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リアクション
■幕間:武道大会ソロ部門−葛城VS紫月−
「これより蒼空学園分校、春季武道大会ソロ部門、第一回戦を開始するのである!」
馬場の言葉に促されるように闘技場に一組の男女が姿を現した。
葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)と紫月 唯斗(しづき・ゆいと)の二人だ。
互いに距離を取り既定の位置へと歩み立つ。
「始めいっ!」
ゴオォォンという銅鑼の音が会場に鳴り響いた。
二人はほぼ同時に動いた。駆け足で互いの距離を一気に詰める。
「むうっ!」
紫月は相手の出方に眉をひそめた。
(俺と同じ近距離戦か……距離をおくつもりはないのか?)
紫月の心境を知ってか知らずか、葛城は笑みを浮かべて拳を繰り出した。
「よっ! ほっ! せいやあっ!!」
「――っと、ふんっ!」
迫る拳を同様に拳で打ち払う。
バッ! ババッ! ガッ、と拳が動き、ぶつかりあい、手数の勝負になった。
司会役の馬場が口を開く。
「格闘戦が始まった様であるな。どちらも相手にペースを掴ませないよう、攻め手を防ぎ合う戦いになっておる。これは長期戦となるであろうな」
彼女の言うとおり打っては防ぎ、防いでは打つという地味な戦いになった。
だが見る者が見れば高度な技術の応酬であった。
視線をフェイントに使い、次に狙う部位を変え、搦め手を狙い合う。
しばらくの攻防の後、場面は動いた。
「捕まえたぞ!」
葛城の腕を紫月が掴んだ。
闘気が葛城から紫月へと流れていく。
(これは……まずいでありますね)
危険を察知し、振りほどこうと空いた拳で相手の顔を狙い打つ。
だが拳が当たる前に腕は自由になった。
見れば紫月の両手からは強い圧迫感が放たれている。
軌道がずれた彼女の拳は空をきった。
「これでどうかな!」
鋭い一撃が葛城を襲った。
紫月の拳が彼女の服を貫く。服が裂けた。
「あ、危なかったであります」
彼女は服を身代りに避けていた。
紫月の腕に服がまとわりつく。
「空蝉か!? だがこれなら……」
葛城は紫月の指が動くのを見逃さなかった。
不可視の糸が葛城を捕えようと動いた。
しかし――
「まだでありますよ!」
「またかよっ!?」
彼の視線の先、服が糸に絡まるのが見えた。
振り返れば肌を露わにした葛城の姿があった。
「ただ脱ぐだけではないでありますよ――っと!」
先ほどよりも早い一撃が紫月に迫る。
虚を突かれたのだろう。彼の鳩尾に深々と拳が突き刺さった。
「ぐぅっ!?」
「見たでありますか。自分は脱げば脱ぐほど強くなるでありますよ」
「……変態かよ……いてぇ……」
紫月は顔を歪めながら拳を構えた。
だが勝負はそこでついていたのだろう。
紫月はその後も善戦するが徐々に手数で押されてゆき、敗北を喫することとなった。
「全裸になるまでも無かったであります」
「なられてもこっちが困る……」
半裸の彼女を見上げながら紫月はため息を吐いた。
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