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【第四話】海と火砲と機動兵器

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【第四話】海と火砲と機動兵器

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 同時刻 海京沖合 海上
 
 “ヴルカーン”部隊が布陣する海域では、電子戦攻撃から解き放たれた天御柱学院イコン部隊の猛反撃が始まっていた。
『何度倒されてもそのたびに甦る不死のイコン……火力重視型の敵にとっては、さぞ厄介な相手だろうな』
ギュンター・ビュッヘル(ぎゅんたー・びゅっへる)サミュエル・ユンク(さみゅえる・ゆんく)のコンビが運用するアニメイテッドイコン――ガリーツィエンは“ヴルカーン”部隊の砲撃を引きつけていた。
彼の言葉通り、何発もの砲撃を受けてもそう簡単には倒れないガリーツィエンが時間を稼いでいるうちに友軍機が動く。
『母校を守りきれないようじゃ、天学生の名折れだよ!』
 まず動いたのは高崎 朋美(たかさき・ともみ)ウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)の駆るウィンダムだ。
 元々、ガネットは天御柱学院のイコン。
 整備科で元の機体の、酸いも甘いも知りつくしてる整備士の朋美としては、退くわけにはいかない闘いだ。
 自分が知ってるガネットに関する弱点情報を基に機体を駆る朋美。
 相手の弱点を突くように動きながら、ウィンダムは装備したウィッチクラフトライフルを放つ。
 先程、ルデュテがそうしたように、砲撃中に装甲が展開して露出する内蔵火器や内部機構を狙うように攻撃するウィンダム。
 それが功を奏し、また一機の“ヴルカーン”が大爆発を起こす。
『どれだけ敵が多くても、一機一機減らしていけば、それだけこちらの勝利が近付く! 功を焦るな! 多数対一、で敵に当たるんだ! 総合の戦闘力において勝る状態で、あたれ!!』
 仲間を叱咤するウルスラーディ。
『了解っ! 全部撃墜してやるぜっ!』
 間髪入れずに応えたのは猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)だ。
 とは言うものの無理な突撃はせず、勇平は確実に一体一体相手にする堅実な戦い方をしていた。
 以前、無理な突撃でイコンを中破させたことを教訓とし、それをちゃんと活かしているのだ。
『電子戦攻撃によるシステムダウンの影響はなし。全機能復調。アルタグンとの接続完了。全機能使用できます。……マスター、訓練中での出撃のため、残弾、エネルギー共に半分程度しかありません。重々注意してください』
 そう告げるのは勇平のパートナーたる機晶姫のセイファー・コントラクト(こんとらくと・せいふぁー)
 彼女のサポートによるアルタグンは第三世代機に相応しい性能を発揮し、“ヴルカーン”相手にも一歩も引けを取らない戦いぶりを見せている。
『こちら閃電。援護する!』
 すかさずアルタグンに通信が入る。
 相手はすぐ近くで戦っている閃電のパイロット岡島 伸宏(おかじま・のぶひろ)である。
『土佐の梓姉さんから入電。この海域に未発見の敵はいない模様。閃電のセンサーにも反応はありません。伸宏君は目の前の敵に集中してください』
 続いて聞こえてくるのは伸宏のパートナーである山口 順子(やまぐち・じゅんこ)の声だ。
『助かるぜっ! それじゃ――俺たちも反撃といこうぜっ!』
 勇平の声とともにアルタグンは加速に入った。
 コロージョン・グレネードを投擲し、相手のかく乱を試みる。
 更には機晶ブレード搭載型ライフルを構え、半分しか残っていない残弾を惜しげもなく発射する。
『奴ら、市街地だろうが学園施設だろうが関係なしかよ! ……悪鬼共め!』
 怒りをぶつけるように閃電もビームアサルトライフルを連射する。
 ライフルを連射しながら“ヴルカーン”の一機へと迫るアルタグンと閃電。
 迎撃の為に放たれるミサイルを撃ち落としながら、二機は“ヴルカーン”の懐へと肉迫する。
『入ったぜっ……これでもくらえっ!』
 十分に接近したアルタグンはソニックブラスターを“ヴルカーン”へと叩き込む。
 砲撃による装甲展開中に攻撃を受けた“ヴルカーン”はそのダメージで大きく怯む。
 そして、二機はその隙を逃さなかった。
『いくぜ! 伸宏!』
『了解だ!』
 アルタグンはスフィーダソード、閃電は新式ビームサーベルをそれぞれ構え、怯んだ“ヴルカーン”へと一気に肉迫する。
 ソニックブラスターを受けて破損した箇所へと、二機は刃を突き立てた。
 そのダメージでこの“ヴルカーン”も大爆発を起こす。
 しかし、敵側も黙ってはいない。
 二機を撃墜しようと、近くにいた“ヴルカーン”の一機がミサイルの群れを発射する。
 だがそれも、付近で戦っていた天御柱学院のイコンによって撃墜される。
『危ないところだったわね!』
『機体は損傷してませんかー?』
 ミサイルを撃ち落としたのはフィーニクスとカスタムされたジェファルコン――ジェファルコン特務仕様
 仁科 姫月(にしな・ひめき)笠置 生駒(かさぎ・いこま)の機体だ。
 フィーニクスを駆る姫月はもちろん、普段はもっぱら整備を担当する生駒の技量も、やはり天御柱学院の学生だけあって凄まじいものがある。
 整備だけでなく戦闘でもその卓越した技術は活かされており、カスタムされたジェファルコンは各所で現行機を圧倒してきた“ヴルカーン”に劣らぬ強さを見せていた。
 アルタグンと同じくカットアウトグレネードを投げつけて牽制しつつ、多弾頭ミサイルランチャーで“ヴルカーン”のミサイルを迎撃する生駒。
『姫月、操縦は俺がサポートする。このチャンスに一気に突っ込むんだ』
『ええっ! そのつもりよっ!』
 サブパイロットの成田 樹彦(なりた・たつひこ)とのやり取りの後、姫月はフィーニクスを加速させた。
 生駒がミサイルを押さえている間に、姫月のフィーニクスはフルブーストで“ヴルカーン”へと突撃。
 砲撃の為に展開した装甲から露出する内部機構に向けてビームアサルトライフルの銃剣を突き立てる。
 内部機構への攻撃であることに加え、フィーニクスの速度が乗った刺突ということもあり、銃剣は堅牢な“ヴルカーン”の機体にも突き刺さる。
『やらせないわよ! 海京も、天沼矛も、天御柱学園も!!』
 銃剣を突き刺したまま、フィーニクスはビームアサルトライフルを連射する。
 内部機構へと何発もの連射を受けては、さしもの“ヴルカーン”といえど大ダメージは免れない。
 たちまち大爆発を起こす“ヴルカーン”。
 巻き上がった水飛沫と虹を見ながら生駒はサブパイロットのシーニー・ポータートル(しーにー・ぽーたーとる)に問いかける。
『天学の状況はどうですかー? ジョージは何って言ってますー?』
 学園に残ってイコンの整備と生駒たちが帰ってきた後すぐに整備に参加できるように準備しているジョージ・ピテクス(じょーじ・ぴてくす)のことを考えながら問いかける生駒に、シーニーは言う。
『「帰ってきたらサラダ作って待ってるぞ〜」だって。不吉なこと言うなあの猿!!』
 そう言った後、シーニーはこう付け加えた。
『それと、さ。こっちに近付いてくる機体の反応が二つあるんだけど』