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「で、あなた方はどうするんですか?」

 長老の家に残った東と鉄心がドワーフたちに声をかける。

「いい機会だと俺は思いますがね。このまま大人しく死ぬのを待っているなんてバカらしすぎる。地上には他のドワーフの一族だっているし、交流だってありますよ。彼らはここの若いドワーフのように好奇心に溢れている」
「朱鷺も……そう思います」

 鉄心と顔を見合わせて、大人しく話を聞いていた東もゆっくりと口を開いた。

「あなたたちの技術に関係なしに、地上は騒乱に満ちています。そして今この地下でも大変な事態が起きようとしている……。騒乱を回避するという目的は立派ですが、事は既に起きています。ならば次の世代を担う若者たち、そしてあなたたち自身が生き残り、後世へと技術を、知識を、言い伝えを残す事を目指すべきではないですか?」

 ドワーフたちは言葉につまった様子でお互いの顔をちらりと見合っている。

「言い伝え――先祖の教えを守る事はいい事だと時は考えます。ですがそれに固執し、その結果全てを絶やしてしまっては、果たして今まで言い伝えを守ってきた意味はあるのでしょうか?」

「でも、我々の力では到底叶わない相手をどうすればいいというのだ」

 ぐっと握り締められた拳から、自分たちの力だけでどうしようもないという悔しさが伝わってくる。
 でも、一人じゃない。
 これもきっと何かの縁なのだ。
 起こるべくして起こった必然、きっとそうなのだ。

「大丈夫。朱鷺が、そして地上の者たちがここに居るではないですか」

 ずっと苦い顔をしていた長老だったが東の言葉に顔を上げ、ドラゴンを倒す手助けをしてほしいと頭を下げた。

「そうと決まったらこの騒乱を終わらせよう。俺たちを助けてくれた恩人のためにもな」

 東と鉄心の言葉を聞いて、わっと他のドワーフたちから声が上がった。


「私たちはこっちの棚をを調べますね」
「ティー、わたくしたちはこっちを探しましょう!」
「それじゃあ私はこっちの文献を見てみます」

 エースとメシエの呼びかけでモールドラゴンについて何か資料が残っていないかと書庫へとやってきたニケ、ティー、イコナ、リース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)
 資料棚に積もったほこりをふぅと息を吹きかけて飛ばす。
 リースは眼鏡の位置を指で直しながら棚に並べられた資料を見つめる。
 狭い書庫の中で棚いっぱいにぎっしりとつめられた本や資料の中からドラゴンについて書かれたものがあるのだろうかと一瞬不安になった。
 けれどもその迷いを断ち切るように頭を左右に振って、司書のケープをきゅっと握り締め一番端の資料に手を伸ばしたのだった。