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リアクション
第8章 大雨・落雷・突風…ときどき…ヒトが玩具にされるでしょう? Story4
「猫又さんはここへ逃げ込んだんですか?」
銭湯の出入口の近くで待機している淵に、舞花が声をかけた。
「あぁ、そうだ。女湯にいってしまったらしく、俺は入れないんだ…」
「そうですか…。もし出てきたら、ご飯を炊いている方のところへ誘導してください」
「了解した」
「あたしたちも突入するよ、ひーちゃん」
「殿方が入れないエリアに逃げ込むとは思いませんでした…」
舞花に続き練と秘色たちも突撃する。
「猫又ちゃん、ここにいるんですか?」
「うん、そうだよ」
「イライラしていることを話さないままでいると、もっとイライラしちゃうと思うんですよね。そこで私は、お酒を飲みながら話を聞こうと考えたんです。私と一緒に飲みましょう、猫又ちゃんーっ」
サクラコは店で購入した酒瓶を抱え、女湯に駆け込んでいく。
「―…僕たちは、ここで待ってよう」
「まー、女装しても許される場所じゃねーしな」
外見・実際の性別が両方男子なヤツが、女装してまで侵入したら、きっとその者は英雄になれるだろう。
ただし、バレたら砂袋の刑が待っている。
「リンちゃん…、さすがにここは入れないな」
「うん、カズちゃんが変態になっちゃうよ」
「げっ…、面倒な場所に逃げ込んだな…」
「陣くん、入っちゃいけないからね。興味があっても入ったら、ヘェー…ンタイッて皆に言われるよ」
「なんやその、へぇー…んしんっ!みたいな言い方!!オレが女湯行ったら、フツーに逮捕されるっつーの」
「(にゃにゃー…超感覚するとにゃんだかアイツの気持ちが分かってくるんじゃないかとも思ったが、意外にそうでもないにゃ!)」
猫又をまだ目撃していない柳玄 氷藍(りゅうげん・ひょうらん)は、しょんぼりとする。
「(とはいっても、片方がチヤホヤされてたら嫌な気持ちになるのは万人、万猫、万妖怪共通の感情だと思うのにゃ…)」
手作りの和菓子を食べてもらおうと、団子を積めた入れ物を抱えて女湯に入る。
「(ふぅん、本当に妖怪っているもんなんだねぇ)」
まだ姿を見ては入ないが目撃者たちはいるのだから、やっぱりいるのか…。
皇 玉藻(すめらぎ・たまも)も女湯のエリアに入ると思いきや…。
「ねぇねぇそこのお兄さん、彼女とかいる?」
「ぇ…お兄さんって俺?」
若く見られた一は、ズゥーーーン…とへこむ。
「どこから見てもそうじゃない?」
「カズちゃんはね、オジサマなの!」
「おじ…って、そんな年っ!?(見た目だけじゃ分からないね…)」
もう少し若い男はいないか、玉藻は辺りを探す。
だが、既に恋人がいるリア充に声をかけ、“ごめんなさい”と言われるのは避けたい…。
「(この人は好きな人がいそうだし…、こっちは恋人がいそうね…)」
「玉藻は女湯に行かないのか?」
猫又を説得するんじゃないのか?と漆羽 丁(うるばね・ひのと)が玉藻に言う。
「私はここで待ってるよ…」
「ふむ、そのほうがよいだろうな。さて、氷藍は少しでも説得出来ているのだろうか」
その氷藍は…。
「片方だけちやほやされたんじゃ、そりゃ怒るにゃ。ほら、俺の一押しの団子だぞ、遠慮せずに食うといいにゃ」
団子を持ちながら歩いているが、猫又は姿を現さない。
「でも外には美味しいものがもっといっぱいあるんだぞ?こんな所で顔洗ってるばっかりだと、他の美味しいものには中々ありつけんのにゃ」
それでも警戒しているせいか、御影と一緒に物陰に隠れたまま、返事を返さない。
「その辺で買った団子じゃないぞ、俺の手作りにゃ!食べて期限直すにゃ。…にゃにゃ!?団子がにゃいっ」
目にも留まらない早さで、手に持っている団子を持っていかれてしまう。
「逃がさないわよ♪ルカと遊ぼう」
逃走する猫又の気をひこうと、風呂桶を床に滑らせる。
「にゃ!?にゃぅうう…」
「猫又ちゃん、捕まっちゃうにゃ」
「―…っ!逃げるのにゃ、みかげにゃん」
「んー、惜しいっ」
風呂場から出た猫又を追いかけるが、小さな身体に指先が触れただけだった。
「団子だけ奪ってしまうとは…。猫又ちゃんの怒りは、それほどすごいものなんですねっ」
ここはやはり…腹を割って話すべきだとサクラコも追いかける。
「来ましたね…」
ダンボール箱の中に舞花は、ネズミの尻尾の先をぎゅっと押し、空気圧で飛び跳ねさせる。
「みかげにゃん、玩具だにゃっ」
「にゃー!」
箱の中に隠れながら移動する舞花を追いかける。
「ぬこ娘が、こっちに来るみたいや」
ペンダントの中の宝石が輝き、出入口へ接近する猫又の気配を陣が探知する。
「玩具ーっ」
「きゃっ!?」
少女の姿になった猫又に、舞花が作ったネズミの玩具が奪われてしまう。
「お団子うまうまにゃ。みかげにゃんも食べるかにゃ?」
「もらうにゃ。もぐもぐ…おいしー!」
「この玩具、尻尾の先を握ると、すごーく跳ねるみたいにゃ」
2匹は奪った団子を食べ、強奪した玩具で遊びながら手をつないで走る。
「仲間が増えるとかアリなんかっ!?」
「おじちゃんなんかに捕まらないにゃー」
「―…おじ…!?オレはそんな年やないっ」
座敷わらしだけでなく、猫又にはまでおじさんと呼ばれた陣は、心に深いダメージを受けてしまった。
「おじちゃんと呼ばれるのは、悪いことじゃないぞ」
「ちょ…一緒にすんなやっ」
「ふぅーんだ。見たままを言っただけにゃー」
「おげっ。なんでオレのところだけ、雨量はんぱないんや!?」
顔洗った猫又に集中豪雨をくらう。
「天の炎をぶっぱして雨粒を全部蒸発させたるわ」
空から火柱が陣を囲むように落ち、彼の周りだけ雨を蒸発させるが…。
すぐに新たな雨雲が発生し、大雨を降らせる。
「にゃははっ、やっぱり雨は陣くんの天敵だね」
「やっぱ雨は苦手や…」
大嵐と聞いて予想はしていたが、どうしても雨には勝てないようだ。
「猫又ちゃん、新しい玩具があるにゃ」
「ゲットするにゃ」
一の背に乗っているリンが、動かしている自走式チューチューもどきを狙う。
「ああ…幼女が戯れている…ああ後ろを見たい、見たいっ!」
「カズちゃんはガンバって走るの!中途半端な走りだと来るものも来ないのっ!!」
また暴走しようとする一の額をぱしぱし叩き、ハチマキを引っ張ってお仕置きする。
「…真面目に走ります、はい…」
すぐそこまで迫っている幼女の姿を見れず、しょんぼりとする。
「追いつかれちゃうの!」
このままではご飯のところへ誘う前に奪われてしまう。
リンはリンリンまきびしもどきを投げる。
「なんか飛んできたにゃ!」
「にゃー、リンリン音が鳴るにゃ」
2匹はそれを、もふっとキャッチする。
「(エース、猫又ちゃんが民家の方に行ったわ)」
民家の周りを捜索しているエースに、ルカルカが携帯でメールを送る。
「この近くか…。来た!…猫又ちゃん、おいでー」
「あたらしー玩具!」
「紐だにゃー」
一緒に戦乱の絆にかぶりつき、千切ってしまう。
「もろい絆だね、エース」
「―…ぁー、にゃんこの力には勝てなかったみたいだな」
「それもいただきにゃっ」
「フフッ、簡単には奪わせないよ。ほしかったらこっちにおいで」
羽虫の玩具がいついた鞭を振り、エースも猫又を誘導する。
「羨ましいすぎるぞ、幼女の姿を見れるなんて」
「…うん?年は分からないけど、小さな女の子だな」
「長屋にご利益を招く妖怪は、2人ともちっちゃい女の子だよ」
「な、何んだと…。ここは幼女のパラダイスなのか!」
パラダイスがイルミンだけでなく、葦原にも存在するのか…。
この学校の所属なら場所的に近いし、見た目も口調も永遠に年を取らない、幼女にいつでも会いに行ける!
「もうカズちゃん、マジメに走らなきゃぺんぺんするの!」
「あ、はい…すみません」
「ははは…厳しいパートナーだな」
「エースさんはちみっこがパートナーか。幼女のほうが萌えるのは、間違いないが…いたたっ、真面目に走るから叩かないで、リンちゃん」
スピードが落ちているの!とリンに叱られた一は額を叩かれる。
「油断していると、追いついてしまうぞ」
塀を乗り越えて現れた淵が、猫又に接近する。
「雷を落としてやるにゃ、にゃんにゃん!」
「(落雷かっ)」
ルカルカにかけてもらっている空飛ぶ魔法で飛び、足元に落ちた雷をかわして感電を防ぐ。
秘色は雷鳴号に口笛で合図して、猫又の気を引こうとその周りを旋回させる。
彼女は“じゃまにゃー、いやにゃぁあ!”と怒ってしまった。
「にゃーに触らないでほしいにゃー」
身体検査をする秘色の手にかみつく。
「―…っ」
「わぁああ、何発落ちてくるのっ」
その隙に木賊殿が、対電フィールドで守りをかためるが…。
激怒した猫又が顔を洗いまくり、何発も雷を落とす。
「今、3回連続で落ちたよっ」
「おぁああ、オレを狙うな!」
怒りの矛先が陣に集中しているようだ。
対電フィールドで雷を緩和しても、完全に防ぐことは出来ないため、何発もくらってたまるかと陣は必死な形相して避ける。
「あちゃー…怒らせちゃった?よーし、楽しい玩具で遊んであげるから、機嫌直してっ。《戦闘用イコプラ》「マウス to マウス」を起動!」
ネズミ型のイコプラを、華麗なコトンローラーさばきで操作する。
「にゃぅうう…」
「この玩具のネジを巻くのを手伝ってください」
彼女たちが耳を後ろにしてうなっている様子を見て、秘色は練が作った魚型玩具を、舞花やクマラたちに渡す。
「これを巻けばいいんですね」
「いっぱい巻いちゃおう!」
「どういう玩具なんだろうね?」
「いつネジから手を離せばいいんだ?」
北都と昶もネジ巻き作業を手伝う。
「もう少し待ってください…」
「(仕掛けを使っちゃおうかな)」
練は猫又から離れ、会話機能を使う。
“あっちに美味しいー、ご飯があるちゅーちゅー。一緒に食べるちゅーちゅ!”
「こいつ、喋るのかにゃ?」
「すごいにゃー」
“こっちきてー、ちゅーちゅー!”
「(おいでーおいでー)」
イコプラを操作し、終夏とアニューラスたちのところへ誘導する。
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