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賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山

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賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山
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リアクション

 花見会場、夜光桜の下。狐火童登場前。

「……双子ちゃんがお花見会を開くって珍しいねぇ、明日は槍でも降って来るかな?」
 天禰 薫(あまね・かおる)は平和な花見風景に驚きつつ眺めていた。双子を知る者として平和は有り得ないものだと信じているから。
「夜光桜とは綺麗じゃないか。酒が進むよ」
 熊楠 孝明(くまぐす・よしあき)はのんびりとシートに座り、夜光桜を肴に超有名銘柄の日本酒を盃に注いで飲み進める。ただ、酔う様子は微塵も無い。
「確かに綺麗なのだ。でも、何だかウラがある気がするんだよねぇ……孝高も、そう思うのだ?」
 薫は夜光桜を見上げた後、花見会場をうろうろする双子の様子をにらんでいる熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)に声をかけた。孝高が何を考えているかは分かる。双子の事を考えていると。
「今までの事を考えると確実だろう」
 孝高は今夜も何かあると確信していた。あの双子に関わって何も無いという事は今まで無かったからだ。
「キュピピ! ピキュウ!(わたぼ、お花見はじめて! 光る花びらきれい!)」
 わたげうさぎロボット わたぼちゃん(わたげうさぎろぼっと・わたぼちゃん)は光る花びらが舞う中、楽しそうに跳ね回っていた。
 とにかく、わたぼちゃんは夜光桜を楽しみ、薫と孝高は双子を密かに監視をし、孝明は花見を楽しむふりをしながら監視をしていた。
 それからすぐに狐火童の情報が入って来て予想通りだと何も驚きはしなかった。

「泣いている妖怪、か。花見の席を設けたのは感心だが、あいつらがそれだけのはずが無いよな」
 孝高は双子がこの山のために花見を計画した事には感心するも狐火童を使って悪戯をしようとしている事には呆れていた。
「……狐火童ちゃんを放っておく事は出来ないのだ」
 薫は双子の思惑がどうであろうと狐火童を放っておく事は出来ず、遊ぶつもりだ。
「面白い花見になるねぇ」
 孝明は盃に注いだ酒を一口、笑いも一口洩らした。
「キュピゥ、ピキュ(わたぼ、狐火童ちゃんとあそぶ)」
 わたぼちゃんも狐火童と遊ぶ気満々だ。
 この後、狐火童が出現しても薫と孝高は双子を密かに監視していたが、北都達がヒスミをセレンフィリティ達がキスミと行動を共にしている間は少しだけ息抜きをしていた。

 薫達の前に狐火童が登場。
「ほら、泣かないで? 我と一緒に遊ぼうなのだ」
 薫は自分の前に現れた狐火童に優しく声をかけ頭を撫でてシートに座らせた。
「……その妖怪と遊んであげるのか……優しいな、お前は。双子の方は俺が見ておこう」
 孝高は狐火童を薫に任せ、双子の監視に注意を注ぐ事に。とは言っても遊んでいる薫を見守る事は忘れない。
「任せたのだ」
 薫は狐火童と遊ぶ事を優先した。せっかくの花見なのに泣いているのがあまりにも可哀想だから。
「キュピュ!(狐火童ちゃんなのだ)」
 わたぼちゃんは初めてのお花見に初めての狐火童と初めてづくしに大はしゃぎ。
「あ、そうだ。お菓子を持ってきたんだ。わたぼちゃん、お食べ」
 孝明は思い出したようにどでかマシュマロを取り出して小さく千切って差し出した。
「ピキュ? キュピピィ〜♪(マシュマロ? 食べる〜♪)」
 わたぼちゃんは嬉しそうにマシュマロを受け取りはむはむと食べていた。

「あれは双子だな。二人でいるという事はおおかた逃げ出して来たな」
 孝高は仲良く並んで歩く双子を発見した。先ほどまで別行動していたはずが今は一緒だ。考えられるのは逃亡しか有り得ない。双子を知る北都達とセレンフィリティ達が早々に解放するはずがないからだ。
「……双子ちゃんなのだ。我、連れて来るのだ。狐火童ちゃんを少しだけお願いするのだ」
 薫は他の花見客の安全を守るために双子を目の届く所での監視を提案し、狐火童を少しだけ仲間に任せてすぐに行動を起こした。
「花見は人数が多い方が楽しいからね。わたぼちゃん、あの子たちにもあげてきて」
 孝明は適当に薫を見送った後、わたぼちゃんをもう一度呼び寄せた。
「ピ? キュピ、ピキュッピィ?(なあに? 狐火童ちゃんたちに、マシュマロあげるの?)」
 わたぼちゃんはぴょこんと孝明の所へ行き、マシュマロを受け取るなり『サイコキネシス』で狐火童に渡した。狐火童は受け取るなり黙々と食べていた。

「双子ちゃん!」
 薫は元気に声をかけた。
「……あっ」
 呼び止められて足を止める双子は薫を見るなり嫌な顔をし始めた。
 これまで嫌な目に遭っているからだ。主に薫と一緒にいる熊の人達に。
「我達と一緒にお花見をするのだ。狐火童ちゃんも一緒なのだ」
 薫はにこにこと花見に誘う。監視などの思惑はしっかりと隠して。

「……それは……」
「いや、いるんだろ?」
 渋る双子。気になるのはやはり薫と一緒にいるだろう熊親子。

「大丈夫なのだ、孝高と孝明さんは大人しくしていると思うのだ。余程の事がなければ……」
 薫は自分達のスペースを指し示しながらにっこり。
「……」
 双子は黙って薫達の花見席を見ていた。怖い人が二人と少し違うような見覚えのあるわたげうさきがいた。
「……おい、あれはかかと落としの奴か」
「やっぱりやめようぜ」
 怖い人が三人もいると知るなりさすがの双子も気が引ける。双子はわたぼちゃんを蹴りやかかと落としをするわたげうさぎの獣人と勘違いしていた。よく似ているので仕方は無いのだが。
「違うのだ。ロボットのわたぼちゃんなのだ」
 薫が軽くわたぼちゃんの紹介をした。
 ロボットだと聞いた途端、
「……ロボットか、行ってみるか」
「気になるしな」
 双子は興味津々という表情に変貌して先ほどまで怯えていたのが嘘のように薫について行った。

「よく来たね」
 孝明は初めて会った初夢の時と同じように穏やかな笑顔で双子を迎えた。
「……おい双子、花見の席を設けた事には感心するが、もし悪戯を企んでいるなら……わかっているな? 大人しく花見をしつつ狐火童と遊んだ方が、お前達の身の為だ」
 孝高は手慣れた様子で双子を脅した。
「何だよ、企むって今日は花見だぞ」
「無礼講だぞ」
 双子は揃って孝高に噛み付いた。痛い目に遭わされた事があるというのに負けずに吠えるあたりは図太い神経の持ち主である。
「花見だからねぇ」
 孝明は酒を楽しむふりを続けながら寛容さを見せる。
「……」
 双子は孝明の優しい言葉に嫌なものを感じるものの人工知能を持つロボット、わたぼちゃんをちらちらと興味の目で見ている。
「わたぼちゃん、双子ちゃんに挨拶をしておあげ」
 孝明は双子がわたぼちゃんに興味を抱いている事を知るなり、挨拶を促した。
「ピキュウピュッ!(わたぼちゃんだよ)」
 わたぼちゃんはぴょんと跳ねながら可愛らしく挨拶をする。双子には何を言っているのか分からないが、それはどうでもいい事。

「すげぇもふもふしてるじゃん」
「これがロボットか!?」
 双子はわたぼちゃんのもふもふした毛並みを触って確かめては驚いていた。
「ピキュッピキュ(わたぼ、お掃除も出来るよ)」
 わたぼちゃんも楽しそうに双子の相手をしていた。
 双子がわたぼちゃんに夢中の間にすっかり孝高と孝明が左右を固め、双子の逃亡をしっかりと防いでいた。薫は狐火童を膝に座らせ頭を撫でたり一緒にマシュマロを食べたりと相手をしつつ双子と仲間達の様子を見守っていた。

 そして、騒ぎは起きた。

「ティセラお姉様と一夜を共にする寝袋〜」
 寝袋を探すレオーナ。

「見つけたのです」
「さすが、ポチさん」
 お揃いのアクセサリーを探すポチの助とペトラ。

「特製弁当が盗まれたのじゃ。あ奴らの仕業じゃな」
 特製弁当を盗まれた羽純。犯人に察しがつくため動かず。

「ダリル、狐火童を追いかけるより早い方法があるよ」
「……あいつらの所に行くか」
 ハイナの花束を盗まれたルカルカとダリルは狐火童から双子捜しに切り替える。

「……自分のライフルも盗まれたであります!」
「首謀者はあの二人ね」
 ライフルを盗まれた吹雪と首謀者に見当がついているコルセア。この途中、思わぬアイテムを入手する事に。

「人の物を盗んだらだめだよ」
「こりゃ、あいつらの仕業だな」
 会場で鬼ごっこをしていた北都と白銀も騒ぎに気付き、狐火童の盗みをやめさせようとするが相手が相手だけに上手くいかない状態である。首謀者はもう分かっているのですぐにそちらに向かった。

 誰も彼もが大切な物を狐火童に盗まれてしまったのだ。

「……急に騒がしくなったのだ」
 薫は妙な慌ただしさが会場に蔓延し始めた事に気付き、小首を傾げた。
「もしかして君達何か知っていたりするかな?」
 孝明はにこやかに双子に訊ねる。
「おい、キスミ。俺達の腕輪も無いぞ」
「なっ、何でオレ達も……ヒスミ、行こうぜ」
 孝明のにこやかさに不穏を感じただけでなくいつの間にかいつも見分けのために身に付けている銀の腕輪がそれぞれの腕から消えていた。孝高に脅された時に盗まれたのだ。
 双子は腕輪と恐怖のためにここ離れようと立ち上がった。

 しかし、
「……せっかくの花見だ。双子、お前たちもお菓子食べろよ、ほらほら」
 孝明は二体の等身大マリオネットに命じて双子を羽交い絞めにさせてどでかマシュマロを双子のロに無理矢理押し込んだ。

 押し込み終わり、等身大マリオネットから解放された双子は
「のわっ!! けふっ、げふっ」
 苦しそうにマシュマロを飲み込もうと咳き込みつつも這うようにこの場から離れようとするがもう遅かった。

 光る花びらが舞う中、孝高は巨熊に獣化して『隠形の術』で双子の背後に接近し、
「ぐがぉおーー!!」
 『隠形の術』を解き、双子を引き裂かんばかりの形相で叫び叱りつける。その恐怖でマシュマロはいつの間にか喉を通り抜けた。

「!!!!!」
 双子は突然現れた巨熊に硬直して逃げる事を忘れてしまった。

「今日は花見だろ!!」
「オレ達、悪い事なんか……」
 双子は怯えながらも反論する。

「大人しく花見をする方が身のためだと言っただろう」
 巨熊の孝高はぐっと双子に顔を近づけ、脅しをかける。

「何だよ、こんなの聞いてないぞ!!」
「そうだそうだ」
 双子は自分達を誘った薫をにらむ。

「我はきちんと言ったのだ。余程の事が無い限りと」
 薫は膝に狐火童を乗せながら答えた。

「……!!」
 双子ははっとした。初夢を歩き回っていた時の薫の誘い言葉と似ていたから。はめられたと。

 そこに次々と首謀者たる双子をお仕置きしようと人が集まって来た。

「自分のライフルを盗ませるとはいい度胸でありますな」
「……二人の大切な物を持っているのだけど」
 吹雪と狐火童と手を繋いだコルセアの手には二人の腕輪があった。鉄槌を下すだけでなくきちんと助けが必要ならば助けるのだ。

「そ、それは俺達の」
「どうして持ってんだよ」
 まさかの人物が持っている事に驚く双子。

「我が取り返したのだよ」
 ナノ拡散をしていたイングラハムが姿を現し事情を話した。ナノ拡散で密かに双子を監視していたところ、狐火童が腕輪を盗むのを発見し、たくさんある手足で絡め取り、取り返してコルセアが手を繋ぐという新しい遊びを始めて大人しくさせたのだ。

「これ以上痛い目に遭いたくなければ、素直に話せ」
 事情を話すように促すダリル。

「……驚かせようと思って、物取りゲームって言って」
「……賑やかになるかなぁと」
 双子は小さな声で事情を話し始めた。双子がこそこそしていたのは花見会場にいる人の物を盗ってどこかに隠すゲームをするよと持ちかけたのだった。そのため会場にいた自分達も巻き込まれてしまったのだが。

「確かに違う意味で賑やかにはなったけどね。早く持ち主に返すようにした方がいいと思うよ」
「我もそう思うのだ」
 ルカルカと薫がこの場を収めようとする。

「それじゃ、つまんねぇ。なぁ、キスミ」
「おう。今日は無礼講の花見だろ」
 双子は不満顔でルカルカと薫をにらむ。
 懲りない双子に集まる皆は彼らを脅すためそれぞれ襲う準備や武器を構える。
「つまり逆さ吊り以上の目に遭いたいという事だな」
 皆を代表してイングラハムが不気味に目を光らせて双子を大人しくさせた。

 皆の本気の様子に双子は本能的に危険だと悟り
「す、すみませんでした!!」
 心が折れて深く土下座をした。二人の声と土下座する動作はさすが双子ピッタリだった。
 皆は馴染みの展開に呆れるばかりであった。

「反省したのなら早く狐火童にやめるように言うんだよ」
 北都はやるべき事を双子達に言った。

「……仕方無いなぁ」
「せっかくの花見なのによー」
 土下座から顔を上げた双子はぶつくさと不平を洩らした。全く懲りていない。
「……何か言ったか?」
 白銀が懲りない双子に呆れ気味に言う。
「……」
 双子は周囲を見回した後、黙った。これ以上喋ったら大変な事になると。
 この後、皆が見守る中、狐火童に盗った物を持ち主に返すように言って場を収束させた。
 集まっていた者達もそれぞれ元の場所に戻って行った。

「……腕輪を返すわ」
 コルセアは騒ぎが収まったのを確認してから双子に腕輪を返した。
「サンキュー」
「これで元通りだな」
 ヒスミは右にキスミは左に腕輪をはめた。これで騒ぎは完全に収まった。

 そこに
「ロズフェルのおにーちゃん、お弁当とお茶をどうぞ」
 戻って来た特製弁当を抱えたルルゥがやって来た。

「おおっ」
「いたたくぜ!」
 双子は持って来たのがルルゥだったので疑う事なくヒスミは鶯餅、キスミは桜餅を口に放り込み、緑茶を飲んだ。

「ぐぉおっ!!」
 双子に襲うのは辛さと苦みのハーモニー。口の中がカオス化し、声なき声で必死に水を求める。鶯餅はわさび粉末たっぷり仕様で桜餅はレッドペッパー練り込み仕様だったのだ。緑茶は青汁だったりする。ちなみに双子が手を付けなかった赤黄緑の三色団子は唐辛子・からし・わさび練り込み仕様であった。

「羽純おねーちゃんが考えたお弁当だよ」
 ルルゥが双子にとって恐怖の名前を口にした。
「!!」
 近くにあった水を注ぎ込み、一命を取り留めた双子は青い顔になった。
「妾が考案した特製和菓子が美味しかったじゃろ。真面目に狐火童達の相手をする気になったかのぅ」
 ルルゥの背後から羽純が現れた。皆に脅されても懲りずに狐火童と一緒に悪さをするだろうと読んだ羽純がとどめを刺すためにやって来たのだ。
「……」
 まだ口の中に辛さが残る双子は渋々という顔でうなずいていた。皆に何もかも見透かされていたのだ。
「ならば、美味しい和菓子を振る舞うとしようかのぅ」
 羽純は後ろ手に隠していた弁当箱を出して中身を双子に見せた。
「……」
 疑り深い目で大量の和菓子が入った弁当箱を見つめるばかり。
「今度はちゃんとした物じゃ。皆も食べるがよい」
 羽純は双子の様子に苦笑し、薫達にも勧めた。
「頂くのだ」
「ピキュピ(おいしそう)」
 薫とわたぼちゃんは薫が持って来た甘い本物の和菓子が入った弁当箱に手を伸ばし、美味しく頂いた。狐火童も食べていた。

「俺も食べるぞ」
「オレも」
 薫とわたぼちゃんが無事なのを確認してから双子も和菓子に手を伸ばした。
「……のんきだな」
 いつの間にか獣人に戻った孝高は双子の図太さに呆れてから薫達の様子を楽しそうに見守っていた。
「今夜はなかなか面白い花見だった」
 孝明が盃に口を付けながらぽつりと言った。
 双子は皆の監視の目が光る中、大人しく狐火童の相手をしていた。

 寝袋を取り戻したレオーナは
「ティセラお姉さま、寝袋を無事取り戻しましたのでこれで……」
 猛スピードでティセラの元に戻っていた。
「……そ、それはお断りさせて頂きますわ」
 祥子と酒を楽しんでいたティセラは即レオーナの申し出を退けた。
「……そうですか」
 レオーナはしゅんと肩を落としながら諦めた。
 この後、祥子とティセラは飲み疲れてテントで休んだ。そのティセラの足元にレオーナが丸くなって眠っている事などティセラは知るよしもなかった。

 早朝。
「あ、貴女」
 ティセラが目覚めた時、目の前にレオーナが正座していた。
「ティセラお姉さま、おはようございます。ふつつか者の私ですが、お友達……」
 そう言うなりレオーナは深々と土下座をし、愛の告白を始めようとするが、
「……お花見で貴女が優しい方だというのは分かりましたわ。ですから普通の友人としてという事で仲良くさせて頂けるのならとても嬉しい事ですわ」
 ティセラの言葉が遮った。レオーナが花見で見せたのは戸惑う動作だけでなく役に立つ優しい姿もあった。それがティセラが友人としてならと言わせた。
「ティセラお姉さま、今後ともよろしくお願いします!!!」
 レオーナは頭を上げて感激で声も大音量になった。
「…………」
 ティセラはレオーナの様子にシャンバラ宮殿の警備時の事を思い出し、一抹の不安を覚えていた。
「……大丈夫、ティセラ?」
 ティセラと同じように起きていた祥子は優しくティセラを気遣っていた。

 花見終了少し前。
「……あ、あの、全て完売しましたね」
 リースは完売に嬉しそうにしているが、マーガレットと隆元は違っていた。

「また引き分けという事ね」
 マーガレットは不満顔で隆元をにらんだ。
「残念であったな、小娘よ。あれほどクレープと大口叩いておったというのにな」
 隆元は小馬鹿にしたようにマーガレットの相手をする。
「……むっ」
 マーガレットは恋活祭の時と同じようにむっとしていた。
「……えと、どれもとても美味しい物だったから完売したと思いますよ。あ、あの後片付けをしませんか」
 リースは何とかしようとマーガレットと隆元の間に入った。おどおどながらも発言は真理を突いていた。クレープも和菓子も飲み物もどれかに劣る事なく美味しかったため売れ残りが無かったのだ。
 リース達は何とか後片付けを終わらせる事が出来た。

 時が流れて夜明けが訪れ、優しい光が射し、夜の闇がゆっくりと薄れ行く。花開いていた桜もゆっくりと閉じて眠りに就く。
 それと同時に悲しみをその身に宿した狐火童達の姿も現れた時と同じように突然消えた。楽しげな子供の笑い声を置き土産に。
 参加者達はそれぞれの花見を楽しめた事に満足していた。
 妖怪の山の妖怪と人との関係は少しだけ修復した。完全に戻るのもそう遠くないだろう。狐火童達はその未来を今回の花見から見出し、涙を止めたのだ。
 今回の双子の処遇は学校から少しだけ手加減のある説教だった。手加減の理由は悪戯をしつつも人と妖怪の関係修復に少しだけでも役に立ったからだそうだ。

担当マスターより

▼担当マスター

夜月天音

▼マスターコメント

 参加者の皆様お大変疲れ様でした。
 様々な楽しいアクションをありがとうございました。
 少しでも文章に表現出来ていれば幸いです。

 皆様のおかげで妖怪と人の関係にも少しだけ希望が見えてきました。
 ただ、住人である妖怪も何やら抱えている者がいたり何度となく痛い目を見ようとも懲りないロズフェル兄弟とまだまだ賑やかになりそうです。

 それではまた別のシナリオでお会いした際はよろしくお願いします。