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【第三話】始動! 迅竜

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【第三話】始動! 迅竜

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 同時刻 パラミタシャンバラ地方 雲海
 
「あ〜! ったく、葦原島はまだかよっ!」
 現在飛行状態にあるシュヴェルト13のサブパイロットシートでシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)はマップと睨めっこしていた。
「そうは言っても、イコン単体では十分速いほうよ。何せ、トリニティ・システムを積んだカスタム機が全力で飛んでるんだもの」
 そう言うのはメインパイロットシートに座るサビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)だ。
「まあ落ち着きなよ」
 サビクが窘めるように言うが、シリウスはじっとしていられないようだ。
「あそこは唯斗とか天学の予科練で同期だった奴らも多いしな……戦友の危機をほおっちゃおけねぇだろ!」
 どうやらシリウスとしては、今回の出撃に並々ならぬ思があるようだ。
「二度も出遅れしちまったが……葦原はほっとけねぇな。オレたちも義勇兵として出るぜ!」
 昂った様子で語っていたシリウスだったが、ふと冷静になって呟く。
「……それに。今は西側で暴れてる連中だが、いつこっちに飛び火してくるかわからないしな。敵の手の内は調べられるうちに調べておきてぇ。いくぜ、サビク!」
 シリウスの意気込みに微笑むと、サビクは頷く。
「そうだね。でも、これ以上急ぐとシュヴェルト13のエネルギーを使い過ぎるし、それと何より仲間を置き去りにしてしまうからね――」
 言いながらサビクは通信機を起動した。
 回線を開く相手は、シュヴェルト13のすぐ近くを飛ぶ機体――フロイライン・カサブランカだ。
「こちらシュヴェルト13、サビクだよ。こっちは随分ハイペースで飛んでるけど、そっちは大丈夫かな?」
 通信機で問いかけると、すぐにシュヴェルト13のコクピット内モニターに新たなウィンドウがポップアップする。
「何とか大丈夫そうだよ。エネルギーが心もとないので、飛行に支障がなくて、かつタイムラグが少ない飛び方をラディーチェに頼んだんだもん」
 ウィンドウの中でそう答えるのはネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)
「機体制御は任せてください」
 ネージュに続いて、画面の反対側にも新たなウィンドウがポップアップsた。
 そこに映っているのはフロイライン・カサブランカによく似たギフト――ラディーチェ・アコニート(らでぃーちぇ・あこにーと)である。
 シュヴェルト13とフロイライン・カサブランカの二機は救援を受け、葦原島から百合園女学院を目指して飛んでいる最中だった。
「わかった。できるだけ急ご――」
 カメラに向かって頷き、サビクが言いかけた時だった。
 PiPi!
 割って入るようにアラート音がコクピット内に鳴り響く。
「って! 一体何だ!?」
 驚いてシリウスがモニターを見ると、どうやら巨大な物体が多数接近してきているらしい。
『何かおっきいのが沢山近付いてきてるみたいだよ!』
 どうやらフロイライン・カサブランカも同じ反応を検知したようで、すぐさま通信が入る。
「まさか敵襲……いや、これは――」
 シリウスは咄嗟にモニターへと表示された情報に目を走らせ、あることに気付く。
「この識別信号は――なるほど、そういうことか」
 シリウスが気付くのと同時、二機の有視界内に現れたのは、空を行く艦隊だった。