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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 9

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 9

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第8章 2時間目:試作品作りタイム Story3

「章を作るのに必要なものは…。……ああ、えーっと…。私の本で試すわけにはいきませんから…、借りてきましょう」
「必要なものがあれば、持ってやろうか?」
 女の子人で全部用意するの大変だろうとラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)が言う。
「あ、は…はい。…お願いします。ええっとですね…。何も章が記されていない本と…、同じ材質の紙…。それと魔法のインクとペンがあるといいです」
「普通の文房具もあるわ。下書き用の紙もいりそうね」
「私はトーレス代を借りてきますね」
 美羽とベアトリーチェは教壇の傍に用意された道具を借りに行く。
「あわわ……。み、皆さん、ありがとうございます」
 結和のためにテーブルへ並べられた道具を、さっそく使ってみる。
「…ガイさん、章の名前は……」
「贖罪の章なんてどうですかね?」
「わ、分かりました。(失敗しないように普通の紙に書きましょう…)」
 その章に相応しい言葉を考え、色の濃い鉛筆で丁寧に書く。
「ゆーわ。んー(ゆーわ、文字違うよ)」
「はっ!?ありがとうござます、ロラ」
「ぅうー。(構ってー)」
「ロラ、今はこれを完成させませんと…」
 よしよしと撫でてやり背中に乗せた。
「(い、いよいよ本書きですかー)」
 スイッチを入れたトレース代の上に、下書きと本書き用の紙を重て乗せ、ペンに黒色のインクをつけて書き始める。
「ゆーわ、うぅー?(ゆーわ、手がぷるぷるしてるよ?)」
「深呼吸して…リラックスしなければ……。ふぅー…」
 下書き通り慎重に…丁寧に書いていく。
「(新たな章の言葉を考えるだけでも大変でしょうな)」
「(うーん。失敗出来ねぇインク書きか。相当、集中力がいるな)」
 ガイたちは真剣に章を作成している結和を見守る。
「ペン先に気の流れのようなものが見えるね?」
 2時間目も見学していこうとクリスティーが傍から覗く。
「高峰くんの祓魔の力の影響かな?インクの色は黒だけど文字は銀色だ」
 清き精神が反応して色が変わっているのだろうとクリストファーが言う。
「―…か、書けました」
「ほう、綺麗な字ですな」
「これで完成なの?」
「いえ、借りたスペルブックに記すことが可能か…、試してみませんと。……か、かか完成したようです」
 目次のような頭のページを開き、出来上がった章を重ねると本に溶け込むように吸収され、そこに章のページを示す言葉が浮かび上がった。
 ページを開いてみると結和が書いた文字がしっかりと記載されている。
 章を記した紙を指で持ち上げ、軽く引っ張ると綺麗に剥がすことが出来た。
「剥がすのも、問題ないようです」
「うー、ゆーわ!んんー!!(やったね、ゆーわ!完成おめでとー!!)」
「よ、よかったです。ガイさん…アイデアをいただき、ありがとうございます」
「無事に完成しましたな」
「校長に持っていったほうがよいでしょうかー?」
「おっと使い方をかかなければ。…こんなもんでしょうか、一緒に持っていってもらえますかな」
「は、はい」
 ガイからレポートをもらい試作品の章を渡しに向かう。
「…校長先生、レポートと試作品です」
「新しい章が完成したようですねぇ〜♪」
 エリザベートは検討用の箱に詰め込んだ。



「試作品用の宝石か…」
「おいグラキエス?制作は俺もやりたかったから構わねぇが…。まずやりてぇことを纏めた上で宝石持ってこいよ!?」
 背を向けて悩むグラキエスにベルクが言う。
「それなら問題ない。試作品用の宝石を用意してきた」
 グラキエスはペンダントから3つの宝石をノートの上に出す。
「って、あるのかよ。説明書いたところに宝石を転がすな。ほら、ちゃんと持っててくれ」
「分か……った」
 ベルクにそう告げたとたん、意識がなくなったように倒れそうになる。
 彼をエルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)が片腕で抱きとめる。
 片方の手には落としそうになった宝石をしっかりと握ってた。
「グラキエス様。ご無理をなさらないように」
「エンド、疲れてきたなら眠っていいんですよ。無理をして熱が出たら困るでしょう?」
「いやだ。俺も宝石が完成するところを見たい」
「でもまた倒れそうになったら…」
 ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)が眠るように言うが、駄々っ子のように言うことを聞かない。
 授業を楽しみにし過ぎ、明け方まで眠れず寝不足なのだった。
「ふふ、久しぶりに教室での授業ですね」
 戦闘以外天然・世間知らずの似た者同士なためか、フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)も眠くとも完成するまで絶対に起きている!という感じだ。
「…ところでマスター、この衣装おかしくないですか?祓魔師ならばとこの衣装を薦められたのですが思ったより動き易く私、気に入っております」
「は?どこでだ、そりゃ」
 今のところ全員私服で行動しているはずだが…。
 何系の店に薦められたのやらと思いつつ、心の奥底では店員に感謝しまくりの感情でいっぱいだった。
「さっさと機材を選ぶぞ。どれがいいんだろうな…。グラキエスはどれを使ったら…っておーい!立ったまま寝るんじゃねぇ!!」
 機材選びをしている傍ら、いつの間にやらグラキエスが目を瞑って寝息をたてている。
「―…は。完成したか?」
「いや、全然?機材も選んでねぇから」
「妙だな…。確かに完成した宝石を見たんだが…」
「いやいや?それ夢だから、絶対に夢だから!……え、何その顔。すげー残念そうな顔すんなよっ!!」
 なんだまだ出来てないのか…と俯くグラキエスにベルクが怒鳴る。
「まぁまぁ、叱らないであげてください」
「マスター、大人気ないですよ」
「(はぁ?もしかして俺が悪い感じ!?マジ、ありえねぇ〜〜っ)」
 無邪気な子を泣かそうとしている大人のように言われてしまう。
「ベルク、これで宝石を溶かしてみてくれないか」
「(俺の気持ち、ガン無視かよッ)」
 行き場を失った怒りをどうしたらよいものか。
「ははは…。やればいいんだろ」
 もうはや笑うしかなく、強制的に炉を受け取らされた。
「…なぜ不機嫌なのでしょうか?」
「俺には楽しそうに見えるが」
 アホの子2人組にベルクの感情を知る術はなかった。
「そうか…。きっと腹が減ってしまっているんだな。エルデネスト…」
「かしこまりました、グラキエス様」
 グラキエスが何を求めているのか察したエルデネストはテーブルにお茶の用意をする。
「ありがとう、エルデネスト。…ベルク、お茶にしよう」
「は…はぁ!?まだ試作品作ってねぇのにか?」
「腹が減っているんだろう?フレンディスが不機嫌そうだと言っていたから…。腹が減っているせいだと思ってな」
「俺は子供かよっ。別にそんなんじゃねぇーから」
「―……何?そうなのか、分かった…。フレンディス、お茶にしないか?」
「マスター、頑張ってくださいね」
 フレンディスは用意された焼き菓子に手をつける。
「ベルク、炉の使い方を教えておく。宝石を入れて…蓋を閉めるんだ。蓋の針が火の印のところまでくるように回してくれ。…で、火系の魔法を使えば、炉に力が吸収されて溶かせる」
「…ほー、そうなのか」
 臨界点が突破したせいで怒る気が消失したのか、いつも通りに接する。
「取ってを回して使うんだ」
「これか?うお、な…な何だ!?」
 炎の聖霊の炎が取っ手へ集中したかと思うと、炉の中へと吸収される。
「混ぜるってことなら、揺らしたりしたほうがいいか」
「ヘマしないように、この優秀なハイテク忍犬が監視します!」
 ご主人様のフレンディスにちょっかいばかりだすエロ吸血鬼が失敗しないよう、忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)が炉をじっと見つめる。
「火の魔力を吸収して溶かすとは…不思議ですね」
「ポチも興味あるのか?もっと近くでみよう」
 溶け具合が見える透明な部分を見つめじっくりと観察する。
「グラキエス様、炉に近付き過ぎると目を痛めます」
「近づきすぎてはいけないのか」
「僕としては祓魔師もハイテク時代でいいと思うのですけどねー。でもここの機材に機器用工具はあるのでしょうか?」
「電気じゃなく魔術の力が動力源になるものばかりみたいだ。ここは緑が多い土地だ、環境のこともあるだろう」
「エコですか…」
 ハイテク化していくと、どうしてもオゾンの問題などに直面する。
「まったく無害となるとかなり難しいですね」
「あぁ。キレイな土地のままにしておきたいからな…」
 そう言い終わるとポチを膝に乗せ、いつの間にか眠ってしまった。
「んで、次は?っておーい!寝るんじゃねぇよ。ていうか起こせよ!!」
 ポチのほうはしっぽをフリフリして丸まっている。
 ベルクの言葉は聞こえているがガン無視だ。
「すみませんウェルナート君、エンドはこの授業が楽しみであまり寝ていなくて……。魔道具もそうですけど、君たちと一緒に何かするのが嬉しいんですよ」
「遠足にいきたくてたまらない子供かよ」
「あはは。エンドの場合はそうかもしれませんね。…エンド、起きてください」
「……完成したのか?」
「いえ、まだですよ」
 眠たそうに目を擦る彼に、ロアはかぶりを振る。
「…確か、溶かすところまで教えていたか。冷やす時は、針を氷の印まで回してくれ」
「氷系の術を使えばいいんだな」
 魔法を唱えながら溶けた宝石が丸くなるように炉を揺する。
「ベルク」
「何だ、他にも手順があるのか?」
「お茶にしよう」
「そのやりとり2回目なんだけど!しかもまだ冷えてねぇし」
「大変だベルク、お茶が冷めてしまう…」
「もう、そこで冷やしておけ。はぁー……こんなもんか?」
 蓋を開けてみると濃いワインレッドのような1つの宝石として固まっている。
「大地が燃えているような色だな」
「んなら溶岩石っつーのはどうだ?」
「マスター、ラヴァーソウルはどうでしょうか」
「そりゃ…まぁ、いいんじゃねぇか」
 対象者を守るという意味の他に恋人の意味もあるのだが。
 天然なフレンディスのことだ、無意識に名前をつけたのだろう。
「ほらっ。作ったのは俺だが、元々の所有者はグラキエスだろ?」
 試作品の宝石をポンッと投げる。
「使ってみるか…」
 グラキエスは宝石をペンダントの中に入れ、祈りの言葉を捧げてみる。
「これだけでも、ベルクたちの位置が分かるな。他のことも試してみよう…」
 防御用の炎の障壁を纏ってみたり、足元から溶岩のような炎を噴出してベルクの周り飛ぶ。
「ベルク、離れてみてくれ」
「あぁ…ってついてくんなよ」
「いや、追尾能力だ」
「まぁ、あれだな。試作品だからどうなるか分かんねぇけど」
「グラキエス様。その宝石をこちらへ」
「…これをどうするんだ?」
「さすがに、グラキエス様自身のものを使うのは…と。そこで魔法学校の校長に頼みまして、所有者を決定してない宝石を借りたのです。グラキエス様のはこちらです」
 いつすりかえたのか、手の中を宝石を見せる。
「こちらは保管させてもらうとのことです。実用化するためには、手元に試作品がないといけませんから」
「そうか…」
 手放すのは惜しいが、皆にも使ってもらえるならと宝石を渡した。