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第三回葦原明倫館御前試合

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第三回葦原明倫館御前試合

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三回戦


   審判:プラチナム・アイゼンシルト
○第一試合
ジョージ・ピテクス 対 北門 平太(宮本 武蔵)

「面白い奴だな、貴様」
 櫂を削った木刀を担ぎ、平太(武蔵)はにやりと笑った。
「そちらこそ、なかなかに面白いお人じゃのう」
 ジョージも白い歯を剥き出しにする。
 しかし、ジョージが裸になっても平太(武蔵)は何とも思わないようで、全く動揺を誘えない。飛び掛かったジョージの喉に突きを食らわせ、平太(武蔵)は腰を落とした。
 その姿勢に、ジョージは相手が抜刀術を仕掛けてくると悟った。
「させん!」
 ジョージは平太(武蔵)の顔を引っ掻いた。顔面に三本ほどの傷が走る。
「ッツ!」
 唇が腫れ、平太(武蔵)はその部分をぺろりと舐めた。
「やるなあ!」
 ジョージは地面に着地するや、平太(武蔵)の急所――下半身で最も大事なところ――目掛けて再び地面を蹴った。
「させん!」
 平太(武蔵)がとんっ、と横へ飛び、木刀を振り下ろす。ジョージのちょうど腰辺りに、木刀が叩きつけられた。
「一本!!」
 プラチナムの軍配が上がった。

*   *   *


「はーいはいはい、配当はこっちだよー」
「負けた人は残念やったな〜」
 賭け率は五分五分だったが、ジョージの敗退に残る全財産を賭けていたため、前回の負けを取り戻すに十分な儲けだった。
 これはオイシイ。
 生駒とシーニーはニッと笑い、次の試合の賭けを周囲にこっそり呼びかけた。

勝者:北門 平太(宮本 武蔵)


○第二試合
戦部 小次郎 対 ルカルカ・ルー

「いや大体そもそもですね、ハリセンですよ? 三回戦まで来られるとは思わないじゃないですか。これは神の奇跡ですね」(敗者インタビューより)

*   *   *


「必殺、ツッコミアターーーーック!」
 半ば自棄になっているのか、小次郎はハリセンを持って真正面から突っ込んだ。ルカルカはひょいと避けて、木刀を二つとも彼の背中に叩き込む。
「ぬおっ! 背骨が折れた!?」
「折れたら生きてないと思う」
「四の五の言うものではありません!」
 再びハリセンで殴り掛かるも、ルカルカの木刀とぶつかり合い――というより一方的にぐしゃぐしゃにされ――ハリセンは、哀れ昇天となった。
「これで決めていい?」
「何のっ、真剣白刃取りですっ!!」
 そもそも白刃ではない。
 そして木刀二刀を、それぞれ片手で受け止めようとして、小次郎の十本の指は折れた。

*   *   *


「なんか勝った気がしない……」(勝利者インタビューより)

勝者:ルカルカ・ルー


○第三試合
レキ・フォートアウフ 対 夏侯 淵

「ルカが四回戦まで勝ち抜いたのだ。俺も頑張らねばな。……しかしこれで勝ったら、ひょっとしてルカとやり合うのか?」
 淵はそんな不安を抱きながら、試合場へ出た。
 レキの武器は競技用ランスだ。間合いに関しては、淵に利がある。だが、一概にそうと言えないのが戦いの怖さ。また殺傷能力が低いが故に、敵も思い切った攻撃が出来るのが、実戦よりいいところだろう。
 しかし淵は、まず遠くから様子を見ることにした。レキがランスでそれを跳ね返す。二射目を放った――しかしその時既に、レキの姿はそこになかった。
「何!?」
 実戦でないが故に、思い切った攻撃が出来る――レキはそれを実行した。二射目が当たるのを覚悟の上で特攻をかけたのだ。
 ドンッ、とまるで胸に穴が開いたような衝撃を受け、淵の体は宙を舞った。プラチナムが確認し、レキの勝利を告げた。

勝者:レキ・フォートアウフ


   審判:柊 恭也
○第四試合
麻篭 由紀也 対 ザーフィア・ノイヴィント

「由紀也、しっかり頑張るのですよ」
 一回戦の前になるが、瀬田 沙耶に言われて由紀也はじん……と来た。
「沙耶ちゃん、応援してくれるんだ……」
「遠征部隊とやらに選ばれれば、ハイナ様の目的に報いるチャンスですし、ぜひとも上位入賞取ってきてくださいませ♪」
「……あ、やっぱりそっちですか」
 そして今現在、沙耶はハイナと歓談中。由紀也のことは、一切見ていない。分かってはいたが、どうもテンションが上がらない。
 そういえば、と由紀也は平太を思い出した。
 中身の武蔵とも一応は面識があるが、あの男はあまり周囲の人間を覚えないらしい。ベルナデットの件もあるので声を掛けたかったが、会話にならないのでは仕方がない。
 それより、試合に集中しよう、と由紀也は思った。

 それにしても、対戦相手のザーフィアと由紀也はなかなか気が合うらしい。最初は様子見、次は同じ場所を攻撃――おかげで相殺されてしまった。
 ならばと、由紀也は立ち止まり、すうっと息を吸い、止めた。寸分違わず、狙った場所へ当ててみせる。
 引き金を引く。
 確かに弾は、狙い通りのところへ一直線に飛んだ。直前までザーフィアが立っていた場所へ。その胸の辺りへ。
 だがザーフィアは既に由紀也のすぐ横にいた。
「そういえば」
 振り下ろされる大剣に、由紀也の体は沈んだ。「怪我をしたくなければ避けてくれと君には言ったかな?」

*   *   *


「情けないこと」
 由紀也が聞いたらショックで一週間は寝込みそうな一言を、沙耶は放った。
「まあ、そう言わずに。頑張ったでありんしょう」
「ハイナ様がそう仰るなら……由紀也はお役に立てましょうか?」
「ええ、期待しているでありんすよ」
「それならば、今は失礼いたします」
 沙耶は悠然と立ち上がった。
「由紀也に包帯ぐらいは巻いて差し上げましょう」
 ばさりと着物の裾を翻し、沙耶は救護室へ向かった。

勝者:ザーフィア・ノイヴィント