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闇狩の末裔たち

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闇狩の末裔たち

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続1

 サレインで迎えた夕刻。
 集落の中央に位置する尖塔前の芝生広場にて。
 綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)は、サレイン集落に伝わる祭事の舞を習い終えたところだった。
「アディが収穫の喜びを表現するなんて、素敵だわ」
「ありがとう、さゆみ。ですが、あなたの演じる闇狩族の演舞には敵わないと思いますわ」
「そんなことないよ」
「ふふ。謙遜している」
「もおっ、繊細で可憐な表現は折り紙つきだよ。お互いにだいぶ長めの振り付けだったけど、私たちが協力すればゼッタイに演じきれるよ」
「そうね」
 ふたりの表現力は相反するものである。
 明るくきらびやかで幸せの歌が似合うさゆみと、朝凪に澄み渡った湖面の如く物静かなアデリーヌ。
 収穫の喜びをさゆみが演じれば、それはもう華やかな一時を紡ぎ出せるし、闇の魔物を討つ狩り人の躍動をアデリーヌが表現すれば、その苛烈な鋭さが胸を打つことに他ならない。
「それにしても、ここサレインの住人たちは穏やかな人たちばかりで安心いたしましたわ」
「同感。この森の住人に詳しい藤原 優梨子さんが居てくれたお陰で、すんなりと馴染むことができたよねっ」
「感謝しなければなりませんわ」
 そこへ、タヌキの容姿を持ち合わせた獣人がやって来た。
「アンタたちが今晩の祭事の舞をやってくれる人か。えらいべっぴんさんだなあ。森の外の世界では、何かやっているのかい?」
 突然の質問にさゆみは驚いたが、
「私とアディは、ふたりで一緒に歌を歌っているんです。コスプレ……とか言っても分かるかなあ」
 と返答する。
「コスプレ? あー、分かる分かる。魔法少女とかいうヤツのマネとか、我々獣人のマネをするヤツだろ? 分かるよお」
「獣人のマネ……着ぐるみのことをおっしゃっているのですわね」
「そうか? まあいいんだけども」
「あの、もしよかったらなんですけど、今晩の宴の時に、私たちふたりで歌をプレゼントしようと思うんです。いかがでしょうか……」
「外の世界の歌かあ、何だか面白そうだな。儀式が終わって宴になったら自由にやってくれていいよ」
「はいっ、ありがとうございますっ」
「ところでお前さんら、闇狩について知ってるのか?」
「いえ……詳しいことは分かりません」
 その答えに気をよくした彼は、闇狩について語り始めた。
「では教えよう。遙かな昔、この森では夜な夜な魔法のまったく通じない魔物が現われて集落を襲っていたんだ。そんで、そいつのことをたくさんの集落が力を合わせて退治していたというのが、闇狩のルーツらしいんだ。本当かどうか分からないけどな」
「それが祭事の舞で表されていたことなんですね」
「詳しいことなら首長が知ってるんだが、儀式の時に御焚き上げをする祭具も、闇狩に関係があったらしい」
「どのような儀式なのか、興味が湧きますわね」
「まあ、それは今晩にでも分かることじゃないか。おっと、そう言えばお前さんたち、日が暮れたら森の中を歩くのは止めとく方がいいからな。ここ最近、魔法の通じない魔物というヤツが、本当に出るって噂が流れてるんだ。森の外から来た人らにも教えておいてやった方がいいぞ。それじゃあなっ」
 そう言って止める間もなく、タヌキの獣人は立ち去ってしまった。
「今のお話は、遺跡を探索している人たちも役に立ちそうですわね」
「うん。アディ、(読み:ハンドヘルドコンピューター)HCの通信機能で、情報を共有しておきましょう」
「そうですわね」
 さゆりとアディが得た情報は、様々なHCを通じて情報が取り出せるようになった。