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【後編】『大開拓祭』 ~開催期間~

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【後編】『大開拓祭』 ~開催期間~

リアクション

「様々な戦士の形を見れましたね。いいオーディションでした」
「そうね。悪くはなかったと思うわ」
 オーディションを見学していた夫婦、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)御神楽 環菜(みかぐら・かんな)のご両人。
 目の前で繰り広げられた熱いオーディションにそれぞれの感想を交し合う。
「それでどうするの? 撮影までは時間があるようだけど」
「撮影も見ていきたいところです。けど、まだまだ面白そうなところはたくさんありますし、惜しいですが他のところを見て回りましょうか。はい」
 そう言った陽太の手は環菜に差し伸べられていた。
 俗に言われる『手を繋ごう』のジェスチャーだろう。
「いいわよ。今日はアナタのワガママに付き合うわ」
 薄く微笑んで陽太の手を握り返す環菜。まるで夫婦である。あ、夫婦だ。
 道中手を離さず、喋りながらやってきたのは『大開拓祭inニルヴァーサル・スタジオ』。
 無料開放中ということもあっていつもの二倍ほどの来場客で賑わっている。
「あ、すいません。パンフもらえますか?」
「了解です。こちらがパンフです。……お二人は恋人同士ですか?」
 係りの者の不意の一言に咄嗟に反応したのは環菜。
「恋人ではなく夫婦ね」
「なるほど、これは失礼いたしました。お二人がご夫婦ということであれば、こちらのイベントに参加してみてはいかがでしょう」
「えっと……バトルシュミレーター、ですか?」
「今ならカップル同士で力を合わせたそのスコアを競い合っている真っ最中ですよ。ああ、いけない。ミルキーさんに叱られますね、それではよき祭りを」
 そう言うと係りの者は去っていった。
 二人は言われたとおりバトルシュミレーターの場所まで移動する。
 そこには多くのカップルと思われる男女二人組みがキャッキャしながらイベントに撃ちこんでいた。
「どうでしょう、やってみましょうか?」
「アナタがやるのならやるわよ?」
「なら、高得点狙いで行きますよ! 援護は任せてください!」
「頼もしいわね」
 そう言って二人はシュミレーターに乗り込んだ。
 迫り来る敵に臆せず戦う環菜。その傍には的確に援護をこなし、時には前に出て環菜を守る凛々しき陽太。
 かつ夫婦力満載のチームワークであっという間にシュミレーターをクリア。
 更に現カップルの中では圧倒的な高得点を叩き出した。
「本物かと思うほどの出来とは、驚きでしたね」
「私は怖くなかったわ。素敵な護衛がいたからかしらね?」
「もちろん。絶対に守り抜くと決めていましたから」
 そう言っていい雰囲気をかもしだしながら見つめ合う二人。だが、それを許す係員ではなかった。
「すいません。次の方がお待ちですので……」
「ご、ごめんなさい! すぐどきますね!」
「……!」
 みんなに見られていることにようやく気付いた二人は顔を赤くしながら退散。
 そのまま次のイベントへと歩を進める。笑顔を絶やすことなく。
 
「あのご夫婦、幸せそうだったね」
「そうね。でもあの動きは見習うべきだわ。思わず私も参加したくなっちゃった」
「だめよ。フリューネじゃ壊しちゃいそうだもの」
「そんなことしないわよ!」
 御神楽夫婦を見ていてそんな感想を漏らす二人はこちら。リネン・エルフト(りねん・えるふと)フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)
 ものすっごい勢いで羽をばたつかせてるほうがフリューネ。
 それを慣れた手つきでまあまあとジェスチャーをして抑えるリネン。
 こちらも御神楽夫婦と負けずの息の合いっぷりだ。
「でも、そうよね」
「どうしたの?」
 急なリネンのつぶやきを聞き逃さないフリューネがすかさず問いただす。
「ちょうど一年くらいかなと思ったの。フリューネを誘ってから。どうだった? ニルヴァーナの大冒険は」
「とにかく、広くて険しくて厳しくて。でも未開拓だからワクワクしっぱなしだったかな? リネンはどうなの?」
「私は……うん、大変だけど楽しんでる、かな?」
 これまでの一年間を振り返る。今ではこの『中継基地』で大規模な祭りが行われるほど、月日が経っているのだ。感慨深いだろう。
「確か、大瀑布の探索にでかけたのが五月だっけ。あの時は大変だったね」
「まったくね。初日は砂嵐がひどくて前に進めなくて、どうしろっていうのよ! って感じだったわ」
「でも最終的には、壮絶が体現されたかのような大瀑布があった……。写真を撮ったのを今でも覚えているもの」
「あれから数ヶ月か。うん、いろいろあるものね。だからいろいろあった分、今日楽しまないとね!」
「そうね。……あら? あそこだと何をしているのかしら? ちょっと言ってみましょう」
「よーし、全速力よ!」
「ちょ、ちょっと! いきなり手を引っ張らないでよ!」
 駆け出した二人が目指す先。きっとのその先には素敵な未来も待っているのだ。