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第三章 悪ノリ勇者の修行?


「……いたよ」
 ヴァイスがキスミを発見。
「三人、はまったぞ」
 キスミは魔王軍のモンスター達と一緒に何やら悪戯をしていた。
「……何をしてるんだ」
 セリカはキスミ達の様子を観察。
 モンスターと一緒に奇妙な液体を地面に撒いて人が濡れた部分を通ると突然どろりと泥沼のようになり足をとられてしまう。
「……本当に呆れるようなことばかりして」
 アゾートは言葉通り呆れていた。

 そこに
「やっと見つけたわね」
「セレン、逃げられないように慎重にするのよ」
 セレンフィリティと『殺気看破』と『神の目』使用中のセレアナも現れた。

「ん、あんたらもキスミを捜してたのか」
 セレンフィリティ達に気付いたヴァイスが訊ねた。
「たっぷりとしばき倒そうと思ってね」
 セレンフィリティが怖いほどにこやかな笑顔で答えた。
「これだけいれば何とかなるかな」
 アゾートは人数を確認し、捕獲率が上がったと少しだけ安心。

 捕獲兼しつけの第一歩を踏み出す。
「とりあえずオレが一発天罰を」
 ヴァイスが『天のいかづち』でキスミに天罰を下す。

「ひゃぁ!」
 空から降って来た稲妻をぎりぎりで避けるキスミ。
「……ん」
 キスミの様子を見ていたアゾートは考え事があるのか眉を寄せていた。
 捕獲者達の存在に気付いたモンスター達がアゾートを狙う。

「アゾート!!」
 アゾートが動くよりも先にセリカが動き、『チェインスマイト』でモンスター達を倒した。
「助かったよ」
 アゾートはセリカに礼を言った。

 セレンフィリティ達も動き始めた。
「それ!!」
 セレンフィリティは、魔導爆弾こと機晶爆弾をキスミ達に投げつけると同時に『サイコキネシス』で周囲の砂を舞い上がらせ視界を奪った。

「な、何だよ。見えねぇ」
 周囲が爆発するわ視界は悪いわでかなりのパニックになるキスミ。
「さっさと大人しくしてもらうわよ」
 セレンフィリティは『ヒプノシス』でキスミを眠らせ、縄で縛り上げた。
「よし、これで捕獲完了。ほら、起きるのよ」
 セレンフィリティはそう言って銃の柄の部分で頭を殴って起こした。
「痛っ、ていうか何で縛られてんだよ!!」
 目覚めたキスミは殴られた頭を触ろうとして腕を動かせない事に気付き、怒りの声を上げた。
「そんな事はどうでもいいからそれよりも勇者としての仕事をするか、今ここで魔王軍の一員として始末されるの、どっちがいい?」
 セレンフィリティはキスミの訴えを無視し、究極の選択を迫った。
「ていうか、その格好、勇者に見えないぞ」
 キスミは憎らしそうにセレンフィリティをにらみながら言った。
「……確かにそうよね」
 セレアナは静かにキスミの言葉にうなずいた。自分とセレンフィリティの格好はロングコートに自分はレオタードでセレンフィリティはビキニなのだから。どう見ても勇者には見えない。
「……勇者の仕事を放棄している方が問題でしょうが!!」
 セレンフィリティはもう一度、銃の柄でキスミの頭を殴った。
「痛いなー。分かったよ。やればいいんだろ」
 これ以上殴られたくないキスミは渋々、仕事に戻る事に。

 ここで教育係の出番。
「ならば、勇者としての修行の時間だ」
「賢者様のお説教も聞いて貰うよ」
 セリカとアゾートが登場。
「さて、行こうか」
 ヴァイスが座っているキスミを立たせようとする。

 その時、
「……何か違う。キスミから離れて」
 『殺気看破』と『神の目』使用中のセレアナは目の前のキスミに奇妙な殺意を感じ、みんなに呼びかける。
「セレアナ?」
 セレンフィリティは何事かと思いながらも言う通りに離れ、セレアナと背中合わせとなり死角を消しつつ様子を窺う。
 アゾートやヴァイス、セリカも離れた。

 その途端、キスミの体が膨張し、縄はぶち切れ、現れるのは鱗に包まれた姿。
「……これは」
 アゾートは見上げながら先ほど自分が感じた違和感が正しかった事を確認した。
「……ドラゴンだな」
 セリカは新たな敵の正体を口にする。
「つまり、オレ達は本物のキスミに騙されたという事か」
 ヴァイスはやれやれと自分達の今の状況を確認。
 ドラゴンは、毒々しい漆黒の煙を吐き出した。
 煙に包まれたものはタールのように溶けてしまっている。

「すぐに暴けなかったなんて厄介ね」
 セレアナはそう言いつつドラゴンの尻尾払いを避ける。察知出来たのは、キスミの姿から殺意を持つ化け物に変化したからだろう。

 セレンフィリティとヴァイスはほぼ同時にドラゴンに攻撃した。
「……一体、何なのよ」
「……どれだけ手間がかかるんだ」
 セレンフィリティは『朱の飛沫』で煙を吐き出すドラゴンの口を炎が焼き尽くし、ヴァイスは『凍てつく炎』で両翼を燃やしてダメージを与え、凍らせて使えないようにした。
「……本当に」
 セレアナは『光術』でドラゴンの視界を奪うと同時にセリカが動く。
「とどめだ!!」
 紺碧の槍で『ランスバレスト』を使い、両翼と尻尾をを切り落とし、最後に胴体に貫通させ、真っ二つに切り裂き、倒した。
 倒されたドラゴンは形を崩し、大きな泥沼に変貌した。

「……終わったわね」
 セレアナが巨大な泥沼を眺めながら息を吐いた。
「これ、始末しないと危ないかも」
 そう言いながらセレンフィリティは近くにある石を投げ込んでみる。
 投げ込まれた石はどろどろに溶け、沈んで行った。

「……このままには出来ないね」
 アゾートはどうしたものかと泥沼を眺める。
「……ここは私達が片付けるからキスミ捜しに戻って」
 二手に別れた方が効率が良いと判断したセレアナがアゾートとヴァイス達に言った。
「そうさせて貰うよ」
「では、行くか」
「キミ達、お願いするね」
 ヴァイス、セリカ、アゾートはお言葉に甘えてキスミ捜索に戻った。

「……で、セレアナどうするつもりなの。跡形もなく吹き飛ばすつもり?」
 セレンフィリティがセレアナに訊ねた。大雑把なセレンフィリティとしては爆弾で吹き飛ばしちゃえと思っている。
「そんな事したら周囲に被害が出るでしょ。まずは」
 セレンフィリティにツッコミを入れた後、セレアナは『氷術』で泥沼を凍らせた。
「セレン、適当な場所に移動させて」
 泥沼の危険は消えたが、残るは氷としての危険だけ。それも解決はすぐである。
「分かったわ」
 セレンフィリティは『サイコキネシス』を使って安全な場所に移動させ、作業を終わらせた。

「セレン、これからどうするつもり?」
 一段落着いたところでセレアナが訊ねた。
「とりあえず、キスミを捜す。もう誰かが見つけているかもしれないけど。騙されたままというのが」
 セレンフィリティは即答した。負けず嫌いな性格としては騙されたままというのが我慢ならないのだ。
「……そうね」
 セレンフィリティの性格をよく知っているセレアナは予想通りの返事にうなずき、キスミ捜索に付き合った。