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梅雨の宴『夏雫』

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梅雨の宴『夏雫』

リアクション

10 祝

 5幕では土砂降りとなってしまったが、気が付けば小雨に戻っていた。観客は誰1人気付いていない。それほど舞いに魅了されたのだろう。
 舞台の上に、虹が出現した。綺麗……そんな呟きが観客から漏れる。舞いの最後を締めくくる場面、最高の演出で舞い人達は気力を振り絞り祝福を紡ぐ。
 舞い人は、全員青に水色の粉がかかった舞扇を手に持った。青は雨の色、水色の粉は祝福の水。衣装は青を基調とした華やかなものに、銀の粉を散らして豪華に。
水の神様2人が、雨の神様2人と協力して人間を許し、今後祝福を授ける誓いをする。そして、自分達の傲慢さを認め、今後人間達を守っていく誓いも立てて。舞扇を閃かせ、許しを与え、許しを乞う。加えて魔を再び水の妖精に戻し、妖精はくるくる回って喜びを表した。ひらひら、ひらひら。閃く舞扇に一筋の光が差し込んだ気がした。
 祝福の雨は、命の雨。その雨に打たれ、河川の氾濫で亡くなった人と美女、そして娘の父親は息を吹き返した。大切な人を取り戻せた青年2人は喜びの舞いを舞って、巫女もそれに寄り添う。
人間達は自分達の非を認め、誓いを立てた。その誓いの覚悟は鬼達の怒りを遥かに上回り、鬼は自身の怒りを完全に消失させて顔立ちの整った青年へと変化した。また恋した女を守った武士、戦で多くの命を奪った武士、少年から青年へと成長した武士は今後命あるものを大切に扱うと誓い、刀で雄々しい演武を披露。その刀は戦うものではなく、守る為のものだ。妖狐も人間になり、その喜びを神々に捧げる。
 宮中の王子と姫は、水不足が解消され人々が活気づき、満足に暮らせる生活を営み始めたことに喜んだ。舞扇がふわりと浮き、さすがは宮中の王子と姫、ぴったり重なる動きの華麗さに観客は目を離せない。
幸福、希望、未来。全てを凝縮した喜びの舞いは、きっと梅雨でうんざりする人々の気分を晴らせたに違いない。
 王子と姫の舞いが終わり、しいんと余韻が残る。人々は拍手をするのも忘れ、ひたすらに酔っていた。その時だ。舞台近くに咲いていた紫陽花が歌い始めた。
 らん、らん、らん。舞いに合わせて、可愛らしい歌声が響く。
 歌声に舞い人達は一瞬驚いたが、すぐに舞台へと進め出て、頭を垂れた。人々も我に返り、ぱちぱちぱち。1つの拍手が次第に増え、最後には舞台は拍手で溢れ返っていた。

 梅雨の宴『夏雫』。この舞いの真意、それは見る者の解釈によって違うがきっと根本は同じだろう。今回の舞いは大成功。そう言っても過言ではない。

担当マスターより

▼担当マスター

久遠奏唄

▼マスターコメント

久遠奏唄です。梅雨の宴『夏雫』のリアクションをお届け致します。
今回は日本の伝統芸能の1つである「能」にアレンジを加えた物語となりました。如何でしたでしょうか。
謡いも入れたかったのですが、舞いの描写を入れないと分からないよな〜。でも描写ばかりでもいかんよな〜と悩みまくった挙句、泣く泣く断念致しました。
文献等を読み漁ってオリジナルの謡いを作った結果がこれです。
大変申し訳ございませんでした。
皆さまとても素敵なアクションばかりで、拝読していて自然と物語の構想が浮かんで参りました。基本的に全てのアクションを採用致しましたが、
ストーリーの進行上どうしても描写出来ない部分は割愛させて頂きました。ご容赦頂けますと幸いです。
次回のシナリオでも、またお目にかかれますように。この度は梅雨の宴『夏雫』にご参加頂き、ありがとうございました。

▼マスター個別コメント