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リアクション
第四章 探し物を見つけよう!
ヴァイシャリー、街。
「……老夫婦? 確かにこの周辺で見かけたわ。頭は無かったわよ」
「そうですか。ありがとうございます」
さゆみは情報提供をしてくれたちゃらちゃらした女性に礼を言ってから離れた。
さゆみ達は他の捜索者達と捜索場所を分担して聞き込みをしていた。当然、捜索場所にはヴァイシャリー以外も含まれていた。
「……なかなか見つからないね」
「そうですわね」
さゆみとアデリーヌは紛失地点から聞き込みをしながら少しずつ進んでいるのだが、なかなか見つからない。何より相手によっては会話が成立しない者もいたりするので余計に大変である。ちなみに完全に姿を消して生者には見えない状態である。
「しかし、不思議な感じね」
さゆみは空を飛ぶ幽霊の鳥達を眺めながら言葉を洩らした。
「いつもと違う風景ですものね」
さゆみにつられるようにアデリーヌも空を見上げた。
「何とか場所を絞りたいけど。難しいね。広いし、どこか見つけにくい場所に入り込んでいる可能性もあるから」
さゆみは困ったように肩をすくめた。
「そうですわね。紛失に気付いた場所でいくら呼びかけてもいませんでしたし」
アデリーヌはため息混じりに言った。紛失に気付いた地点で他の仲間と一緒に細かく捜索したり呼びかけたりしたが、返事も姿も無かったのだ。
さゆみ達はすぐに聞き込みに戻った。
「転がった頭? 見た事無いなぁ。というか何で俺幽霊なんだ。何か悪い事したか」
青年の幽霊は首を振り、ぶつぶつとつぶやきながらどこかに行ってしまった。
「……あの、ありがとうございました」
青年に聞き込みをしていた舞花は戸惑いながら見送った。舞花はウルバス夫妻の旅行ルートを聞き込みをして回っている。相手が幽霊なのか会話が成立しない人もちらちらいるが、『捜索』を持つ舞花は何とか聞き込みに応えてくれそうな人を見抜いて仕事をしている。
「そちらはどうでしたか?」
舞花はイルミンスールからヴァイシャリーに戻って来た陽一に調査と捜索の結果を求めた。
「古城について多少分かったよ。この姿だから資料だけじゃなくて近くにいる事件当時生きていた人にも聞く事が出来た」
陽一はイルミンスールの役所に入り込み、古城について調べたのだ。その際、役所にいた幽霊に少しばかり手伝って貰ったりした。
「あそこは最初からそういう所ではなかったらしい。最初は、金持ちの別荘で優しい人が住んでいてあんな変死は起きなかったととそこで昔働いていた人が言っていた。もちろん幽霊だが」
陽一は古城についての詳細を話す。
「それでいつ頃からあんな事件が?」
古城について分かったところで舞花はさらに肝心な事を問う。
「ここ数十年前から起きている事らしい」
陽一はそう言って詳細を舞花に伝えた。
「思ったより大昔という訳では無いんですね」
情報を全て聞き終えた舞花は感想を口にした。
「それぞれ事件が起きた日も違うというのはおそらく何か起きた後の結果だろう」
陽一は古城について推理をする。何か悪いものが潜んでいる気がするのだ。
「最初の事件が他と違いますね。押し込み強盗に金品と命を奪われ、貯蔵庫に逃げた7歳の女の子も犠牲になったという。この事件から数年後に変死が始まっているんですよね」
舞花は最初の事件について話した。最初は押し込み強盗でそれから数年後に変死が続いているのだ。発生時期には全く共通点が無い。
「……幽霊として古城にいるかもしれない」
陽一は最初の犠牲者が古城にいると予想。
「知らせておいた方がいいですね」
「そうだね」
舞花の言葉で陽一は古城にいる甚五郎に知らせた。その前にエオリアがやって来て夫妻の情報を手に入れる事が出来た。それも一緒に知らせてから陽一の四体のドッペルゴーストと共に捜索に戻った。時々霊体化が切れてはクッキーを補給しながら頑張っていた。
「なかなか見つからないね」
弾は収穫の無い現在の状態に困っていた。
「……そうですね」
弾が完全に姿を消しているので実体のノエルは小さく答えた。おかしな人に見えないように。
「……紛失に気付いた場所にもいなかったし、早く見つけてあげたいのに」
弾は夫の無事を待つハナエの姿を思い出していた。一刻も早く見つけたいのに状況は全く進まない。少しだけ焦っているように見えた。
「……焦りは禁物ですよ。捜している他の仲間がいるんですからすぐに見つかるはずです」
弾の気持ちが分かるノエルは何とか弾の焦りを和らげようと優しく言葉をかけた。
「そうだね。次は誰に……」
弾が誰に聞き込みをしようかと周囲をきょろりと見回した。
すると
「はぁ、こんな昼間から幽霊見るなんて」
冷たい汗を流しながら言葉を洩らす実体の女性がいた。
「これは私の出番ですね。弾さん、少し待っていて下さい」
ノエルは急いで女性の元に急いだ。
「あの、よろしいでしょうか。その幽霊について教えてくれないでしょうか?」
「幽霊? あぁ、あの頭の無い幽霊ね。びっくりしたわ。今日、祖父の命日で祖父の事を考えてたらいきなり頭の無い老人が見えて。あたし霊感とか無いのに」
ノエルが声をかけると女性は両肩をさすりながら話した。顔色も少し青かった。
どうやら女性は波長が合ったため見えたらしい。
「それは驚きますね。お話、ありがとうございます。お気を付けて」
「えぇ」
ノエルは礼を言ってから急いで弾の元に戻った。
ノエルが聞き込みをしている間、
「ここに頭だけの幽霊を見かけませんでしたか?」
弾は近くにいた男性に聞き込みをしていた。
「んー、頭の無い幽霊しか見てないな」
男性は面倒臭そうに答え、どこかに飛んで行った。
「そうですか。ありがとうございます」
弾は礼を言いながら猿男性を見送った。
そして、ノエルが戻って来て
「弾さん、だめでした」
「こっちもだよ」
また収穫無しの報告をしてから捜索に戻った。しばらくしてエオリアから二種類の情報がノエルに知らされた。この後、弾は、ヴァイシャリー以外へも捜索に行った。
「……紛失に気付いた場所には何もなかったとなると本当にどこにあるんでしょうか」
エオリアとエースは、他の仲間と紛失に気付いた地点で聞き込みやヴァルドーに呼びかけた後、分担場所に移動していた。
「まずは、植物達に聞いてみるよ。この子は長生きそうだ」
エースは立派な樹木を発見し、『人の心、草の心』で聞き込みを開始する。
「……長話はしないで下さいよ」
エオリアが注意をした時、エースはすでに話をしていた。
「……僕はこの間に夫妻の調査と他の場所へ捜索に行きましょうか」
『シャンバラ新聞』でハナエから得た情報からヴァルドーについての記事を調べる。
ヴァルドーはとある会社の社長だったと言う。その会社はヴァルドーの死後、別の人間が引き継ぎ、社名も変わった上に倒産して今は存在しないという。その話をする時、ハナエは世の中そういうものだから仕方が無いと笑っていた。
探し始めてしばらく
「……これですね」
数十年前の記事で内容はヴァルドーが他社の視察を訪問した時、火災に巻き込まれ、命を落としたというものだった。
「……?」
その時、タイミング良く会場にいるリーブラからハナエが病で死んだ事を知らされた。
「もしかして頭部が落ちやすいのは、その時頭部に損傷を受けたせいかもしれないですね」
エオリアは記事に書かれてあるヴァルドーの遺体の様子を見ながら推測していた。
「……どうであれ、二人が一緒にいられる事は幸せですよね。後で、他の人にも知らせておいた方がいいかもしれません」
自分の仕事を終えたエオリアはエースの方を見た。先ほどと何も変わらぬ様子。
「……エース、聞き込みは終わりましたか?」
「……頭部の無いヴァルドーさんを見たそうだよ。他の子にも聞いてみるよ」
エオリアの問いかけに答えるなりエースは次の相手に聞き込みを始めた。植物達は動物とは違う知覚方法を持つためか気配で幽霊を知っていた。
「……少し掛かりそうですね」
エオリアは、時間が掛かりそうな予感を感じるも止めるような事はしなかった。
「……もし、霊体になるのなら見張りをしておくよ」
エースは植物から植物へと歩き回っている。
「そうですか」
短時間だけ霊体となって完全に姿を消してからエオリアは霊体となっている舞花達に調査結果を知らせに行き、素速く他の街での捜索を済ませた。帰還後、エオリアは舞花から得た情報をエースにも伝えた。
しばらくして、二人は何度目かの植物の聞き込みからゴンドラ乗り場で見たと知らされた。その時、ヴァルドーの頭部は無かったという。
そこで二人はゴンドラ乗り場に向かう事にした。その前に実体に戻ったエオリアが銃型HCで目的地を他の仲間と共有出来るようにした。
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