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茶屋で学ぶ警備の正しい方法
街道に沿って設置された街灯が夜を削るように道を照らしている。
ツァンダ方面へと続く街道から少し離れた丘の上に茶屋がある。看板には『甘味処』と書かれていた。
休憩所として通う人が多いのであろう。茶屋の前にも街灯が置かれていた。
街灯の隣、赤い布が掛けられた縁台に座って休んでいる者がいる。
笠置 生駒(かさぎ・いこま)とジョージ・ピテクス(じょーじ・ぴてくす)の二人だ。
彼女たちの座る隣には団子とお茶が置かれていた。笠置は団子を手にすると口へと運ぶ。
「うん。おいしいな」
「まったく仕事中だというのに生駒には困ったものじゃな」
ジョージは小言を言いつつ、笠置と同じく団子を口にする。
「うむ。うまいのう」
「まったく仕事中だというのにジョージには困ったもんだね」
笠置は言うと今度はお茶を啜った。
彼女たちの視線は街道に向けられている。
街灯で照らされた道を行き交う人々の姿が見える。
丘の上という立地もあるのだろう、下からでは見えない位置も良く見えた。警備を行うには最適かもしれない。
「ここならサボっていてもいなくても平気だよね」
「一石二鳥ではあるがのう……サボってるようにしか見えん」
二人して茶を啜っていると脇道から茶屋へと向かってくる集団が目に留まった。それは見知った人物たちであった。
「おや、あの子たちは……」
「店主。団子と茶を追加で頼む」
ジョージが注文を頼んでいる間に集団が茶屋の前に着いた。
ルーノたちだ。彼女を先頭にアニス、ルナ、クウの三人が列を作っていた。
「おっす!」
「おす。久しぶりだね」
「久方ぶりじゃのう」
笠置は挨拶を交わすとルーノたちに座るよう促した。
彼女たちは勧められるまま隣の縁台に腰を掛ける。
「おばちゃん! 団子4つ!!」
「お茶も四つクダサイ」
「にゃ、ひょっとしておごり? やったー!」
「わぁいなのですよぉ〜♪」
任せなさいと胸を張るルーノ。
「お金どうしたの?」
「これでもおねーさんだからな。稼ぎはあるのだ」
「ルーはジカセイの紅茶を売ったりしてるから……サイキンだけど」
「ほう、それは初耳じゃのう」
「クゼはお得意様」
「紅茶好きそうな感じだったよね」
笠置は合点がいったようでウンウンと頷いた。
しばらくして店主が追加の団子とお茶を運んできた。その後、間を置かずにルーノたちのもとにも団子とお茶が運ばれた。
オマケなのだろう、ルーノたちの団子は笠置たちの手元にある団子よりも一串多かった。
「ゆっくりしていきなさい」
「ありがとな!」
店主はルーノたちに声をかけると店の奥へと姿を消した。
「いたれりつくせりですねぇ〜」
「やったね〜♪」
アニスとルナもご満悦の様子である。
団子を楽しみながら笠置が言った。
「そろそろ花火が上がるらしいから、ルーノたちもここで休んでるといいよ」
「そのつもり! ここからよく見えるって聞いたからな」
「準備にヌカリなし」
グッとクウが親指を立てる。
「それはなによりじゃの」
ジョージはかっかっか、と笑うと笠置に警備に戻るよう促した。
「そうだね。ワタシもそろそろ警備に戻るよ」
「うむ。花火の時間じゃし、人も増えるからのう」
茶屋を後にする笠置たちに背中越しに声がかかった。
「頑張ってなー!」
笠置たちは手を振るとそのまま丘を下って行った。
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