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【神劇の旋律】三姉妹怪盗団、参上!

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【神劇の旋律】三姉妹怪盗団、参上!
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第12章 判明

「そうだな、僕があいつなら、贋作を売りつけるか空売りか……とりあえず宝物庫か私室あたりを探ってみようか」
「なるほど、凶司にしては珍しくマトモな意見ね」
「おっけー。だったらこっちだねぇ」
 湯上 凶司からの遠隔指揮を受け、怪盗騒ぎの混乱に乗じて動き出したのはエクス・ネフィリム、ディミーア・ネフィリム、セラフ・ネフィリムら、ネフィリム三姉妹。
「トレーネさんたちは、追われてるみたいだね。ちょっと気になるけど、ボクたちはボクたちのやることをがんばろう」
 小さくガッツポーズを作るエクス。
 ディミーアは凶司からの連絡をチェックし、セラフはディミーアからの連絡を受け、行き先を正確に示している。
「さっきまで富豪のおじさんとお話してたからねぇ。このお屋敷、すっごい広くて迷っちゃいそうって言ったら、丁寧に通路や間取りを教えてくれたわぁ」
「す、すごい、いつの間に……」
「さすがセラフ姉さんね」
 ひとまず私室を目指すことにした3人。
 セラフの記憶を頼りに、廊下を進んで行く。
「おっと」
「わわっ」
 曲がり角で、二人組とぶつかりそうになる。
 一瞬身構えるが、相手を見て警戒を解く。
 カレン・クレスティアとジュレール・リーヴェンディ。
 セラフは、カレンの獣耳眼鏡のメイド姿に見覚えがあった。
 セラフと同じく、富豪に取り入って情報を得ようとしていた一人だ。
「もしかしてぇ、あなたたちも狙いは同じかしらぁ?」
「えっと、君たちも、悪徳商人のしっぽを掴むために?」
「ならば話は早い。我らも同行させてもらおうか」
「あ、あの、私もお願いします!」
 カレンの後ろから顔を出したのは、ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)
 彼女もまた、ミニスカメイド服。
「ティンパニにサイコメトリを使用して、なんとなく分かったんです。富豪さんは、色々酷い方法でティンパニをお金儲けに利用してるんだって。だから……」
「よし、こうなったら一刻も無駄にはできないわ。行きましょう!」
「ついて来てねぇ」
 セラフの後を、5人の探索者が追う。

 私室には、先客がいた。
「おや、遅かったですね」
「お先に調査させていただきました」
 ディミーアが鍵のかかっていない私室の扉を開けると、そこには書類を持った戦部 小次郎とリース・バーロットがいた。
「ええと……御同輩?」
「ええ。富豪の犯罪に目をつけた私達は、ティンパニ警備の合間にここを調査していたのです。色々、面白い物が見つかりましたよ」
 ほら、とプリントアウトされた紙をディミーアたちに渡す小次郎。
「帳簿……見た所、何も問題ないようだけど」
「それだけならね。同じものが、こちらにもあるのです」
 首を傾げるカレンに、更に小次郎が出したのは、手書きの紙。
 そこには、各種名品の贋作を扱った売買の軌跡が記されていた。
「裏帳簿……!」
 息を飲むベアトリーチェ。
 驚く面々を前に、小次郎は更ににやりと笑う。
「もっと良いものを見せてあげましょう。……お願いします」
「はい!」
 小次郎の声に、ぱっと立ち上がったリース。
 本棚に手をかけると、ぐぐぐっと押してみる。
 大きな本棚は意外な程簡単に移動し、そこに現れたのは……
「隠し部屋!?」
「驚くのはまだ早いですよ」
 小次郎の案内で降りてみる面々。
「わぁ……」
「うわー」
「あらあらぁ」
 その中には、ストラトス・ティンパニのレプリカが沢山積まれていた。
 中には「売約済み。クロウディア様」と書いたものまで。
「これは酷い。教導団の人たちに知らせれば、すごくやりがいのある仕事が出来そうだね」
「そうですね。今なら、怪盗騒ぎのどさくさに紛れて偶然発見という形を取ることができます」
「でも、ここって私室の、しかも隠し部屋だよね。どうやって……」
「こうしましょう」
 エクスの言葉に、小次郎は平然と何かを取り出した。
 ライターだ。
「えっ、何を……」
 証拠書類を避け、不必要な書類に軽く火をつける。
 そして、大声で。
「たいへんだー、火事だー(棒読み)!」

   ◇ ◇ ◇

「今、火事って声が聞こえたような……」
「それどころじゃないでしょ!」
「さすがに、そろそろ限界ですね……」
 志方 綾乃に追いかけられている白波 理沙ら3人。
 綾乃は時折危険な攻撃をレオンに止められてはいたが、容赦なく3人を追い詰めていく。
 この先は行き止まり、もう駄目かと思ったその時。
 がぼっ。
 壁が、壊れた。
 壁を蹴って出てきたのは、ベアトリーチェから連絡を受けた小鳥遊 美羽。
「あ……」
 チェルシー・ニールは思わず声を出しそうになって、慌てて口を押えた。
 美羽の肩には、チョコ・クリスが乗っていた。
「新たな賊かか!」
「それどころじゃないよ! 大変なことが分かったんだ!」
 構える綾乃とレオンに、美羽は大慌てといった様子でくってかかる。
「いいから、ついて来て!」
「しかしまだ犯罪者の粛清が!」
「早く早く!」
 綾乃とレオンの手を取り引っ張る美羽。
 その勢いにつられ、ついて行く二人。
 美羽の行き先は、富豪の私室……隠し部屋だった。

 富豪の犯罪が明るみに出て全てが判明した後、美羽は澄ましてこう宣言した。
「今回の予告状騒ぎは……この富豪さんの犯罪を暴くための狂言でした!」