソルティミラージュとアルテミスの姿があった。
先ほどまで、巧みに連携した動きでモヒカンイコンを撃墜させていた二機だと気付く。
『さらにはE.L.A.E.N.A.I.にも支援狙撃をお願いしてあります』
「ならさっさと回収しちまおうぜ、モヒカンたちが体勢を立て直す前にさ」
オルフィナが焚きつけると幸祐が言葉を濁した。
『それなんですが……通信回線を追加しました。直接皆さんに聞いてもらった方が良いかと思います。どうぞ』
『ソルティミラージュの壬 ハルです。種モミについて、皆さんに提案したいことがあって通信しています。
難しいこと抜きにして言うと、種モミを皆で分け合いませんか? という提案だよ。
今回の件でモヒカンたちが懲りたなら、心を入れ替えてもらおうと思う。
それで、種モミの栽培技術を貧しい村の人達に提供して、米のブランド化!
ヒャッハーじゃなくて、お米による皆の為の市場侵略をする事を提案するよ!
折角良い技術を持ってるんだもん……どうせなら、皆が幸せになれる侵略をした方がいいよね!
種モミを強奪するのって、結局やってることはモヒカンと同じなんだもん。
やられたらやりかえすっていう気持ちは分かるけど、そんな事繰り返してたらいつか皆死んじゃうよ』
ハルの提案に、皆は黙ったままだった。
互いに顔色をうかがうが、誰も口を開こうとしない。
『俺は……この提案を受けようと思います』
通信機から幸祐の声が聞こえてくる。
『種モミの技術はモヒカンが持っています。
農作業というものは、無理に締め上げて聞き出しても、口頭だけの情報でどうにかなるものではありません。田植えから収穫、加工までの間に、適宜な助言が必要となるでしょう。
種モミだけを手に入れても、ちゃんと育つかは賭けになると思います。失敗したら俺たちの働きも無駄になってしまう。
だからこそ、この提案は悪くないと思いました』
幸祐の説明に、皆が納得して頷く。
リブロも幸祐が言うなら、と了承する。
だが、
「それならばなおのこと、賊徒どもには改心したくなるぐらい恐怖を味わってもらうとしよう」
と艶やかに笑うのだった。
◇
蒼木屋では、モヒカン村襲撃に参加した全員を集めての、ささやかな宴会が行われていた。
モヒカンたちを降伏させ、無事に技術提携が結ばれたお祝いでもある。
「はい、お待たせしました〜」
店員が運んできたのはまっ白いおにぎりにたくあん。
皆ががっかりしてブーイングする様子に、人差し指をちっちっち、と振る。
「文句は食べてから言ってくださいね! さあ、食べて食べて!」
一口食べただけで、これは違う、と感じるおにぎりだった。
製法に秘密が……いや、そうじゃない、もっと根本的な。
「店員さん、まさかこのお米は!?」
「はい、そのまさかです。このお米は皆さんが苦労して手に入れた種モミを分けてもらい、炊いたものなんです」
なるほど、村人たちが必死になる気持ちも分かる気がする。
あの戦闘は無益じゃなかった、と皆が感じていた。
こんなにも美味しいお米が食べられたのだから。
「ちなみに蒼木屋では、この種モミを使ったお米の契約を格安で結びました! これで益々評判アップですよ!」
どうやら一番得をしたのは蒼木屋なのかもしれません。
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