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大迷惑な冒険はいかが?

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大迷惑な冒険はいかが?

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「いたれす、ゆーしゃしゃまはっ見れす」
 コタローの『捜索』でとうとう魔王軍と一緒に悪戯をしているキスミを発見。
「……勇者というより遊び人じゃないですかまったくもー!!」
 ジーナは水鉄砲で壁一面を汚しているキスミに呆れていた。
「大人しく魔王討伐に行け」
 樹は怒りながらキスミに声をかけた。
「何だよ。これが終わったら行くって」
 楽しみを邪魔されたキスミは不満そうに口を尖らせ文句を垂れる。
 と同時一緒にいた魔王軍が三人に襲いかかり始める。
「ワタシのハリセンで片っ端から突っ込んで差し上げやがりますっ!!」
 ジーナはハリセン片手に景気良い音を立てながら次々に倒していく。

「意外に頑丈だな」
 樹はバイタルオーラに『ライトニングウェポン』をかけて即席スタンガンでぶちのめしていくが、効果が薄いため『ヒロイックアサルト』で威力を増やして戦った。その様はまさに武闘家に相応しかった。

「樹様っ、日頃の鬱憤晴らしやがりましょうね!」
「っつーか、そうでもないとやっておれんわ」
 ジーナと樹は戦闘中というのに心なしかすっきりとしているように見えた。

「こんなぬるい攻撃、見える、見えますよっ。隙の無い攻撃の見本を見せてやるでございますよ」
 魔法使いジーナはモンスター共の攻撃を避け、『シューティングスター』を降らせた。

「こたもじにゃとねーたんといっしょに、まおーぐんにつっこむれす! しゅじゅちゅれーす!」
 コタローも二人の手伝いをしようと切れ味鋭いメス型の空飛ぶ箒、レティ・ランセットを使って突っ込んでいく。ナースの姿にぴったりだ。

 モンスター共は綺麗に片付けられ、
「ちょ、何だよ!」
 残るはキスミだけ。
「さぁ、最後でございますよ」
 ジーナはじりじりとキスミに近付き、
「こんの、アホンダラ勇者〜っ!! こたちゃん、波状攻撃です!」
 渾身の力を込め、ハリセンではっ倒し、コタローに指示。
「う! りゃいちょにんぐぶりゃすちょー!(ライトニングブラストー!)」
 コタローは『ライトニングブラスト』でキスミを完全に動けなくした。
「樹様、とどめですっ!」
 ジーナは最後の一撃のための準備が整い、樹を呼んだ。
「……とどめも何もとっ捕まえてふん縛るだけだ」
 樹は言葉通りキスミを手際よく縄で縛り上げ、ついでに自走式人間大砲にくくりつけた。
「よし、これで完了だな」
 樹は気絶しているキスミを確認し、脱出への第一歩を踏み終えた事を確認した。

 少ししてキスミは目を覚まし、
「……な、何だよこれ!!」
 大声を上げた。起きたら体の自由がきかないのだから当然だろう。
「目が覚めたか。コタロー、念のため逃げ出さないようにしてくれ」
 樹はコタローに指示をした。相手は悪戯好きなので何をしでかすのか分かったものではない。念には念を入れなければ。

「あい、ねーたん、にげにゃいよーに、するれお!」
 コタローは『防衛計画』を使って対策としてゆる族の魔糸でさらにぐるぐる巻きにした。
「逃げないようにって、というか何だよこれ!!」
 先ほどよりも体の自由がきかなくなったキスミは背中に感じる冷たい感触に嫌な予感を感じ、声を上げた。

「勇者と魔王の打ち上げ花火のためだ」
 樹は隠す事なく自分達の脱出計画を話した。

 それを聞いた途端、
「ちょ、冗談だろ!?」
 キスミの顔から血の気が引き、声を荒げる。
「冗談ではない。私はとっと帰りたいんだ」
 樹は至極真面目な顔で言い切り、キスミの顔を真っ白にさせた。
「少し大人しくしやがれです!!」
 ジーナがスパーンとハリセンでキスミを気絶させた。

 これで終わりかと思いきや
「じにゃ、どろどろらお」
 キスミの体が突然どろどろに溶けたかと思ったら大量の半透明の奇妙な生物が這い回りだした。

「これは何でございますか!!」
 ジーナは新たな敵に少し驚く。
「ねーたん、ふえてるれす」
 コタローは興味深そうに増えてあちこちに動き回る謎の生物を見ている。
「燃やすぞ」
 樹は『火術』で燃やし尽くすも意外に生物は俊敏らしく全てを燃やし尽くす事が出来なかった。
「増えてるでございますよ」
 生き残りが次々仲間を増やしていく。

 そこに
「何の騒ぎだ!」
 たまたま通りかかったエヴァルトが現れた。
「騒ぎを聞きつけたんだけど」
 キスミ捜しをしていたなぶらも登場。

「人が突然こうなったんだ。燃やしてみたんだが、俊敏で増殖の速度の方が速い」
 樹が状況を手早く二人に説明した。

「手伝うぜ!」
「力を貸すよ」
 エヴァルトとなぶらはすぐに協力を始めた。
 エヴァルトは『爆炎波』を使い、手当たり次第片付け、なぶらは『真空波』で生物だけを破壊したり、光明剣クラウソナスで切り裂いたた。
 樹は『雷術』を使い、コタローは『ライトニングブラスト』、ジーナは『ファイアストーム』で燃やし尽くした。
 人数が増えた事で効率も上がり、何とか謎の生物を全滅させる事に成功した。

 戦闘終了後、
「一体何だったんでしょうか」
 ジーナは、正体不明の生物に対して疑問を口にした。
「……何か妖しげな物でも買うなり作るなりしたんだろう。あの二人なら有り得る事だ」
 エヴァルトは呆れたように言った。
「……思った以上に厄介な事になりそうだね」
 なぶらもエヴァルトと同じ気持ちで言葉を洩らした。

「俺はこのまま城に向かう。そっちも気をつけろよ」
 エヴァルトは自分の目的を思い出し、みんなに言葉をかけてから城へ向かった。

「俺も捜索に戻るよ。キスミさんにはどうしても教えなければならない事があるからね」
「なんれすかー」
 コタローがなぶらの言葉に興味を抱き、訊ねた。
「勇者とはどのようなものか、何をしなければならないかだよ。俺も行くよ」
 なぶらはコタローに分かりやすく答え、キスミ捜索に戻った。

 残された三人。
「樹様、ワタシ達も急ぐでございますよ」
「もう誰かが見つけているかもしれないが、急ぐか。聞きたい事もあるしな」
「こたもききたいれす」
 樹達もキスミ捜索に戻った。

 賑やかな通り。

「……何か腹が減ったなぁ。すんません、これを一つ……」
 悪さをし回ってすっかりお腹が空いたキスミはとある露店に立ち寄り、甘そうな果物を手にとって勘定をしおうと店主の顔を見た途端、硬直した。
「元気そうだね」
 北都の営業スマイルがキスミを迎えるも目は笑っていない。しっかり犯人が誰なのか知っている。
「……やっぱり」
 ゆっくりと果物を元の場所に戻そうとするキスミ。身の危険を感じ冷たい汗が額から流れる。
「お腹空いていたんじゃないのかなぁ」
 北都はにこやかに言うも目は相変わらず笑っていない。
「……北都の奴、かなり怒ってるな」
 白銀は北都の笑顔の裏に潜んでいる怒りを知りつつもキスミを助けたりはしない。

「……この前の説教はもう忘れちゃったみたいだねぇ」
「忘れてなんかないぞ。少しは大人しく」
 じわじわと縛り上げる北都の言葉に何とか言い訳をするキスミ。刃先がのど元に突きつけられている感じである。
「……」
 北都は脅しにと思い、『千眼睨み』でキスミの手にある果物を石化した。
「……い、石」
 キスミは驚き、石化した果物と北都を見比べた。ヤバイと新たな冷や汗がたらりと流れる。
「皆を元の世界に戻す努力は、勿論してるんだよねぇ? 返答によってはどうなるか分かるよねぇ」
 じわじわとプレッシャーを与えていく。
「……」
 キスミはこくりとうなずく。おかしな返答をすれば確実に石化され店頭に飾られるかもしれない、これは脅迫だと認識。キスミは何とかこの場をやり過ごさなければ必死になった。
「……この場をやり過ごす事だけを考えてるのかなぁ」
 北都はキスミの考えている事を見抜く。巻き込まれたのはこれが初めてではないので考えている事はお見通しである。
「……」
 本心を見抜かれたキスミは目を泳がせ、助けを探した。