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終身名誉魔法少女豊美ちゃん! 4(終)『ありがとう、母さん』

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終身名誉魔法少女豊美ちゃん! 4(終)『ありがとう、母さん』

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『二人の強敵(とも)と、二人の従者』

●イルミンスール:校長室

「カンナ、あなたも随分と間が悪いですねぇ。たまたまイルミンスールに来ていた所に襲われるなんて」
「まったくだわ。つくづくイルミンスールとは縁深いわ。まだ私が校長やってた頃から、あなたとはしょっちゅう競っていたわね」
「確かに、そんなこともありましたねぇ」

 校長室で顔を揃える、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)。二人の傍にはそれぞれ、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)から護衛を頼まれたエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)神代 明日香(かみしろ・あすか)が控えていた。『メイシュロット+』への移動を希望する契約者をテレポートで送り届けたエリザベートは、後のことを契約者に任せて(実際は戦いが終わった後にやるべきことがあるのだが)、こうして環菜と世間話を交わしていたのだった。
「そうそう、さっきの、面白かったですよぅ。あなたの慌てぶり、是非とも残しておきたかったですぅ」
「あ、あれは……! 陽太がいけないのよ、あんな所で……
 エリザベートにツッコまれて、環菜が顔を赤らめる。さっきのとエリザベートが言うのは、陽太がノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)御神楽 舞花(みかぐら・まいか)と合流して、メイシュロット+に向かう直前の話。

「環菜、僕は僕に出来る事をして、そして必ず帰って来ます。絶対、約束します。
 僕は確かに駄目人間かもしれません。けれど、それでも成長していること、何か出来るってことを、証明してみせます」
「……あなたは駄目人間なんかじゃないわ。何せ、私が一生のパートナーとして選んだ男なのよ?
 行ってきなさい、そして、帰ってきなさい。私はここで、あなたの帰りを待っているわ」

 そうして互いの温もりを交換し合っていた所に、テレポートでやって来たエリザベートと鉢合わせたのであった。……ちなみにからかうエリザベートもエリザベートで、くっついて離れない明日香にまんざらでもない様子だったのだが。
「……まさかこうなるなんて、思いもしなかったけど。パラミタに来て、失ったものは数え切れないほどあった。でも代わりに得たものもやっぱり数え切れないほどある。……惜しいのは、もうあなたと張り合うことが出来ないことかしらね。私はもう、普通の女だから」
 どこか淋しそうに呟く環菜、浮かべた憂いを帯びた表情は、しかし次のエリザベートの言葉に砕かれる。
「あなたが力を無くしても、私のライバルであることに変わりはありませぇん」
「え……」
 向けた視界にエリザベートの顔が映る、その顔はどこか、大人びて環菜には見えた。
「私にも色々ありました、もう何もかもやめてしまおうって思ったこともありました。
 でも、今でも私は変わらず、皆さんの『校長』として居ますぅ。きっとあなたとの関係も、変わってはいけないものだと思うんですぅ」
 エリザベートの言葉に、環菜は笑い出したい気分になる。たかだか十年と生きてない子供が、何をマセたことを口にしているのかと。
「……そう。ありがとう」
「どういたしましてですぅ」
 でもそれ以上に、かけられた言葉が嬉しくて、環菜は素直に礼を口にする。エリザベートも変に奢ることなく受ける。二人の様子に、エリシアと明日香も和やかな気持ちになる。

『――――!!』

 しかしその和やかな雰囲気は、蹴破られた扉の音によって霧散する。もちろん、そんな無礼を働いた魔族の辿った末路はといえば、エリシアと明日香がほぼ同時に抜いた魔導銃の餌食であった。
「ノックもなしに入ってくるなんて、無粋ですわね」
「礼儀はわきまえてくださいね。……わきまえても撃ちますけど」
 扉の奥になおも複数の魔族の気配を悟った二人が、ちらり、とそれぞれが護るべき対象を見る。
「行ってきなさい。私はエリザベートに護ってもらうから」
「勝手に当てにしないでほしいですねぇ。しょうがないから護ってやりますよぅ。
 アスカ、後で一緒の布団で眠るですぅ」
「はーい♪」
 許しを得た二人が、迎撃のため扉を抜け、扉を閉める。仲間がやられ、突入を躊躇していた魔族は、現れたのがか弱げな少女二人であるのを見ると途端に勢いづき、扉を突破しようと迫る。
「陽太に強く頼まれましたものね。務めを果たさせていただきますわ」
 エリシアが銃を乱射し、近付いてくる魔族を片端から撃ち抜いていく。全然か弱くなかったと思い至った魔族が、ならばと標的を明日香に切り替えるが、それは致命的な誤りだった。
「此処から先は通行止めです。どうしても通りたいのであれば……」
 まずはこれを突破して来い、そう言わんばかりに召喚した兵団を襲わせる明日香。大抵の魔族は彼らにより退けられるが、中には他の魔族を犠牲にして自分だけは兵団の群れを突破し、明日香に迫る魔族もいるにはいた。
「エリザベートちゃんエネルギータンク、略して『EE缶』の貯蓄は十分です。使い切ったとしても補給の用意も出来てます。
 となれば……」
 明日香が銃を構える、そこから放たれた魔力の奔流は、明らかに砲身と釣り合わない極太のものだった。当然、直撃を受けた魔族の身体が残るはずもない。
「イルミンスールには、メイドのような恐ろしいナニカがいるんですよ♪」
 慌てて後退する魔族の背中を見送り、明日香がふふ、と微笑む――。