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変態紳士の野望

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変態紳士の野望

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五章 弾ける裸体と最終決戦 後編



 一足先に地下を降りていた柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)桜葉 忍(さくらば・しのぶ)は散布装置を守る変態たち前で武器を構え、冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)は握った拳を上げた。
 忍は剣を構えると恭也に声をかける。
「俺たちは変態を片づける。その間に二人は散布装置を破壊してほしい」
「了解だ」
「ええ、任せてください」
 恭也が頷いてトイボックスを構えると、忍は変態たちへと突撃し、剣に意識を集中させる。
 変態たちが一斉に接近してきた忍に襲いかかると、忍の剣は炎を宿し、そのまま煉獄斬を放った。
 前方を炎が包み、突撃してきた変態たちは獣のような動きで炎から身をかわす。
 小夜子は飛び込むように火の壁を抜けると、散布装置の前に立ち、
「はあっ!」
 七曜拳を放った。
 繰り出される拳と蹴りの連打は散布装置から悲鳴のような破壊音を上げさせ、あちこちから煙が噴いた。
「いいね、それだけ前方が開けば撃ち放題だ。てめえら! 身体に穴開けたくなかったら屈んでろ!」
 恭也が叫ぶと忍と小夜子は咄嗟に身を屈め、それとほぼ同時に恭也の機関銃が火を噴いた。
 室内で使いような規格じゃない弾丸は無慈悲なまでに壁に穴を開け、要塞化された散布装置の外壁が破壊され、変熊 仮面(へんくま・かめん)が漬かっていた培養液にも穴が開き、変熊は培養液ごと外に出ることができた。
「わぷ……!」
 近くにいた小夜子は培養液を頭から被ってしまう。
 真っ白な粘液がベタベタと身体にへばりつき、拘束麺を身体に巻き付けただけ肢体はいやに扇情的で、変態たちの目は胸の谷間に堪った白く濁った液体へと向けられる。
「なにを見てるんですか!」
 小夜子はキッと睨みつけると毒虫の群れで変態たちを襲った。
「ぎゃああああああああああ!」
 服も着ていない身体に毒虫が這いずり回り、男達は甲高い声を上げながらひっくり返って気絶していく。
「恭也さんも気をつけて撃ってください!」
「おお、悪い悪い」
 恭也は軽い調子で謝った。
 小夜子は白くてべたつく培養液を手の平で拭い落としていると、壁となっていた炎が収まり、培養液でベタベタになって倒れている変熊が姿を現した。
 変熊は状況が飲み込めず、しばらく周囲を見渡す。
「一体どうしたというのだ……何故まわりに全裸の男達が……貴様ら! 営業妨害だ! 服を着ろ!」
 変熊が必死に叫んでいると、
「また増えやがったな変態野郎!」
 恭也が変熊に狙いを定めて発砲した。
「ま、待て! 俺様はこいつらに騙されて、あんな所に入れられていたのだ!」
「問答無用だ!」
 逃げる変熊を恭也は執拗に機関銃の砲撃で追い回す。
「そこまでだ! 我らのラマンウイルス製造の鍵を虐めるのはやめていただこう!」
 そう叫んだのは変態紳士だった。
 とう! と、全裸で跳躍すると変熊の前で華麗に着地をしてみせる。
 すると、
「ばか!」
「痛っ!?」
 変態紳士は変熊にビンタされました。
「困るんだよね。全裸で目立つ人がいっぱいいると。なんていうか営業妨害って言うか」
「人は皆、誰もが全裸になる権利を有しているはずだ。君のその傲慢な意見を聞き入れるつもりはない。全裸はみんなのものだ! さあ、また培養液に入ってもらうぞ!」
 変態紳士が手を出すと、変熊はその手を握り返しレスラーの力比べのような絵面になってしまった。
「美しい者のみが全裸を晒す権利があるっ! ……というわけでお前らは服着ろよ!」
「そんなひどい理屈が通って堪るか! 人は皆、等しく全裸を晒す権利がある!」
「それを通したら、全裸が無個性になってしまうだろう!」
「笑止! 全員が服を脱いで消える程度の個性は個性などとは言わん! そこの君たち! 君たちはどう思う! 彼と私、どちらが正しいことを言ってると思う!」
 ラチが開かなくなったので変態紳士がコントラクター達に意見を聞くと、
「どうでもいいわ!」
 ノア・アーク・アダムズ(のあ・あーくあだむず)はニューラル・ウィップを二人に振るった。
「「ぎゃああああああああああああああ!?」」
 乾いた空気を裂く音が二人の肌で鳴り響き、二人は全裸で地面を転げ回った。
 メチャクチャにのたうち回る二人は特に意識したわけではないが、同じ方向、桜葉 香奈(さくらば・かな)に向かって突っ込んでいく。
 人間とは思えぬグネグネした動きで近づく二人に香奈は顔を青くする。
「きゃああああああああああああああ!」
 トラウマになりそうな光景に香奈は悲鳴を上げて、二人の頭上に無量光を降らした。
「ぎゃああああああああああああああ!」
 雨のように降り注ぐ光が変態紳士と変熊の身体にぶつかり二人は香奈にも負けない悲鳴を上げる。
 後ろに下がった香奈はその姿を見て、心配そうな目を向ける。
「いきなり近づいてきたからビックリして攻撃しちゃったけど、あの大丈夫ですか?」
「香奈! こんな変態の心配なんかしちゃ駄目よ!こいつら犯罪者でもあるんだから危険よ!」
 ノアは香奈の前に立って壁になると、光りの雨の下でのたうっている二人に鞭を振るった。
 二人は何とか痛みの少ない方へ転がると、無量光の雨と鞭の連撃から逃れて立ち上がった。
「痛いじゃないか! いっそ気持ちよかったぞ!」
 変態紳士が文句を言うと、
「そうか、気持ちよかったならもっとしてやるかのう」
 織田 信長(おだ・のぶなが)が追撃のために接近してきた。
 信長は魔闘撃で足に魔力を溜めると、そのままサッカーボールでも蹴るように足を振り上げた。
「必殺! 魔王キック!」
「ぐぶ!?」
 振り上げた爪先は変熊のみぞおちへと直撃。変熊は正面からの衝撃に逆らう暇も無くラマン散布装置へと叩き付けられ、
「魔王パーンチ!」
「へぅあ!?」
 右正拳突きを顔の正面で受けた変態紳士も後を追うようにラマン散布装置へと叩き付けられる。
 恭也の銃撃と二人の変態の衝撃で散布装置は息が絶えるように起動音を止めていく。
 が、
『ラマン散布装置が強制シャットダウンしました。これより自爆プログラムを起動、一分後、秘密基地を爆破します』
 散布装置からそんなアナウンスが響き、秒針が時を刻む音が聞こえてきた。
「い、いけない今の衝撃で散布装置の自爆機能が作動してしまった!」
 変態紳士が叫ぶと、忍は目を剥いた。
「なんでそんな余計な機能を!?」
「だって、秘密基地に自爆機能はロマンじゃないですか!」
 なんともずれた答えが返ってきた。
「とにかく、すぐにでも脱出しましょう! みんな急いで!」
 忍が声を上げると他のコントラクターたちは一目散に地下から地上へと上がってしまう。
 残されたのは変態紳士と変熊だけになったが、
「変熊さん、私は散布装置にお尻がささってしまったので申し訳ありませんが助けていただけますか?」
「それは奇遇な。俺様もお尻が刺さって身体が動かないぞ」
「……」
「……」
「爆発まで後、三十秒」
「「いやああああああああああああああああああああああああ!」」
 二人は悲鳴をあげて、尻を抜こうとするが動く気配がない。
 じわじわと時間だけが浪費していき──やがて、周囲は光りに包まれた。