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MNA社、警備システム開発会社からの依頼

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MNA社、警備システム開発会社からの依頼

リアクション

「……先ほどの攻撃は私たち契約者の中でも随一の攻撃力を誇るスキルです」
「機動兵器の装甲を100と考えるなら、先ほどの攻撃は120と言ったところだな」
「成る程。契約者という方たちは本当にお強いのですね」
「逆を言わせてもらうのなら、それと対峙できている機動兵器たちもすごいかと思いますよ?」
「そう言ってもらい光栄です。それにわざわざ解説をやって頂き、ありがたい限りです」
「本職ですので」
 開発部のオペレーターに解説をしているのはルカルカ・ルー(るかるか・るー)
 その傍らには複数のノートPCを使い記録と分析を行っているダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)がキーボードを操作している。
「それにしても、契約者の方々は本当にすごいですね。魔法だけでなく、何かを召喚すること、自身を強化すること、あらゆる強さを兼ね備えている」
「強くなるために、努力や訓練が必要になります」
「機動兵器を生産する期間とどちらか早いのか、興味深いな」
「どうでしょうか。何分、私はただのオペレーターですので、そこまで詳しくは聞かされておりません」
「すいません。突然な質問をしてしまって」
「……すまなかった」
「いえ、私のほうこそお答えできず申し訳ありません。……一度離れます、こちらで収集しているデータの確認をしないといけませんので」
「それじゃ私たちのほうでもデータの分析を進めておきますね」
「よろしくお願い致します」
 深々とお辞儀をして、その場を去るオペレーター。その姿が見えなくなり、気配が完全になくなったことを確認したルカルカがダリルに喋りかける。
「本当に、何も知らないと思う?」
「どうだかな。人間は分析が最も難しいから何とも」
「それじゃお得意の機械の方は? 分析とかいいつつやることはやってるんでしょ?」
「……芳しくないな。警備システムと名を打ってるだけあってシステムの方も厳重だ」
 ダリルは分析をしつつも、実際にはMNA社の情報を探っていた。
 しかし、所持しているスキル全て活用しながらも、それだけに見合う情報は手に入れられないでいた。
「ダリルでもお手上げって、それもそれよね?」
「ノートPCではなくちゃんとしたマシンがあればいいんだが、あったとしてもここで広げて使うわけにもいかないだろう」
「どこにもアクセスできないの?」
「そういう訳でもないが、ここぞという所、例で言えばまさに機動兵器の開発データがあると思われるところはアクセスできないな」
「……具体的な情報も持って帰りたかったけど、一つわかったわね」
「ああ。プロテクトが厳重すぎる。ここまで厳重にする必要はないだろう、ただの警備システム開発会社ならな」
 ノートPCから手を離して、きっぱりとルカルカにそう言うダリル。
 ルカルカも同じ思いからか静かに頷く。
「そもそも、実験に参加しない方は誰であろうとお通しすることはできない、って言うのもね。長たる涼司すら門前払いとは思っても見なかったわ」
「その分、俺たちがやるのだろう?」
「当然。無駄かもしれないけどダリルはこのまま分析しつつ調査をして。機動兵器への指令通信の傍受、模擬戦のデータの転送先の探知、言ってしまえばMNA社の情報をね」
「ああ、もう少し本腰を入れる。補足は少なくなるが、カバーは頼んだ」
「りょーかい、任せて。私もそれとなくカマかけてみようかな」
 あくまでも冷静に、しっぽはださず、情報を模索する二人だった。

「お待たせしました。機動兵器の乗り心地は如何ですか?」
「1人ならいいが、2人は少し狭く思えるな」
「……」
「成る程。そちらの意見も報告させていただきますね」
「ああ。これが中間報告書だ、受け取ってくれ」
「お預かり致します。……成る程。大変参考になります。では、引き続き調査に当たってください」
「了解した」
 オペレーターに報告書を提出していた人物、それは佐野 和輝(さの・かずき)である。
 今回は内密にMNA社からの個人で依頼を請け負っていたのだ。
 それを助けるためにパートナーであるアニス・パラス(あにす・ぱらす)も同行していた。
「……あの女、感情がないかと見まごう程、表情に変化がなかったな」
「うん、ちょっと怖かった……」
「もういいだろ? そろそろ機動兵器に戻るぞ。他無人機とのリンクはどうだ?」
「うーん、あっちも突貫で準備したのかな。全然繋がらないねぇ」
「まだそこまでに至る段階ではなかったか。『根回し』の無駄遣いだったか」
 そう呟きながら機動兵器へと戻る二人。2人が乗るには少し狭い空間だ。
「……ああっ! どの子かわからないけど、情報がリンクしてる子がいるよ!」
「何? どの機体かわかるか?」
「ええっと〜、B地点フラッグの防衛に当たってる子から! 助けてーって叫んでるよ!」
「……身の回りで起きている状況から危機を察知し、救援を呼ぶことが可能。並みのロボットでは到底真似できないな」
 『迷彩塗装』を使用した機動兵器に乗りながら、無人機の行動に感心する和輝。
「う〜助けに行きたいけど、アニスたちは今極秘行動ちゅ〜なんだよね……」
「だな。悪いが助けに行くことはできん」
「ごめんねぇ……せっかく届いた声に答えて上げられなくて」
「他の無人機からはどうだ?」
「……だめ。全然聞こえない」
「そうか……。今はBフラッグが危険地帯で、Cフラッグ地点はざっと見た、なら既にフラッフが奪取されているAフラッグ地点で情報収集が賢明か」
 そう言って機動兵器をゆっくり動かす和輝。ゆっくり大回りしながらA地点へと向かう。
「アニス、『ディテクトエビル』に反応はあるか?」
「うーうん。こっちも全然反応なし、ちょっとつまんないよー……」
「何もない方がいいさ。楽でやりやすい、引き続き警戒を頼む」
「はーい。……作戦行動を再開する……なんちゃって〜♪」
「……見逃してくれるなよ?」
「へーきへーき! さあいこー!」
「やれやれ……」
 少しだけ不安を抱えながらも、和輝とアニスは更なる情報を得るためにA地点へと向かうのだった。