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リアクション
【金鋭峰 二】
『ただ今より、七人の悪魔ゲイ人とコントラクター達による団体対抗戦、時間無制限七本勝負を行います』
ダリルが、相変わらず車内放送を淡々と流している。
こうなってくると、車掌なのかリングアナウンサーなのか、よく分からんな。
しかし、悪魔共が次なる手に打って出てきた以上、こちらも応じなければならない。
「ルカルカ、もうその悪魔は良い。敵を迎え撃つぞ」
「はい、団長!」
今の今まで、痴漢悪魔を徹底的に殴り倒していたルカルカだが、私のひと声ではっと我に返り、すぐさま、屋根の上に登る準備を始めた。
私も、国軍総司令官としてこの戦いを見届ける義務がある。
カルキノスと淵が私の護衛として、屋根上に登る手伝いをしてくれたが、いささか仰天したことに、特別仕様列車の屋根の上には七つのリングが設置されていた。
悪魔共め、随分と用意周到ではないか。
我々に続いて、ルース、理沙、セレスティア、ゆかり、ザカコ、エース、セレンフィリティ、そしてセレアナといった顔ぶれが屋根の上に姿を現した。
「うはー、痴漢退治からいきなりプロレスかー。こんな展開、普通読めませんぜー」
必死の形相で屋根上に登ってきたアキラが、感心しているのか呆れているのか、よく分からない声をあげているが、その気持ち分からんでもない。
何せ、こうなってくると女装など何の意味もないのだからな。
他にも女装している連中は大勢居るが、リングでの戦いとなると、その女装が却ってネックとなっている。
「えぇい、このスカートってのは、動きにくいったらないねぇ!」
ルースが、半ばやけくそ気味に叫んでいる。
同じくザカコとエースも、女装が災いして実力が出せない。いや実際、こんな展開になるなど、私自身、全く予想だにしていなかったからな、無理もなかろう。
その一方で理沙、セレスティア、ゆかり、セレンフィリティ、セレアナ達は、本来の実力を発揮しているようだ。
相手は、悪魔ゲイ人・牛、とかいう角の生えた巨漢である。
尤も、実力を発揮しているとはいっても、この悪魔ゲイ人・牛は相当に手強い相手のようだ。
「俺のタイフーンミキサーの前には、貴様らのような軽い奴らは相手にならん!」
その宣言通り、悪魔ゲイ人・牛の突進攻撃を受けたコントラクター達は、次々とリング外に放り出されていく始末だった。
「あ、危ない!」
空飛ぶ箒に乗って特別仕様列車に並走していた垂が、リングから振り落とされたコントラクター達を受け止めては、屋根の上に下ろすという作業に勤しんでいる。
彼女が居なければ、悲惨な結末が待ち受けていたことだろう。
悪魔ゲイ人・山と対峙しているのは、舞香、某、リョージュ、竜斗、ミリーネ達であった。
このうち、某とリョージュはいつもの実力が出せていない。格好が格好だからな、仕方がなかろう。
まともに勝負出来ているのは舞香と竜斗、そしてミリーネだから、実質は三対一という形である。
「んもう! 何よこいつ! 目茶苦茶、堅いじゃない!」
舞香が蹴りの嵐を叩き込んでいるのだが、悪魔ゲイ人・山の鉄壁のような防御力には、まるで効いていない様子だ。
竜斗とミリーネも同時に攻撃を仕掛けているが、まるで歯が立たない。
矢張り痴漢撃退を前提として作戦を立ててきていたのだから、無理もなかろう。
その一方で、良い展開を見せている者達も居る。
最初からプロレスでの戦いを用意していたジェライザ・ローズ、そして肉弾戦に備えていたあゆみやルカルカといった面々である。
特にジェライザ・ローズの『魔法少女ろざりぃぬ』としての実力は、悪魔ゲイ人・ミイラを圧倒しているではないか。
逆水平チョップからのサミングで悪魔ゲイ人・ミイラを仰け反らせると、その頭を掴んでコーナーに叩きつけている。流石に、手慣れているな。
そしてダウンしたところを、ウォール・オブ・ろざりぃぬ(所謂、逆エビ固めだが、その締め上げ方が半端ではない)でぐいぐいと固め切っている。
「馬場校長! Ask him!(彼に降参か聞いてくれ!)」
ろざりぃぬの叫びに応じて、馬場校長がレフェリーよろしく、悪魔ゲイ人・ミイラにギブアップかどうかを問いかけているが、しかしこの光景、どこかで見たような気がしないでもないな。
結局、悪魔ゲイ人・ミイラはギブアップした。
最初に連中を討伐したのは、矢張り、ろざりぃぬだったな。
「ろざりぃぬ様が糞悪魔を捕博! 女性を狙うその卑劣な行為、貴様、情けないとは思わないのか?」
ダウンしている悪魔ゲイ人・ミイラに、どこから取り出したのか、専用のマイクを向けるろざりぃぬ。
どこからどこまで、徹底している奴だな。
ところが、マイクを向けられた悪魔ゲイ人・ミイラが何か答えようとすると、ろざりぃぬは相手が喋る前にマイクを自分の口元に寄せて遮る始末だ。
「貴様の事情など関係無し! そんなに味わいたいのなら、私の妙技を食らうがいい!」
そういって片眉を吊り上げてからマイクを放り出すや、リング内を左右に駆け巡り、人民肘を叩き込んでいるではないか。
何とも、活き活きとしているな。
片やあゆみとルカルカは、悪魔ゲイ人・カセットを葬るや、苦戦している舞香、竜斗、ミリーネ達のリングに乱入し、悪魔ゲイ人・山を仕留めにかかっている。
彼女達にかかれば、連中も形無しだな。
あゆみの胸元から肉まんらしきものがずり落ちてきたのは……まぁ、見なかったことにしよう。
「ドクター……じゃなかった、ナース・ハデス! この悪魔ゲイ人達を倒す為の発明品は、何も用意してこなかったの!?」
「当たり前だ! こっちは相手が痴漢だとばかり思っておったのだ! しかし我が戦闘員達の力を借りれば、何とかならんこともない!」
怜奈に応じるドクター、もといナース・ハデスが、部下の戦闘員達を引き連れて悪魔ゲイ人・魚との勝負に臨んでいるが、しかしどう見ても戦力不足は否めんな。
アルテミスやペルセポネといったパートナー達を、自分の発明品で戦闘不能に追いやってしまったのだから、まぁ自業自得といえば、そうなのかも知れないが。
しかし、捨てる神あらば拾う神あり、だ。
ナース・ハデスと怜奈を圧倒し、すっかり油断している悪魔ゲイ人・魚の背後に、葛城少尉が段ボール箱に身を隠しながら、そっとすり寄ってゆく。
リングの中に段ボール箱など、隠れるどころか目立って仕方がないのだが、それでもきっちり気配を消す辺りは、流石というしかあるまい。
葛城少尉は両手を組み合わせ、折れた人差し指ではなく、中指を突き上げ、いわゆるファッキンな指遣いで悪魔ゲイ人・海の尻目がけて、強烈なカンチョーをお見舞いした。
これが見事、クリーンヒットした。
奴らはゲイ人を名乗るだけあって、肛門は色んな意味で弱いらしい。
へなへなと力が抜けていくのが、はた目から見ても、よく分かる。
そこへ飛び込んできたのが、松本恵だ。
「ライジング・ボルテニクス!」
彼の必殺技だそうだが、これが見事に決まった。
悪魔ゲイ人・魚はノックアウトされ、リングに散った。
これで残る悪魔ゲイ人は牛、暗黒、バネの三人なのだが、この残った三人は実力的にも相当優秀らしい。
コントラクター総出でこの三人に挑んだのだが、結局、逃げられてしまった。
倒した四人も、こちらが取り押さえる前に、暗黒が謎のブラックホールを出現させて、まんまと逃げられてしまった。
* * *
車内に戻った我々は、既に捕縛した痴漢悪魔達の連行へと移行した。
悪魔ゲイ人を取り逃がしたのは大変痛かったが、かといって、今回捕えた不埒な輩共を放っておく訳にはいかない。
「団長、お疲れ様でした」
作戦を終え、特別仕様列車を降りたところで、蓮華が自分自身も随分と疲れた様子で、敬礼を送ってきた。
私はうむ、と頷きはしたものの、心の中ではまだ、戦い終えた気分にはなっていない。
七人の悪魔ゲイ人……奴らはまた、きっとどこかで戦いを挑んでくるに違いない。
こちらも、それ相応の準備をしておかねばならないだろう。
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