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サスペンス温泉事件   探偵登場


「この事件は、痴情のもつれによって起きたに違いない!」
 アーヴィン・ヘイルブロナー(あーう゛ぃん・へいるぶろなー)は登場早々、そう宣言した。
「サスペンスといえば、もつれもつれる愛憎劇! 第1の被害者には恋人と親友がいた。しかし彼の横暴な態度に日に日に不満を募らせる親友。そしてとうとう親友が彼を殺害!」
「いや、他にも被害者はたくさんいるんだけど……」
 マーカス・スタイネム(まーかす・すたいねむ)にそう突っ込まれるが、アーヴィンは全く気にする様子がない。
「それも全て痴情のもつれ! 彼ら彼女らは全て三角、四角の複雑な愛憎関係があったに違いない! というか作ろう今すぐ!」
 何がなんでももつれさせたいらしい。
「なるほど。すると犯人は……?」
 昌毅がアーヴィンの話に乗ってくる。
「そうだな、この流れでいくと犯人は、被害者と仲の良かった身近な人物、被害者をよく知っている人物になるわけだが……」
 被害者たちを、見渡す。
 貴仁、ハデスに唯斗たち、ルカルカたち。
「怪しい人物なら一人いますね」
 黙って話を聞いていたマイアが立ち上がる。
 そして、アーヴィンの前へ。
「そこまで被害者たちの事情を知っている、アーヴィン・ヘイルブロナー。現時点であなたが最も怪しい!」
「ほほう」
「えーっ!」
 その宣言に慌てたのがマーカス。
「そんな、アーヴィンが犯人だったなんて……」
 一人スポットライトを浴び、両手をついて絶望ポーズ。
 からの、顔を上げて立ち上がり。
「いや、彼は確かに駄目人間だ。どうしようもない人間だ」
「おい」
「だけど、人を殺せる筈はないんだ!」
 庇っているのかいないのか微妙な発言。
 そしてマーカスは最後にこう結論付ける。
「犯人は……違う所にいる!」
「なるほど。ではボクらはプロとして、この人物を容疑者として挙げましょう!」
 今まで現場で指揮をしていたマイアが、一人の人物を指差した。
 それはアーヴィンではなく……
「え、わ、私?」
 のほほんと事件の推移を見守っていた、彩光 美紀(あやみつ・みき)だった。
「ちょっと待ちなさい! 美紀が犯人なわけないじゃない!」
 セラフィー・ライト(せらふぃー・らいと)の反論に耳を貸さず、昌毅が補足する。
「彼女は、事件後も何度か現場に向かい、更には現場を覗き込んだりしていたらしい」
「そ、それは……何かドラマみたいな事件が起きていたみたいで、気になってつい――!」
「なるほど犯人は現場に戻って来る――よくある話だ」
 先程の一幕を忘れたかのように、何度も頷くアーヴィン。
「しかし問題は凶器だ。証言者の話によると、凶器として使われる可能性の高い包丁が行方不明らしいな」
「そうか……犯人は凶器を隠し持っている可能性が!」
「お待ちなさい!」
 盛り上がっているアーヴィン達の前に、セラフィーが立ちはだかる。
「美紀さんが犯人な筈ありません! 私が美紀さんの無実を証明してみせます!」
「セラフィーさん……」
 感極まって涙ぐむ美紀。
 そんな彼女の肩をセラフィーは抱き……
 びりびりびり!
 美紀の服を、ひん剥いた。
「きゃぁあああ!?」
「美紀さんが凶器を隠し持っているか、その目でしっかり確認してください!」
「いやぁちょっと待ってください……!」
 美紀は上着を、スカートを剥かれ可愛らしいブラとパンツだけにされてしまう。
「まだですか? まだ、美紀さんの無実を信じていただけないんでしょうか? なら仕方ありません……」
「いや誰もそんな事言っていないのだが」
 アーヴィンの言葉を無視して、セラフィーは湧きあがる笑顔を押えながらじりじりと美紀ににじり寄る。
「許してください、美紀さん――あなたの危機を救うには、これしかないのです!」
 今まさに危機なわけだが。
「いやぁああああ!」
 ――こうして、美紀の疑いは晴れた。
 バスタオルに身を包みしくしくと涙する美紀をセラフィーはそっと抱きしめる。
 しかしそうすると、犯人は――?

「お困りのようだね!」
「ようだよ!」
 突如響き渡る、男女の声。
「誰だ?」
「迷宮入り事件も難なく解決、動の探偵シャウラ!」
「同じく、知の探偵ななな!」
「我ら、人呼んで宇宙探偵!」×2
 しゃきーん、と高い所から登場したのはシャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)金元 ななな(かねもと・ななな)
「俺達の目の黒いうちは、犯罪者は見逃さないぜ!」
「いや君達二人とも目は黒じゃないけど」
 思わず突っ込むマーカスだが、当然二人には聞こえていない。
「なななたちが来たからにはもう安心、事件なんてすぐ解決しちゃうよ!」
「さすがは俺のななな! 早速犯人を見つけようじゃないか。まずは、聞き込みだな!」
 今までの流れを無視してマイペースで捜査を始めようとするシャウラたち。
「まずは――そこの君、話を聞かせてくれないかな?」
 とりあえず近くを歩いていたレオーナ・ニムラヴス(れおーな・にむらゔす)に声をかけてみる。
 しかし。
「なんですって、この近くに殺人犯が!?」
 返ってきたのは、決して協力的ではない意見だった。
「冗談じゃないわ! 犯人らしき人たちと一緒にいられないわ! あたしは一人で温泉に入らせてもらうわ!」
 ――そして、レオーナは死体となって発見された。